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#24 ドンと構える

子どもが動き出すと欲が出る。
だけど、息子は“親の欲センサー”が付いているかのように、私の欲を素早くキャッチして、ピタリと動きを止める。

親の操作がわかる言葉がけなんて、息子にはまったく心に届かない。

一緒にゲームをしていると良く分かる。
息子には敵わないなって。

心理戦なんてことごとく負ける。
どんなに頑張っても勝てる気がしない。

周りの空気も敏感に読み取るし、頭の回転も速い。

親の敷いたレールに子どもを乗せようとか、子どもをコントロールしようとか、思い通りにさせようなんて無謀だったんだなってよくわかる。
「子どものため」なんて言ってたけど、子どもが自分の思い通りの行動をしないとストレスを溜めたり、怒ったりして本当に最悪な親だった。

息子の2年生の1学期の中間試験、数学の点数は4点でした。

息子は恥ずかしそうに答案用紙を持ってきて私に見せてくれました。

この4点の答案用紙からどれだけ息子のリソースを見つけることができるのか、私にとっての日々の成果を試す試験のつもりで答案用紙に向き合いました。

丁寧に名前を書く力があるね。
筆圧があって、あなたの書く字には力があるね。
4点取る力があるね。
適当に数字を書いて○をもらえる運の強さがあるね。
あなたは運を引き寄せる力があるね。
答案用紙に空白なく答えを埋める力があるね。
分からない問題にも果敢にチャレンジする力があるね。
テストで余った時間は身体を休めるために眠る力があるね。
体力を温存する力があるね。
そして、あなたはテストを受ける力があるね。
勉強してないからって去年の2学期の中間試験は受けられなかったけど、今回は勉強しなくても試験を受けられたね。
勉強しなくても試験を受ける力がある。
これってすごい成長だね。
この答案用紙には、あなたの頑張りがたくさんたくさん詰まっているね。
お母さん、嬉しいな。
やっぱり、あなたはお母さんの誇り高き息子だね。
これほど価値ある答案用紙をお母さんは今まで見たことがないよ。
すごーく感動した!
よし、記念に壁に貼っておこう!

って言うと、息子が「罰ゲームか!やめろー!」って大笑いしてた。

1学期の期末試験、数学の点数は8点。
なんと2倍に点数が上がった!
息子もニコニコ笑顔でテストを渡してくれて、私もたくさん息子のリソースを見つけて伝えていく。
今回のテストは更にチャレンジしている形跡があった。
息子の頑張りが答案用紙から伝わってくるのがすごーく嬉しかった。

2学期の中間試験、数学の点数は38点。
テスト勉強はまだできなかったけど、かなり点数がアップしてた。
答案用紙から息子の成長がたくさん伝わってきてリソースを伝えるのがとても楽しかった。

息子はその頃から、「ちゃんと勉強したいな」って呟くことが増えていきました。
「勉強したいけど、できない」
息子が動き出す前に、私が先走って焦らないように、息子の成長の邪魔をしないように、息子を良く観察していました。

そして、
息子には内緒で、息子のことを理解してくれる塾を探しはじめていました。
1件、近所に良さそうな塾を見つけて、面談をして話を聞いてみると、不登校の息子が無理なく通えそうな感じでした。

息子が「そろそろ塾に通いたい」って呟くようになってから、塾の前を通る機会があったときに、「ここの塾って評判良いらしいよ」ってさらりと伝えてみました。
入口にチラシが置いてあったから、2人でチラシをもらってきて…。

息子がチラシを見ながら、「じゃあ、この塾に通う」って言葉を聞いたので、子どもと一緒に面談をしてもらい、塾の雰囲気を息子が気に入ったので入塾を決めました。

かなり自由な塾で、今まで通っていた堅苦しい感じの塾ではなくて、先生たちもおやつを食べながら授業をしているくらい緩くてアットホームな感じの塾でした。
しかも、ちょっとゴチャゴチャしてて汚い…。

自習中の生徒がお弁当をチンして食べたり、カップラーメン食べてもOKだったり。
先生たちも生徒たちもかなり自由に過ごしている塾でした。

息子も中学受験での嫌な雰囲気が漂うピリピリした塾じゃなくて安心してました。
だから、嫌がらずに塾に通うことができました。
ただ、体調が悪い日はドタキャンしてしまうことが多かったけど…。

そして、11月の中旬くらいから週1回のペースで通塾をはじめて、分からなくなってしまった所から数学を復習し、なんとか期末試験の勉強もほんの少しだけできました。

2学期の期末テスト、数学の点数は83点。
息子はとっても喜んでいて、得意そうな笑顔がとても可愛かった。
今回もたくさんリソースを伝えました。

この結果に先生たちも驚いていました。

結果に目を向けるのではなく、経過に目を向けることで、どんな点数でもドンと構えることができました。

そして、
「しないこと・できないこと」に目を向けずに、「したこと・できたこと」に目を向ける。

たったそれだけのことだったのに…。

今まで、息子のどこを見ていたんだろう。
息子の点数に一喜一憂して、無意識に息子をジャッジしてたんだ。

テストを受けられたのだから、必ずそこには「したこと・できたこと」がある。
「勉強しなさい」なんてひと言もいわず、息子のリソースをただ伝えて信じて見守るだけでも成績は上がった。

「子どものため」なんて言いながら、子どもの自信の水を奪う子育てをして、期待した通りに動かないからって勝手にストレスを溜めるなんて…。
親ってつくづく欲まみれで自分勝手なんだな。

これからは、息子のどんな行動だってすべてリソースに変えてあげたい。
大切な自信の水を一滴でも注いであげたい。

親の欲を手放していくのは大変だけど、
もう、自信の水を奪う親には戻らない。




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