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『詩』百一日目におもうこと

私は言葉しか持っていない
花が咲いたときには花が咲いたと言い
雨が降ったときには雨が降ったと言い
朝になれば朝になったと言い
夕暮れには夕焼けが赤いと言い
虹が立てば<虹だ!>と言う
私はそんな言葉しか持っていない


あなたを呼んで
ここでくつろいでもらおうにも 深々と
体を預ける椅子もない
眠りを誘うベッドもない
ここには一杯の紅茶もない 暖かな
午後の日差しさえもなければ
軽やかな小鳥のさえずりもない
疲れた心を癒すことのできる
優しいピアノの音色もない


ここにあるのは言葉だけだ


今私の手元には
夏の終わりの砂浜を描く
水彩絵具のひとつもない
冬の厳しさをキャンバスに写す
油絵具の一色もない それから
それらを歌うハーモニカも
使い古しの安いギターも
五線紙の一枚も手元にはない


ただ言葉だけがほんの少し
私の抽斗ひきだしのなかに残っている


けれど その言葉さえ
いったい何の役に立つだろう
誰の役に立てるだろう 誰のために
どんな意味があるだろうか?


とりあえず 私は何も考えず
言葉を素直に使うとしよう
暑いときには暑いと言い
寒いときには寒いと言い
嬉しいときには嬉しいと言い
悲しいときには悲しいと言い そして
苦しいときには苦しいと言おう


私は小さな微笑みを浮かべ
それらの言葉を口にしよう
誰も傷つけることのない 無色透明の
水のようなそれらの言葉を
(でもときには間違うことも
 私にないとは言えないけれど)
だから 私の抽斗のなかにある
ほんの僅かなそれらの言葉を
私は大事に使うとしよう
ここを訪ねてくれるあなたのために




連続投稿101日目です。
昨年、途中で挫折したこともあり、最初は1週間に1回程度の予定だったので、(そんなことをこちらで宣言しています)

毎日投稿するつもりはなかったのだけれど、続け出すとそのうちやめることができなくなった、というのが正直なところ。
毎日投稿するようになった最初はこちらの記事。

辻邦生作品の紹介のつもりが、いろいろと変わってきてしまいました。
しかし、ちょうど10月1日が101回というのは、さすがですね、ワタクシ(ニコニコ)。
詩だけでなく長めの雑文も書いてみようかともおもうのですが、どうしてもおふざけが入ってしまうので(エッセイと言わず雑文としたのもそのため)、我慢しているところ・・・。そういうのが読みたいよ〜、というもの好きな方からのリクエストでもあれば、これを機にそれこそ週に1度くらい雑文にしてみようかと考えていますが、いかがでしょう?

何にせよ、ここまで続けてこられたのはお読みいただいている皆さんのおかげです、ありがとうございます(都度スキもいただければ励みになります)。
今後ともぜひ!よろしくお願いいたします。




今回もお読みいただきありがとうございます。
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 植えさせていただきます。ぜひお寄せください。


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