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『詩』君の眸が始発駅なら

君の眸から僕の足の裏へ
環状線が突き抜ける 環状線だから
きっとどこかをぐるりと回って そのうちに
ここへ戻ってくるはずだけれど 金色の
痩せ細った月が ベランダの
ひさしに引っかかって泣いているので
僕らは出かけられなくなってしまった
仕方がないので 今日は布団にくるまって
絵本を読もう ニワトリの
卵がワニと駆け比べする絵本だ
表紙が派手な緑色の


BGMは何がいい? と君が聞くから NAIXの
「湖畔のワルツ」を、と言おうとすると
ターンテーブルの上を子どものように
今思考が走っているので無理だと言う
それは内回り、それとも外回り? 環状線に
ターンテーブルは似ているけれど
まだ列車は戻ってこない
それでも足の裏はくすぐったいし
君の眸はドライアイだし (ああそれだから
  皆で雨乞いをやっているのか
  道の向こうの公会堂で)


でもやっぱり出かけなければ
絵本が終わってしまわないうちに
卵がワニに追いつかれないうちに!
「湖畔のワルツ」な気分なので
僕はピクニックの準備にかかる 布団を抜け出して
金色の 細い月は泣き止んだろうか?
庇の下から顔を出すと
外は雨が降っている 人生は
思い通りになんてそうそうならない
この世に生きている限り だって
環状線は行ったっきりだし ドライアイなのに
君の睫毛まつげが震えているし


わかっている
出かけることなんてできやしない 金色の
細い月が泣き止んだとしても
それならばと 僕らはすっかり開き直る
ふたり揃って日焼けをしよう
ターンテーブルの上に寝転がって そして
結構高いシャンパンを開けよう 月の涙に似た
そう言えば 環状線は
月の裏側まで行ったのかしら?
僕は君の眸を覗き込む 大きくみひらいた
だってそこが始発駅なら 列車はいずれ
そこに帰ってくるはずだから


ところでワニは
卵に追いつくことができただろうか?




吉田拓郎あたりが歌いそうな、そんな歌のタイトルみたいになってしまいましたが(汗)。
もちろん僕のことなので、お読みいただいた通り、内容は全くそんな具合にはなりません。それでも自分的にはちょっとオシャレな気分のつもり?

NAIXの「湖畔のワルツ」というのはこちらです。

ピアノ曲というのはさほど好きではないのだけれど(何かこう、プツプツと切れる感じが肌に合わないというか)、それでも画面にあるように、クラシカルな、ちょっと弾むようなワルツが詩に似合う気がしました。

例えば東京の山手線なんてのはあんまり乗ったことがないのでよくわからないのだけれど、始発駅と終着駅は違うものなんでしょうか? 詩では彼女の眸から眸へ、というふうにイメージしてみました。

ちなみに、大して意味は変わらないけれど、僕は「瞳」より「眸」の字のほうが好き。「目」「眼」と書くのは辻邦生さんの影響です。同じ意味でもこっちの字のほうが好き、というのは、皆さんにもおありでしょうか?




今回もお読みいただきありがとうございます。
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