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忘れてなどいない、今も勇気を
「タツヒコ君、これは?」
「私の作った靴だ」
「ありがとう、嬉しい」
目が覚めた。夢を見ていたようだ。懐かしい夢だった気がする。だが目を覚ましてすっかり内容を忘れてしまった。
窓の外はもう明るく、私は洗面所に向かった。
歯ブラシのブラシ部分を湿らせ、チューブから歯磨き粉を取って口へ運んだ。
歯磨きを終えると、一度キッチンに行って水を一杯飲んでから再び洗面所に戻った。ヒゲを剃り、
残りものに福があるというのなら私はとびきり幸せになれるだろう
「酒を飲んでいる時、すべてを忘れられる。そんな時があった」
「ふうん」
私の部屋のベッドで隣に寝転ぶムスヒは気のない返事をする。私は気にしないで話を続けた。
「今では酔っていることがもったいないと感じる時さえある。自らの感覚というのを信じるようになったからかも知れない」
「ふうん」
ムスヒは平らな胸を私の背中に押し付ける。
「そんなこといいからさ、致そうぞ」
そう言ったムスヒは