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#23 リソースを統合して問題を乗り越える力に

「英語が全くわからなくなっちゃった」
息子が2年生になって少し経ったくらいにとても不安そうに呟いた。

1年生の1学期までしか勉強しておらず、かなり早いペースで進む英語に苦戦していた。
学校へ通うだけでヘトヘトの息子に勉強する体力は残っておらず…。

その頃、夕食後に2人でトランプをしながら、いろんな話をしていました。
学校であった出来事とか、小説の話とかいろいろ。

トランプしながらだと、息子の会話を引き出しやすいし、息子を良く観察できるし、私たちにとってとても大切な親子のコミュニケーションの時間でした。

学校であった嫌なこともポツポツと話してくれたので、息子の話を注意深く聴きながら、トランプを盛り上げてふざけながら息子の笑顔を引き出すことに専念していました。

トランプを飽きるまで続けて、「じゃあ、そろそろやるか」って息子が宿題を取り出して、一緒に英単語や漢字を覚えたり、数学を解いたり、短い時間だけど競争しながら問題を解いて遊んでいました。

その頃の息子は、「勉強がしたいよ~!でも出来ないよ…」って何度も繰り返して言うことが増えてきました。

体力もないし、過眠の症状が酷かったので、勉強したくても起きていられなかったのが悔しかったみたいです。

学校でストレスいっぱい溜めてくると、疲れ果ててごはんを食べるのも辛いくらい何も出来ない日も多くて…。

「ゆっくりで大丈夫。焦らなくていいんだよ。今は学校に慣れることを優先しよう。勉強は後からいくらでも取り返すことができるよ。」

こんな言葉がけをいつも息子には伝えていました。

自信の水が溜まると勉強するようになる、だけど息子は勉強ができるほどの体力がまだありませんでした。

息子は英単語や漢字の小テストを楽しんでいました。
休み時間にチラッと教科書を見るだけで満点が取れるから、それが自信の水になっていました。
勉強への意欲が湧いてきても、身体が動かない。
親としても、もどかしい気持ちはありましたが、私の欲を抑えるためにも、「焦らずいこう」と声がけしていました。

息子は1学期の中間テストは、1日休みました。
前日の試験の後、不登校仲間からの誘いで何十件もある物を探すためにコンビニ巡りに夜まで付き合わされていたからです。

不登校仲間は、あり得ないほどワガママで常に息子を振り回していました。
その子は翌日の試験は受けないって決めていたらしく、息子が明日は試験だからと先に帰ろうとすると、「明日、休んじゃいなよ。一緒に探してよ」ってずっと悪魔の囁きみたいに連れ回している間、言い続けていたようです。

同じ不登校でも息子と違って身体症状がないのか、やたらとアクティブな子で、好きなことを好きなだけできる環境みたいでした。
息子は学校をお休みしたときは、病気だからとベッドで1日安静にしていたのに対して、その子はお休みした日も好きなところにいつも出かけていました。

不登校仲間たちも息子が教室登校したら、いつの間にか教室登校していて五月雨登校になっていましたが、息子はもうその子たちの「登校するかしないか」に惑わされることはなくなっていました。
だから、その子が試験を受けないからと息子も一緒に同調して学校を休んだのはかなり久しぶりのことでした。

中間テストを受けないからと、試験の前日に夜遅くまで不登校仲間と遊んでいた(一方的なワガママに振り回されている)息子にその時は厳しく怒りました。

あなたはお友達のことを思いやって、コンビニを何十件も一緒に付き合ったり、その子のために行動しているのに、その子は自分のことしか考えていない。

自分の思い通りにならないと怒ったり、いじけたり、悪口言ったりハブにしたり。
そんな子が本当にお友達だと思う?
良いように利用されているだけじゃないの?
本当のお友達だったら、あなたのことも考えて行動してくれてもいいんじゃないのかな。

それに、もしあなたなら、自分が試験を受けないからって、お友達も巻き込もうとする?
お母さんには、あなたがその子のことを大切に思っているのと同じように、その子があなたのことを思ってくれているようには見えないよ。
あなたは、もっと自分自身のことも大切にしたほうがいいと思うよ。

もし、あなたがその子を大切なお友達だと思うなら、ネガティブな感情に引っぱられてたらダメだよ。あなたが逆に引っ張り上げなさい。
それが出来ないで、ただ楽な方に引っぱられ続けるだけの関係だったらそんなの友達じゃないよ。

息子は、試験を休んだ罪悪感もあったからか、私の話を黙って聞いていました。

ずーっとずーっと我慢してたけど、我慢の限界でした。
どんだけ、毎回ことある毎に息子の足を引っ張るつもりだ。

不登校の対応は各家庭で違う。
人それぞれの考え方や、対応の仕方があるから、各家庭好きなやり方でいいと思う。

別に、私のやり方に合わせて欲しいだなんて全く思ってなかったけど、私たちの邪魔だけはして欲しくなかった。

私は悠長に「好きなことをさせて動き出すのを待つ」ほどの時間的なゆとりはない。
一分一秒が惜しかった。

不登校を嘆いて涙を流してるだけで、大切な時間を失いたくない。

親にできることはたくさんある。
山ほどある。
泣いてる暇も、過去を嘆いてる暇も、見て見ぬ振りしてる暇もない。

だって、子どもってすぐに成長しちゃうんだから。

赤ちゃんの頃、息子の成長がとても楽しみだった。息子が大きくなるにつれ、親の欲メガネで息子の「しないこと・できないこと」ばかりに目を向けてしまい、いつの間にか息子の成長を見逃してしまったけど、13歳の息子だって赤ちゃんの頃と同じように日々成長してる。

立ち止まりたくない。
前に進まなきゃ、時間がまた止まっちゃう。

もう、不登校の頃のような時間が止まった感覚や、私たちだけ取り残されているような感覚だけは味わいたくない。

それから、少しずつネガティブに引っぱられることは減り、逆に学年行事などの時は、その子たちが行事に参加できるように、声がけしたり働きかけをするようになっていきました。

そして、
試験を休んだのは、その1日だけでした。
その後はすんなり試験も受けられるようになりました。

“自信の水が溜まれば勉強したくなる”

試験を通してとても面白い変化があったのですが、それはまた次の機会に…。

「英語がわからなくなっちゃった…」と息子が不安そうに呟いたとき、

あなたって、モノマネがすごく上手じゃない。聞き取る力が素晴らしいよね。瞬時に相手の特徴を見極めてそのまま再現する力があるし、インプットしたものをアウトプットする力があるね。

モノマネをするときの力を英語の勉強に使ったらいいんじゃない?

この力を使ったらネイティブばりにどんな言語でも覚えられると思うよ。
それに、あなたって記憶力も集中力もあるし、理解力もすごくある。

あなたのリソースを使えば何でもできるじゃん。
大丈夫だよ。あなたなら乗り越える力があるよ。

今はゆっくりゆっくり前に進んでいこう。
焦らなくても大丈夫だよ。

こんなことを息子に伝えると…

とても不安そうだった顔から、ちょっと考え込んで、「ああ、そっか…」って納得して、ホッとした顔になってから、ニコニコ笑顔になりました。

日々、伝えているリソースがとても小さな種だとしても、子どもが困ったときなんかにたくさん集めて大きな種にしてプレゼントしてあげることができます。

日々、子どもを良く観察してリソースを伝えていくことで、そして、子どもの持っているたくさんのリソースを統合して伝えていくことで、とってもパワフルなリソースに変容していきます。


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