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インサイドセールスがエンタープライズ開拓で成果を出すための「4つの条件」とは? 〜スタートアップの約2年間の悪戦苦闘で辿り着いた超実践ノウハウ〜

こんにちは!
ノンデスクワーカー向けSaaSプロダクトを提供している「カミナシ」というスタートアップ企業で、エンタープライズ事業部のインサイドセールスユニットを担当している小林(@yocchi_koba)と申します。
カミナシでは「よっちさん」というあだ名で呼ばれています。
よかったら皆さんからも「よっちさん」って呼んでもらえたら嬉しいです。

このnoteは、 私が2023年にカミナシに入社してから約2年間、自身の約9年間の大手企業在籍経験(大和証券、日本オラクル)を活かしてエンタープライズ領域の新規営業として実践し、悪銭苦闘を繰り返してきて学んだことをまとめました。特に以下のような皆様に読んでもらえると嬉しいです。

  • エンタープライズ領域の最前線で活躍しているセールスの皆様

  • インサイドセールスやフィールドセールスの方、新規営業に関わる方で特にエンタープライズにチャレンジされている or チャレンジしたい皆様

  • インサイドセールスとして活躍しているが、もっと難しいチャレンジをして成長していきたいと考えている皆様

  • 営業チームやインサイドセールスのマネージャー・リーダーの方

2024年8月の日経新聞にカミナシが新サービス「カミナシ 従業員」の提供開始のニュースを掲載いたいただいた記事がありますので、カミナシの事業概要や今後のマルチプロダクト戦略にもご興味ある方は是非こちらもご覧になって頂けると幸いです。


0.自己紹介

私は新卒で大和証券に入社し、その後下記のようにIT業界の様々な企業で主に新規営業に携わり、数多くの失敗を経験してきた人間です。
特にマルケト社に在籍時、有難いことに『THE MODEL』の著者でもある福田さんマーケティング本部長の小関さんをはじめ、Salesforceでトップセールスだった弘中さん稲垣さんといった経験豊富な方々からインサイドセールスとセールスの両方のポジションの経験機会とご指導をいただき、ヤプリ社でも事業成長のため様々なチャレンジと成長の機会をいただきました。本当に感謝しています。

<略歴>
・新卒で大和証券に入社し、個人営業やシステム企画部に従事
・外資ITの日本オラクル、マルケトにてインサイドセールスやBDRチームの立ち上げ、フィールドセールスに従事
・スタートアップのヤプリにてBDRチームの立ち上げとインサイドセールス組織拡大に従事
・2023年にカミナシに入社後、エンタープライズ事業部の一員としてエンタープライズ開拓にチャレンジ中

略歴:小林 洋介

自己紹介がてら、カミナシの入社エントリーのnoteを紹介させてください。
私が仕事で大切にしていることをまとめていますので、見ていただけると嬉しいです。

カミナシでは、業界を一つずつ攻略しながらも複数業界にアプローチする戦略という「マルチバーティカル戦略」をとっており、ターゲットとしている企業は業界によっては「ある程度の開拓が進んでいて、さらにシェアを伸ばしていくフェーズの業界」と「これから新たに開拓していくフェーズの業界」とではお客様のカミナシの認知度や存在する競合他社が大きく異なります。

だからこそ、インサイドセールス、フィールドセールス、マーケティングのそれぞれの体制や目標設定など難しくも、面白いチャレンジしがいのある環境となっています。

1.エンタープライズの”壁”にぶち当たった入社後3ヶ月間

カミナシに入社後、まず成果へのスピードを意識して、エンタープライズのターゲット企業から商談獲得を増やし、商談供給の「量」は達成できました。

しかしながら、商談供給したフィールドセールスが実際に初回商談を実施後に「この商談から受注に繋がるか?」の指標である”有効商談化率”がエンタープライズ規模において非常に低かったのです。
言い換えると「この商談相手からは受注できない」と失注判断された商談ばかりを供給してしまっていたのでした・・・。

この失敗と言っていい結果からエンタープライズセールスの難しさを痛感させられました。当時は「自分は新規受注に全然貢献できていないのでは?」「事業成長に何も貢献ができてないのでは?」と落ち込んだり、今後の仕事や人生について一晩中不安になったりしたこともありました。

しかしこれまでお世話になった方々に恩返しするためにも「カミナシでエンタープライズ開拓に貢献して、カミナシの事業成長スピードを高めるんだ!」と強い想いは持っていたので、「何を改善しなくてはならないか?」という思考に程なくして切り替えました。

そこで、エンタープライズセールスをSalesforceで牽引されている佐藤さんや、カミナシで一緒にエンタープライズ開拓をしているフィールドセールスの進太郎さんのnoteなどを見てエンタープライズの理解度を深めました。
(とても勉強させていただいた内容で感謝しております。)

当時、私は「チャンピオン=決裁者」と勝手に解釈していましたが、エンタープライズ領域では認識がズレてしまっていることに気づきました。
エンタープライズ規模では決裁者に直接会えることは稀です。またエンタープライズにおいてはグループ企業が決裁に関係・影響していたり、決裁を下す会議体(経営会議)等が存在しています。

<用語の補足>
・Champion=顧客内部で自分に変わって営業をしてくれる人

・EB=決裁権と拒否権を持っている人ないしは場所

用語の補足

フィールドセールスの目標、会社としての重要な1つの指標は受注金額です。
いくら商談の「量」を供給したとしても、受注に繋がらない商談は価値がないのです。当時、下記の「D」の商談が割合が多かったため、『決裁権を持つ場所(EB)へ影響力がない「notチャンピオン/EB」のため失注』となるは当然のことでした。

<獲得商談の4分類>
A:決裁権を持つ役職者(EB)の商談を獲得する

B:決裁権を持つ場所(EB)へ影響力のあるChampionの商談を獲得する

C:Championの可能性が高いであろう役員・部長レイヤーの商談を獲得する

D:Championの可能性は低いが推進力のありそうな課長または係長レイヤーの商談を獲得する

新規商談の4分類

エンタープライズ企業の受注に貢献していくためには、インサイドセールスは商談の「量」ではなく、「質」も高めなくてはならないと理解し、1件1件の商談の「質」を意識しながら自らの活動を改めることにしました。

商談の「質」を高めていくために、改善すべきことが明確になりました。
要は上記の「B」または「C」の商談を獲得することを優先しました。

理想は「B」のChampionの方の商談を獲得できたら良いのですが、まだお会いしたことのない段階で「誰がChampionなのか?」は判断がつきません。ですので、必然的に「C」のChampionの可能性が高いであろう役員・部長レイヤーの商談を獲得を増やす方が現実的にコントロールができると判断して改善してきたポイントになります。

アプローチの方法としては、私が得意としている「Why You?Why Now?アプローチ」のメールと、「手紙BDR」に実践して、Championの可能性が高いであろう役員・部長レイヤーの商談を獲得を増やせました。

おかげさまで2023年後半にかけて、エンタープライズ規模の新規受注に貢献できるようになり、今年7月からはエンタープライズセールス組織を拡大していくフェーズになってきました。

今回のnoteでは、手紙BDRの詳細は割愛させて頂きますが、手紙BDRについては前職から交流させて頂いている、Leaner Technologiesの山下さんや、 いつも勉強させていただいている石井さんのnoteを参考にさせて頂きましたので、ご興味のある方はご覧ください。
お二人にはいつも勉強させていただく内容を感謝しております。

2.「エンタープライズ」とは?

ここからは私なりにこれまで約9年間のIT業界の新規営業、カミナシで約2年間、実践して悪銭苦闘を繰り返して、エンタープライズについて学んだことを書かせて頂きます。

今回のnoteを書く上で、日頃からエンタープライズの第一線でご活躍と発信をされている、RightTouchの野村さん、ナレッジワークの桐原さん、テックタッチの西野さんのそれぞれのnoteを非常に参考にさせて頂きました。
いつも勉強になる有意義な情報を発信いただいて感謝しております。

そもそも「エンタープライズとは?」という疑問から見つめ直しました。
まず企業数でいうと、中小企業に分類される企業数を除く、大企業は国内企業数の0.3%と圧倒的に社数が少ないのです。
しかしながら、1社あたりの従業員数が多いため、セールスや営業に関わる方や経営者からすると、契約金額のポテンシャルが大きいと言えます。

(出典)中小企業庁「2024年版 中小企業白書」より

カミナシが定義している「エンタープライズ=従業員数1,000名以上」という条件で、経済情報プラットフォーム「スピーダ」でエンタープライズ(大企業)とSMB(中小企業)について調査してみると、約4,000社(約0.3%)と上記の中小企業庁が公表している大企業数と同等の割合となりました。

経済情報プラットフォーム「スピーダ」より従業員数1,000名以上で算出

契約金額のポテンシャルが大きいというのは分かりましたが、セールス観点からすると、エンタープライズ(大企業)は契約にたどり着くまでの関与者や競合企業がSMBに比べると多くなる可能性が高く、商談期間も長くなり、難易度が高いのが特徴です。

エンタープライズ(大企業)とSMB(中小企業)の違い

エンタープライズ(大企業)相手の”競合企業”はコンペとなっている企業だけではありません。
スタートアップのようなリソース(人員や予算)の限られている会社からすると、何十年も前から大企業に対して関係を築いてきた大手企業の豊富なリソースや人脈や脅威であり、その存在を忘れてはなりません。

そして大手企業だけでなく、現在はSaaS業界だけでもカオスマップに表現されるように、エンタープライズ(大企業)との新規契約・取引を巡って、お客様の社内ではクラウドサービスの導入検討予算の奪い合い(広義)、自社サービスと同様サービス導入の比較検討・コンペ(狭義)という競争が激しい、レッドオーシャンと言えるのではないでしょうか・・・。

(出典)スマートキャンプ「SaaS業界レポート2024」より

3.エンタープライズ領域にチャレンジする意義

それではなぜそんなレッドオーシャンとも言える、エンタープライズセールスに多くの方々がチャレンジし続けているのでしょうか?

私なりの解釈では「事業を成長し続ける上で、欠かせないドライバー」なのでは?と考えています。
もちろんSMB領域も企業数が多く、商談期間も比較的短いため、短期的に契約数を伸ばせるメリットがあり事業を成長させていく上で欠かせない領域であるものの、中長期的には事業成長を継続、あるいは加速させていくためには、エンタープライズの顧客獲得をすることが「必要不可欠」と考えています。

エンタープライズ領域にチャレンジする意義

4.エンタープライズで成果を出すには?

それでは次に「どのようにしてエンタープライズで成果を出していくのか?」について触れていきます。
前述の私が失敗したように、商談の「量」だけを優先してはいけません。
エンタープライズ企業の受注に貢献していくためには、商談の「量」だけでなく、「質」を高めなくてはならないのです。そのためには限られたリソースを活かすために「選択と集中」することが重要となります。4つの項目についてはそれぞれ補足できればと思います。

エンタープライズで成果を出すには?

①企業のターゲティング

まず企業のターゲティングです。限られたリソースでは優先順位を決めることが重要です。(「当然じゃないか」と思われる方もいらっしゃると思いますが、個人的に重要と考えているのであえて明示します)

受注実績の再現性を高められるのは、「導入実績が多い」共通項の仮説設定することです。一番分かりやすいのが「業界分類」です。

しかしながら、提供するサービス特性によっては、業界による差分がなく、「企業規模」「地域」「業績」「●●●に出展している」「▲▲▲で表彰されている」「利用しているサービス」「求人状況」など”自社にとっての共通項”をみつけることがベストです。

「導入実績」×「保有リード」の2軸でのターゲティング

そしてターゲットとなる企業数と保有リード数(上図「A」+「B」)を算出します。

<ターゲット社数・リード数がどの状態にあるのか?>
①20社/100リードとかなり限られた企業数しかないのか?

②100社/500リードとちょうど良さそうな企業数なのか?

③500社/3000リードで多く、この半期でアプローチしきれるのか?

ターゲット社数・リード数がどの状態にあるのか?

上図の「A」のターゲット社数、及び保有リード数によって、取るべき戦略・戦術が変わってきます。

<少ない場合>
少ない場合は1件ずつに丁寧に「質」を上げた対応は必要不可欠です。
・インサイドセールスが1人ずつ、あるいはは1社ずつ時間をかけて情報収集や仮説を考えて、なんとしても会話をしてもらう、アポを取る
・アポが取れた際には、1件ずつ事前にしっかりと下調べを行い、そのお客様に合わせた提案書を個別に準備して初回商談に臨むようにする
・上図「B」の保有できていない「Championの可能性が高いであろう役員・部長レイヤー」をHPから調べて、手紙BDRを実施する

<多い場合>
多い場合は商談の「質」の低下を防ぐため、以下のような策を講じます。
・広くセミナー集客やメール等のアプローチしながら、興味を持ったを見つけ出し、生産性を考えながらお客様に提案する
・上図「A」の保有リードの課長クラスや係長クラスの方へ情報提供を行いながら関係構築して、「会社の状況や方針、現場の課題感」などを教えてもらい、それから「Championの可能性が高いであろう役員・部長レイヤー」に丁寧にアプローチする

また、提案中案件の受注することが最優先となるので、セールスチームのパイプラインとインサイドセールスチームのスキルセット等、それぞれのリソース状況を考慮しながら、「集中」ができるような社数やリード数を設定することが重要と最近は考えています。

<考慮するべき観点>
・フィールドセールスは何名いるのか?
・それぞれどれくらいのパイプラインを保有しているのか?
・クロージングするまでにどれくらいのリソースを割いているのか?

・インサイドセールスは何名いるのか?
・それぞれ商談獲得スキル、初回商談対応スキルはどれくらいあるのか?

考慮するべき観点

過去、私が失敗した経験では「この四半期のターゲットは500社」と安易な”ABMっぽい”戦略を取ると、だいたいアプローチし切れず、解像度も浅いため、新しい気づきもそこまで得られず、次に活かすことが難しいと苦い経験を反省しています。

ですので、明確な仮説を持ったターゲティングを行い、1ヵ月間程度で集中してアプローチしてみて、アプローチ仕切ったのであれば、そこからの気づきを踏まえたターゲティングのチューニングを行い続けること中長期な戦略性の精度を高め続けられるのでは?と考えています。


②ターゲット企業の組織構造の理解

エンタープライズ(大企業)へアプローチしていくには、組織の構造を理解しなくてはなりません。私も最初は部門の数、会社に紐づく人が数が多すぎて「誰からアプローチすれば良いのだろう?」と迷わされました。
ですので、まずは冷静に自社のサービス特性と、お客様の組織パターンを理解していきましょう。私は証券会社の本社にも在籍していたこともあり、大企業の部門ごとの壁や人間関係を想像しながらアプローチをすることを意識しています。

一般的な企業の組織図イメージ

特にエンタープライズでは、全国に拠点があり、その全国の拠点の社員の方も顧客・ユーザーとなり得るのであれば、さらに関与者が多くなり、意思決定やアプローチ先の選定はより複雑性を増していきます。

エンタープライズ(大企業)にある複雑な組織図①

私が証券会社のシステム部門に在籍していた際に経験したのですが、決して本社の部門の方だけでシステム導入などの検討を進められるわけではありません。全国の営業所や生産拠点で、会社の売上を支えている方々の声も尊重することもしばしばあり、意思決定が停滞するケースも非常に多いのです。

エンタープライズ(大企業)にある複雑な組織図②

また複数事業を事業部制をとって展開しているエンタープライズ(大企業)は各事業部ごとに決められた予算があり、それぞれの事業部毎の売上目標や事業の大きさなどの力関係が存在するケースが多いことが想定されます。

エンタープライズ(大企業)にある複雑な組織図③

さらに持株会社制・ホールディングス制をとっているエンタープライズ(大企業)は、持株会社・親会社が全社を取りまとめているケースと、各事業会社に任せているケースの2パターンに分かれます。

エンタープライズ(大企業)にある複雑な組織図④

③組織開拓の仮説検証する実行力

ここからは上述した通り、契約にたどり着くまでの関与者が多くなる可能性が高いため、「どの部門にChampion(=顧客内部で自分に変わって営業をしてくれる人)がいるのか?」仮説を立ててアプローチを繰り返し、対象企業に関する情報を集めながらアプローチの精度を上げていくイメージをご紹介します。

まずSMB(中小企業)の場合でも、歴史の長い会社も多く、様々な人物関係の仮説を想定しなくてはならないことをお伝えできればと思います。

<SMB組織開拓の仮説>
①創業社長が最終的に承認しないと難しい(当然ですが非常に多いケース)

②ご子息の中で、●●部門の長男よりも、■■部門の次男が次期社長候補?

③過去にシステム検討したが、10年以上現場のリーダーを任せているAさんが反対して、システム導入に至らなかったため、リーダーも説得必要

④現場がOKであっても、会社で一番システム詳しいBさんの選定基準に合わないと評価されないリスクがある。

SMB組織開拓の仮説
SMB組織開拓の仮説

エンタープライズ(大企業)でも、全国の拠点の方がそこまで意思決定に影響しない(反発をされない)場合で、対象部門が明確なら意思決定/決裁関与者を把握できる可能性は高いです。私もマーケティング系のサービスを提供していた時は、迷わずにマーケティング部門にアプローチしていたことが多かったので、当時はそこまで組織の理解で苦労はしませんでした。

エンタープライズ(大企業)の組織開拓の仮説①

一方で、全国の拠点の方の業務への影響度が大きいサービス(顧客管理システムや受発注システム、生産物流システムなど)となると、もちろん意思決定に関わってきます。
ただし、エンタープライズ(大企業)のほとんどがガバナンス(企業の管理体制)が機能しているため、以下の3つのケースに集約されるのではないか?と考えています。
(もしこの3パターン以外もあるよって方は、コソっとDMで教えてください、、、!)

<エンタープライズの3つの検討パターン>
ケース①
本社の事業本部や担当本部が主導で検討する

ケース②
本社のシステム本部やDX本部が主導で検討する

ケース③
エリア別や拠点単位で決裁・導入が可能である

エンタープライズの3つの検討パターン
エンタープライズ(大企業)の組織開拓の仮説②

とはいえ、電話して親切に教えてくれることは、当然ありません。
「実際にどのケースなのだろうか?」、「提案余地があるのか?ないのか?」などを地道にコツコツと情報をGiveしながら、対象企業の情報と事実を積み上げていく実行力が必要と考えています。
エンタープライズセールスで非常に経験豊富なナレッジワークの桐原さんが「大手企業の営業活動は超地道」と発信されているだけでなく、相手の出世ルートまで知ろうとされていて、とても心に沁みましたのでご紹介させて頂きます。

そのような複雑な組織の中でも、全国の営業所や生産拠点で会社の売上を支えているエリア責任者の方やエリア統括役員の方が、現場の生産性を高めるための施策を考えていらっしゃるケースも多く「本社への発言力が強い方はいるのか?誰なのだろう?」という、本社に提案してくれそうなChampion(=顧客内部で自分に変わって営業をしてくれる人)を探し出す活動も重要と考えています。

エンタープライズ(大企業)の組織開拓の仮説③

以上のようにエンタープライズ(大企業)は、関与者が多いからこそ、仮説検証をPDCA繰り返し、愚直にChampion(=顧客内部で自分に変わって営業をしてくれる人)を見つけ≒創り出すことが重要だと考えています。

組織開拓の仮説検証を繰り返すPDCA

④お客様に知見を与える「チャレンジャー・セールス」となる

繰り返しになりますが、エンタープライズ(大企業)の営業活動においては、ビジネス経験やリソースだけでなく、人脈も豊富な大手企業が必ずと言っていいほどに立ちはだかってくることになります。このような逆境の中から、私たちは活路を見出さなくてはならないのです。

そしてエンタープライズ(大企業)のChampionの可能性が高いであろう役職者の方々に接触することは、本当に本当に容易ではありません。
単に忙しいというだけでなく「これまでに歴史のある会社の中で、激しい社内競争で実績を上げて勝ち上がってきた方々」であり、「尊敬すべき百戦錬磨のビジネスパーソンの皆様」であること、且つ「大手各社の熟練されてきたトップセールスの方々から数多くの提案を受けてきた方々」である、ことを決して忘れてはなりません。

エンタープライズの役職者に接触するメリット・ハードル

そのような大企業の役職者の方々がどのような状況に置かれているかを想像してみましょう。当然、私たちのような新規アポイントを獲得したい会社の新規営業担当からの営業電話や営業メール、あるいは営業のお手紙がひっきりなしに届いているわけです。そうなると、あまりにも多い営業活動に対して、基本的に”営業はお断り”となるわけです。

一方で、そのような役職者の方々はなぜ忙しいかというと、経営陣から与えられた重要なプロジェクトを成功に導くことを任されているためです。
上述した既に付き合いのある大手企業との打ち合わせを行いながら、新しい情報や知見を取得することや、自分の代わりとなってプロジェクトを推進してくれる人材を育てることも責任範囲となっていることが多いのです。

大企業の役職者の方の状況を想像してみる

だからこそ"無作為に営業活動を行ってくる鬱陶しい営業"から、"自社のビジネス課題を理解したパートナーとなり得る存在" として差別化しなくてはならないのです。そんな時は、社内はもちろんですが、社内だけでなく先人の皆さんの知見をお借りします。
これまで様々な営業やセールスに関する書籍が出版されていますが、個人的にはマルケト社に在籍していた時から読んでいて、読んだことがある方も多いと思いますが「チャレンジャー・セールス・モデル」が好きなので、ご紹介させて頂きます。(この本以外にも「この本良かったよ!」って方は、是非教えてください!)

『チャレンジャー・セールス・モデル』

この「チャレンジャー・セールス」も、同じく読んだことがある方が多い「SPIN営業術」も、主にセールス向け(フィールドセールスや外勤営業など売上が目標としている営業の方)の書籍になりますが、インサイドセールスプラスのしげのさんや、セレブリックスの今井さんが投稿していただいているように、新規営業プロセスの最初の接点である、インサイドセールスで活用すると成果が変わると考えています。

「チャレンジャー・セールス」を新規営業プロセスに活用する

"自社のビジネス課題を理解したパートナーとなり得る存在" として差別化し、お客様の心を動かすには、”お客様へ興味・関心・貢献の心”を持って、”仮説を立てて気づきを与えようとする”姿勢も重要だと考えています。
お客様もそういった姿勢のセールパーソンとならお忙しい中でも「この人なら少しくらい話しても良いかも」と入口の「信頼関係」を醸成できるものだと思います。

とはいえ、現実的に一日の限られた時間の中で、仮説構築に時間に割ける時間は有限です。だからこそSalesforce社でも実践・インサイドセールス育成プログラムに取り入れられている「Why You ? Why Now ?」を時間をかけてでも習得する価値があると考えています。

「Why You ? Why Now ?」
Salesforce社の「Why You Nowの一例

それでも「Why You? Why Now?って、なんとなく言っていることはわかるんですけど、何の情報をどこから、どれくらい情報の見て、どれくらいの時間をかければ良いのかわからないんですよね〜」というお声を今でも社内・社外の方から多く頂きます。

そんな時は「今、自分のいる会社へ営業するとしたら」「または自分が営業されるとしたら」から考えてみることをオススメします!
仮に自分の働いている会社のサービスやプレスリリースだけでなく、個人的なnoteやSNSの投稿を見てくれて連絡をもらったらちょっと嬉しくありませんか?

上述の今井さんの投稿にもありましたが、お客様へ興味・関心を持って「このお客様にどんな形で貢献できそうか?」を考えてみると、何も調べないよりはもちろん時間はかかりますが、そんなに「「Why You? Why Now?」を考作ること自体は難しくはありませんので、慣れてくるまで実践してみることが一番のハードルなのでは?と感じています。

「WhyYou? WhyNow?」は誰でも作れる

それでも「Why You? Why Now?のイメージわかないよ〜!」って方ははこちらのnoteに具体的なメール文面例を元に詳しく解説していますので、良かったら読んでみてください。


さらに今回は「エンタープライズ(大企業)で成果を出すには?」がメインのテーマになりますので、もう少し具体的なエンタープライズならではのアプローチの考え方や方法についても、書かせていただきたいと思います。

これまでの証券会社のシステム部門に在籍していた時の経験と、新規法人営業経験の中で感じた重要な仮説が1つあります。
大企業では同業他社の動きも知りたいのですが「外部の情報よりも自社内の情報、自社グループ内の情報が重宝されるのでは?」という仮説です。

大手企業に所属する方が知りたい情報とは?

証券会社のシステム部門に在籍していた時、よく当時の部長や副部長の方が「●●常務が〜」「■■重役が〜」「▲▲部長が〜」と会話されていたことを思い出しながら、大手企業に所属されている方には「自社内の情報、自社グループ内の情報も届けると喜んでいただけるのでは?」思うのです。

もちろん個人情報の保護が重要な時代ですので、個人については決して触れずに、本部のとある●●部門の”とある役職者”の方に地道に情報をGiveして「こういう課題があると考えている」「こういう予定を考えている」という情報を持って「勝手ながら▲▲部長も〜だったりするのでは?」とお客様との接点を”点”から”面”に広げていきながら、仮説を検証していくことを意識しています。

①とある接点から他部門に展開する”面型”アプローチ

また本社の各部門が検討していることや、逆に検討がストップしている理由などが情報が全国の拠点の方々に情報共有が行き届いているということはあまりない印象です。ですので、今度は”本社のとある●●部門の方”から聞いた情報を”本社のとある●●部門の方は〜と仰ってたのですが、▲▲支社の■■様としてはどうお考えでしょうか?”と本社との接点から全国の拠点へ”パラシュート型”に視野を広げて情報をGiveしていくこともお客様から喜んでいただくことも多いのです。

②本社から各拠点に展開する”パラシュート型”アプローチ

一方で、全国の営業所や生産拠点で会社の売上を支えている方々の意見は、本社の方も無下にはできません。ですので、逆に”とある●●拠点の方”の意見を複数集めてから、本社の方を巻き込んでいく”ボトムアップ型”のアプローチが実は最も有効なのではと考えています。

③各拠点から本社を巻き込む”ボトムアップ型”アプローチ

さらにエンタープライズ(大企業)でよくあるのは、他の事業部やグループ会社での取り組みも情報共有されることは、グループの社内報やポータルサイトなどではあると思われますが、その頻度や内容はグループによってそこまで具体的な業務の話まで行き届かないケースが多い印象です。

だからこそ、自分たちのサービスをご利用いただいてくださっている”とあるグループ会社さまの導入事例”を”いつも貴社グループの●●●様では、弊社のサービスをご利用頂き、大変お世話になってます”とご挨拶させて頂くと、「え?●●●で導入してるの?どんなサービスなの?」と興味を持って頂くことがとても多いです。
このように組織情報を深堀って、”組織横断型”に情報をGiveしていくことも、丁寧にグループ会社を洗い出していく時間はかかりますが、お客様側によっても、営業する側にとっても最もWin−Winなアプローチ方法だと考えています。

④グループ会社との接点から各会社に展開する”組織横断型”アプローチ

5.まとめ

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
私も当初考えた以上に、お伝えしたかったエンタープライズ領域の競合環境、お客様側の組織構造や人間関係の立体的なイメージが膨らんでしまい、長くなってしまいましたが、「エンタープライズで成果を出すには?」を自分なりにまとめることができたかと思います。

エンタープライズで成果を出すには?

繰り返しになりますが、"自社のビジネス課題を理解したパートナーとなり得る存在" として差別化しお客様の心を動かすには、”お客様へ興味・関心・貢献の心”を持って、”相手に寄り添った「WhyYou? WhyNow?」を考える姿勢が重要だと考えています。

これまで外資IT企業やスタートアップの企業の中で、あるいは外部の企業の方向けにこういった勉強会を開いたりすると、少なからず同僚の方、外部の方からこのようなご意見を頂きます。

<社内外でよく頂くご意見>
「そんな事前に相手の企業や個人の情報をリサーチをして、仮説を考えるとか、時間がかかるのでやれるイメージが湧かないです。」

「Why You ? Why Now ?ってどれくらに時間がかかるんですか???
 めっちゃ効率が悪くないですか!?」

社内外でよく頂くご意見

正直なところ、お問合せをいただいたお客様、資料をダウンロードいただいたお客様、展示会やセミナーに参加いただいたお客様であれば、このように時間をかけなくても、多少の成果は出るかもしれません。

しかし、上記のような興味度の高いお客様は限られますので、興味度があまり高くないお客様とは入口の「信頼関係」を醸成することにできずに苦戦することを何度も目の当たりにしたり、相談を頂くことが多いのが事実です。

相手に寄り添った「WhyYou? WhyNow?」を考えることができないと

これはエンタープライズに限った話ではありませんが、「新規営業で成果を出すには?」やはり逃げずに「実践してみる」ことが一番大事だと考えています。
まずは1人のお客様に対して「この会社の役に立つには何ができるか?」と魂を込めて文面(多少でも自社と過去接点のある方向けのメールがオススメ)を作って見てもらえると嬉しいです。

逃げずに「実践してみる」ことが一番大事

「わかりました!じゃあ電話してみます!!」と考えた方には、一つだけ補足をさせてください。お客様の業界や職場環境、お客様の年代によって”求めている連絡方法”は異なります。ですので、伝える内容もそうですが、相手にとって”最善な連絡方法”も考えることを心がけましょう。
(ちなみに私くらいのビジネスパーソンでも、お客様からの電話以外はほとんどの電話を出ないようにしています。)

”最善な連絡方法”を考え、心がける

6.さいごに

これまで書いたことは、決して私一人では到底実行できません。
カミナシのエンタープライズ事業部では、責任者の宮城さんを筆頭に、セールスチームの皆さんとインサイドセールスのメンバー同士が「One Team」となり、日々コミュニケーションを取り合いながら、エンタープライズ(大企業)の組織開拓をしていくためPDCAサイクルを回しています。

「One Team」となって組織開拓のPDCAサイクルを回しています。
カミナシのエンタープライズチーム

また外部の方ともコラボレーションもさせて頂きながら”お客様のビジネス、働き方が良くなることに貢献ができるように”という姿勢と心を持って、1つ1つのプロジェクトを成功できるように日々頑張っています。
BOSCH様とのプロジェクトでお世話になったSweat Equity Partners,Inc.の小西さま(小西様、その節はお世話になりました!引き続き今後ともよろしくお願い致します!)

2月共催で実施したBOSCH Startup Pitch...

Posted by 小西 悠斗 on Wednesday, July 17, 2024

SendWOW」というお手紙やギフト等でお客様との良好なコミュニケーションをご支援いただいているSmapoの蔭山さま(蔭山様、いつも丁寧にご支援をいただきお世話になっております!引き続き今後ともよろしくお願い致します!)

infobox」という最高のセールス体験を実現する営業データプラットフォームの提供にてセールス活動をご支援いただいているInfoboxの清水さま(清水さま、いつも丁寧にご支援をいただきお世話になっております!引き続き今後ともよろしくお願い致します!)

カミナシに入社してから約2年間、エンタープライズセールス専属のインサイドセールスとして、悪銭苦闘を繰り返してきましたが、インサイドセールスとうポジションの枠に囚われ過ぎずに「お客様のビジネスに貢献できること事業を大きくしていくために自分が貢献できることは?」という視点で仕事ができるようになったことで、30代から40歳を迎えても、現在進行形で成長できているるのではと実感しています。

またそのような仕事をさせて頂いている、カミナシのカルチャーや経営陣の皆様、チームの皆様、また支えてくださっている各部門の皆様に、改めて感謝です!!!

特に、これまでカミナシのセールス‐インサイドセールス組織を築いてきてくださった富澤ひろしさんが、日頃から以下のように「インサイドセールスは事業成長の鍵となる組織」と社内外で発信して頂いていることも、カミナシのインサイドセールスチームが成長し続けられ、「コト」に向き合って、働きやすい環境の要因だと感じています。(ひろしさん、いつもありがとうございます!!!)

<富澤ひろしさんのnoteで印象に残った言葉>
・「インサイドセールスは事業成長の鍵となる組織」
・「より強い営業組織を作るためにはフィールドセールスからインサイドセールスのジョブチャレンジが必要だ」
・「生産性を判断するときは、フィールドセールス+インサイドセールスの合計値で判断する(個別で良し悪しを判断しない)」
・「常にフィールドセールスとインサイドセールスが文化的に溶け合うような仕組みづくりを意識する(お互いの仕事が想像つくような環境にする)」

富澤ひろしさんのnoteで印象に残った言葉

ここまで読んでくれてありがとうございます!

カミナシでは現在、エンタープライズ事業を拡大させようとしているだけでなく、冒頭にご紹介した新サービス「カミナシ 従業員」の提供開始といった、マルチプロダクト戦略を本格的に展開していくという、他では経験できないような面白いフェーズであり、社長の諸岡さんをはじめ「ノンデスクワーカーの方々の働き方と良くしたい」という熱い想いを持ったカルチャーと仲間がいます!

そんな熱い仲間たちと、日本の働き方を変えていくカミナシを一緒に作っていくことにチャレンジしませんか?

もし少しでも、カミナシに興味を持っていただけましたら、カミナシのセールス組織や雰囲気わかるエントランスブックカルチャーデックをぜひご覧ください🙌

また話を聞いてみたいと思っていただいた方、ぜひお気軽に声を掛けてください!

Xはこちら:よっち(小林 洋介)| カミナシ エンタープライズIS/BDR

また、カミナシのセールスやインサイドセールスの取り組みがちょっと気になるかもという方へ

来月12月13日(金)に「カミナシセールスNight」というイベントも行うので、良かったら是非お越しいただいて、お話させていたけると嬉しいです!

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!!!

次回は、現在進めている「エンタープライズでインサイドセールスがアカウントプランを作成する価値」についてや、「インサイドセールスのキャリアの選択肢」についてなどを書いてみたいと思います!

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