006「最果ての季節」この世の中は所詮、見せかけにすぎないのかもしれないわ。
つぼみが花を否定して、実になるの。りんごは地球よ。皮は地表、果肉はマントルで、種がコア。惑星の天体活動も、体内の電子の周回も、みんな似ていると思わない? わたしのからだの中の細胞も、宇宙と同じサークル、同じ周回で存在しているんじゃないかって思うのよ。
柁夫は、たまにしか帰ってこない四時の存在をひとり占めしようと、ますます躍起になっていった。居間に置いてあったカメラに触れると、それだけで腕を掴み上げられた。
お兄ちゃん!
わざと柁夫のことをそう呼ぶと、ふり払うように睨ま