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『詩』曼珠沙華

くっきりと
季節を限ってその花は咲く 夕焼けを
引き下ろしたように 凛として


遠い昔に教えられた
自分は寿ぎの讃歌だと だからそれは
一斉に並んで花開くのだ そして
その身に危険を孕んでいるのだ つつがなく
その役割を果たすために


稔りの季節をゆくときには その歌を
耳にすることができるだろう
自らこそがその歌だと
真っ直ぐにピンと背筋を伸ばし
凛として立つその晴れ姿を
人は眼にすることができるだろう 風景を
ぐいぐいと太い筆で力強く
あたかも縁取るようなそのさまを


季節が入れ替わったと知るや その花は
あっという間に終曲を迎える ほんの一瞬
荘厳な合唱曲が天上に
鳴り響くのを聞くだろう けれど
フェードアウトの時間は短い
去り際の潔さを愛でる者は
誰ひとりいないのだ
気づけば見慣れた風景が 秋色に
すっかり塗り替えられているばかり


撮影/takizawa




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ということで、9月23日は曼珠沙華あるいは彼岸花です。
彼岸花は主に球根部分に多く毒があり、田畑の稲や野菜をモグラやネズミから守るために植えられたり、あるいは昔は墓といえば土葬だったので、亡骸を荒らされないようにするために植えられたそうです。なので、お墓のあたりによく見られることから忌み嫌われるようになったのでしょうね。

しかし、「曼珠沙華」という名は赤い花を表すサンスクリット語からきているそうで、釈迦の説法を予祝する花として、経典にも登場するようです。
詩は主にこちらのイメージ。

道端でよく眼にするのは、専門用語で金赤(イエロー100%+マゼンタ100%)と言われる色に近い赤色の花ですが、実は他にもいろいろあって、僕が実際に見たことがあるのは、

白・黄色・ピンク

の3色。緑っぽいのもあるそうだけれど、それは見たことがありません。

今年は猛暑のせいで、場所によっては開花が遅れているそうですね。温暖化によって、これからは花の季節も変わってしまうのかもしれないですね。
(タイトル画像は僕の撮影ではありません)




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