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3.読書レビュー『ジーザス・サン』デニス・ジョンソン

『ジーザス・サン』デニス・ジョンソン著 柴田元幸訳

<文字数:約920字>

1.メチャクチャかっこいい小説!


 平易な言葉かもしれないが、メチャクチャかっこいい

「かっこいい」と言うと、なんか安易な感想に聞こえてしまうかもしれないが、私が一番に思った感想がそれだった。

 乾いた砂漠、乾いた風、乾いたかっこよさ。

 そう思える小説って、これまであっただろうか…?


2.意味や論理を超える「文章」と「言葉」


 文章と文章の連なりが、意味や論理を跳躍しているように感じられたのだ。

 あえて「意味」というものをそぎ落とし、そして「感傷的」な部分や、「ウェット感」もそぎ落としているように感じた。

 それは文章だけでなく、言葉をとってみても同じような気持ちを抱いた。

2-1.これまでの自分の読み方

 小説を読むとき、「一つの言葉の意味」や「ある言葉とある言葉の関連性」「物語の伏線」などを深く考える。

 そして、「作者は何を伝えたかったのか」「この物語の教訓は一体何だったのだろう」と思案する。

 しかし、この『ジーザス・サン』においては、「意味」や「教訓」といったものを一旦置いておいて、物語の純粋なおもしろさ、かっこよさ、自由な広がり、といったプリミティブな楽しさを感じた


3.「音楽」であり、「詩」「映画」でもある


 この小説にある、一種の危うさのようなものがすごく魅力的で大好きだ。

 理屈を超えたところで、見えない筋が通っているような感じする。

 まるで、かっこいい音楽が流れ出して、ただ「かっこいいなぁ…」と身も心もゆだねて聴いているような感覚に近い

 さらに、「詩」を読んでいるような気持ちにもなる。それでいて、「映画」を観ているときのような感覚を覚える。イメージが鮮明に頭に浮かび、視覚や嗅覚といった五感が刺激されるのだ。


おわりに


 この『ジーザス・サン』は、新しい小説の可能性を感じる素敵な出会いだった。

 この小説には、全部で11の短篇が収められている。短篇小説集ではあるが、まるで1つの物語を読んでいるようでもあった。

 どの話も長くはない。そういうところも「かっこいいなぁ」と思った。

 最後まで読み終わったときには、デニス・ジョンソンの大ファンになっていた。

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