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散文集

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見たものをそのまま書いただけ あるある
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記事一覧

バスの車内で

見送られる人が乗り込んだバスの車内で、息をひそめる

「雪ですね」とみんな心の中で挨拶をする

雨が止んで、傘を持っているのは私だけだ

前の席の人と同じものを目で追っていた
光る看板、散歩する犬

優しくなろうとした視線が、冷たく見える

左肘ばかり冷える

アキレス腱ばかり暖まる

私の隣だけ空席のまま

眠っちゃっても、大事なものは握りしめて落とさない

さっき下ろした人をバスが追い抜いてい

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愛すべき人々

愛すべき人々

ガラガラの最終電車に揺られながら、甘いもの、買って帰ろうかと話している

舌足らずの、冴えない男子学生が4人、周りに気を使いながら虫を怖がっている

頭撫でられて、短い髪がグシャグシャのまま

バイクでアパートまで送ってくれた彼氏に、大っきい声で、ありがとう!!って言う明るい声

ほんとは欲しいのはこの風船だけど、こっちがいいよ、お兄ちゃん

兄ちゃんが買ってあげるから、高い方だっていいんだよ、本

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秋のこと、ななつ

秋のこと、ななつ

カゴいっぱいに柿つんで、爺さんが眩しそうにゆっくり自転車漕いでくる

山が幕の内弁当みたいな色してる
景色は能舞台でもある

みかんや、かりんや、柿がぼてぼてとなっている

16:00の夕焼け小焼け
あんまり躾られてない小型犬が散歩しているのを、すれ違う人みんな真顔で眺めていく

肉まんの買い食い

1日中、まどろみがひかりのなかにとけている

寂しさや悲しみは みんなのものとなって
余計ひとりぼ

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走馬灯

「泣き虫毛虫はさんで捨てろ」
泣いている私
気持ちに合う言葉が無い
初めて、世界が 私とあなたに分離された瞬間

じいちゃんが、ボルトの入った重い足で、アスファルトをべったり蹴りながら走る、追いかける、車の来ない道
平たく固まった指先で南京豆をむいてくれる

ねこのガラス細工を割ってしまって、あんまり悲しくて申し訳なくて、わざと、自分のじゃなくて良かったって言った
私はいつも伝えられない
怒られた

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なんかいいもの

なんかいいもの

・夕飯の支度をしている時に、お鍋の蓋を持ち上げしなにあちっ!と言って指先を耳たぶにもっていく

・校舎の窓から墓地しか見えないメメント・モリな附属中学校

・「ちゃな」という名の撫でさせてくれる猫

・『少女パレアナ』に出てきた、プリズム(その当時私はまだプリズムを見たことがなかった)

・『泣いた赤鬼』に出てくる、赤鬼が作ったお菓子
あれは何?きな粉か餡子、黒ごま的なものをまぶした球体の餅のよう

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なんかいやなもの

・敷石が猫の死体の家

・私立に通う小学生の、制服とハイソックスから
はみ出た太ももにかぶりつく妖怪、と呼ばざるを得ない女

・体温で温めたレトルトカレーを開け口から吸う
(※太いストローは使わない)

・人間の皮膚を模した(?)ジャケット

・大学教授なのに、コンビニのアイスコーヒーと飲み途中の栄養ドリンクを両手に持って、すりびるように歩きながら、目線は定まらず、図体だけ大きい

・藤田嗣治を再

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ねえ知ってる?

ねえ知ってる?

七夕飾りの吹き流しに感じる怖さは、人間の祖先が空に浮かぶ巨大イカに捕食されていた時の記憶の名残。スイカ割りは、元は人の頭部を割る遊びだった。脳みそは、ヒトに寄生して生きている。ヤドカリのように。虹がアーチ状なのはなんでかって言うと、みんなそう信じているから。飛行機が飛ぶのは、みんなそう信じているから。飛行機は気持ちで飛ぶ。その法則に気付いて作られたのがUFO。ひまわり畑のひまわりは、元人間。だから

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似ている

似ている

・自販機の前ではみんな、同じかたち

・トカゲが草陰に逃げ込むときのしっぽと、
    ラーメンを啜るときの麺の踊り

・晴れの日の空と、地球

・焼肉のときの景色と、思い出の世界
    煙の中に過去を見ている

・みんな死ぬって分かっててそれなら、私って本当にだめだ、怖くて

・西に傾いた太陽を見て、ああ あそこから世界が始まっていると分かった

・子供の時、まだ“死んでいる”時が懐かしかった

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星も月と一緒に満ち欠けしている

星も月と一緒に満ち欠けしている

・次青になるのは歩道なのに、アクセルをゆるゆると踏んでいる車がいて、この人わたしを轢くんじゃないかと疑いながら横断歩道を駆け足で渡る

・小さくて見えないだけで、星も月と一緒に満ち欠けしてるんだよという嘘を自分についた

・龍や獏の悲しみと優しさが 私の幼少期を漂っている
龍は少年のために船になり、獏は悪夢を食べ続けている

・「学校に行きたくない」の気持ちが死ぬまで付きまとう
どこにいたって家に

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いぬを飼いたいのは

いぬを飼いたいのは

・いぬを飼いたいのは、可愛いからとか一緒に遊びたいからとかそうじゃなくて、あんなに可愛くて愛おしくて非力な生き物を、自分の支配下から逃げられないように閉じ込めておきたいという、その気持ち

・ヤンキーカップルの彼女の方は、バス降りる時にありがとうございますっておおきい声で言う

・近所に止まった救急車のサイレンがまた鳴り始める前に心配な気持ちを忘れている

・手紙の上には物を置けない、その心

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