『詩』石蕗
私に石蕗が似合いますか? 潮風の強い
こんな岩場で何かに耐えるように咲いている
私にこの黄色い花が似合いますか?
私はそんな強い人間ではありません
まだそんな歳ではないと誰かが言った
けれどもう私の人生の大半を 私は生きた
今はすっかりそんな気分になっているのです
石蕗の花って強いですね 潮風を
こんな岩場で受けながら右へ左へ
首を揺らして耐えている そんな花に
この私が似ているなどと いったい誰が
初めに言い出したのだったでしょうか?
こうやって 黄色い石蕗の花の隣へ
腰を下ろして 白波の立つ海の彼方へ
遠く視線を向けていると 人生が
私の今日までの生き様がありありと
蘇ってくるようです
しっかりと岩の上に根を張った黒松が
私に大きな陰を落とします ざわざわと
葉擦れの音がして 両腕で
私は自分を抱きしめます 吹き付ける
潮風から自分で自分を守るように
そんな私は石蕗の花に 呆れられ
戒められているかのよう
石蕗の黄色い花が大好きで 自分から
こんな潮風の強い岩場まで
私はひとりで来たというのに 冬に近い
わざわざこんな時期を選んで
私はここまで来たというのに
やがてゆっくりと日が傾いて きらきらと
海に日差しを流すでしょう
ほんの一瞬海が凪いで 風向きが
徐々に変わってゆくでしょう
お尻をはたきながら ゆっくりと
私はその場に立ち上がる
首を振るのをやめて 石蕗が
そんな私を見上げています 黄色い顔で
私は寂しい笑みを浮かべ 石蕗に
ちょっと小さく手を振ります そして
こんなふうにおもうのです
やっぱり私とは似ていない、と
毎週月曜日は #なんの花・詩ですか で、花をテーマに詩をアップしています。お読みの皆さんもぜひ、花をテーマに記事をお寄せください。写真も大歓迎! 曜日は問いません、こちらのハッシュタグをつけて投稿いただければ、僕のマガジンという花壇に植えさせていただきます。よろしくお願いいたします。
今日の花はツワブキ。ツワブキは葉っぱがフキに似ていてつやつやしているところから、「ツヤフキ」がなまって「ツワブキ」になったとも言われています。潮風に強く、海沿いの岩場によく自生し、冬の寒さの中でもしっかりと黄色い花を咲かせます。そこで、花言葉は、
他にも、目立たない場所でも咲くことから、
あるいは、
なんてのも。
詩はまさしく石蕗の気分そのものです。
#なんの花・詩ですか
に記事をいただきました。フルレットさんの「日曜押花美術展 vol.25」です。森に見立てた葉牡丹の押し花が素敵です。ぜひこちらでご覧ください。
今回もお読みいただきありがとうございます。
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