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僕らの日々

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#眠れない夜に

性という観点から見る僕ら

性という観点から見る僕ら

眠れなくて彼女の事を考えていた。
笑った顔、怒った顔、悲しい顔、切ない顔。
そのどれもが僕の心の琴線にいちいち触れる。

出来る事なら四六時中笑わせていたいし、鼻チュー(鼻と鼻でスリスリするやつ)した時に嬉しそうな、どこかくすぐったいような顔をする彼女を永遠に何処かに閉じ込めていたい気もする。どこに行こうが彼女がいれば忽ちテーマパークになるし、何をしてようが彼女がいればそれは何回も見返す映画のワン

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1人の部屋

1人の部屋

昨日染めるはずだった髪を染めた。髪色が暗くなった。少しは大人びて見えるだろうか?彼女は今日もまだ帰らない。早く会いたい。

帰って来たら"似合うね。かっこい"と言ってくれるだろうか。なんて少し期待をしている。邪魔をしてはいけないので連絡はしない。したいのは山々だが。

きっとクタクタで帰ってくる。すぐに布団に潜っていつものように"5分だけ"と言って30分はそのまま動けないでいるだろう。無理に起こす

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僕の1日

僕の1日

am8:12僕がお風呂あがりに昨日の鍋を利用して作ったうどんを食べながらバタバタと用意を済ませた彼女はそのままバタバタと仕事へと向かった。いつも通り車の後ろで見送り、バックミラー越しに手を振る。車が見えなくなるまで見送ってから玄関のドアを閉める。ガタンッと少し年期の入ったドアが僕の背中で閉まる。がらんとした部屋を見渡して一人ぼっちを知る。

だから僕はすぐに彼女に"いってらっしゃい"の連絡をする。

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Re: ロード トゥ 彼女ん家

Re: ロード トゥ 彼女ん家

また電車に乗っている。心地よい揺れと流れていく景色はそれに比例して僕の思考を程よく加速させてくれる。台風の予報が出ていた今日だが空には少し晴れ間がある事を今朝の彼女の電話で知った。曇天の中にぽっかりと青が佇む様はどこか砂漠のオアシスの様にも見えた。

"寂しくなったから、電話した"

それとなくかかってくる気配はしていた。だから僕は素直に"かけてくると思ってた"と言った。彼女が家を出て5分経たない

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カネの貧しさとココロの貧しさ

カネの貧しさとココロの貧しさ

"あ、これヤバイビジネス始まった"
大体こう言って何かが始まるのだ。僕らは2人ともビジネスモデルを考えたり、その内側の仕組みを詳細に調べたりする事が好きで、事あるごとにこの話になる。あれはレッドオーシャンだからダメ、あれはブルーオーシャンだけれど実現が現実的じゃない。先行投資がデカすぎる、いやコレはイケるかも。等と、どちらかが飽きるまでずっとこのやり取りが続いている。側から見ればとんだ金の亡者カッ

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平成プリなるものなど

平成プリなるものなど

朝は普通通りに目覚めた。
昨日の夜はそんなに夜更かしはしていない。
何故かは分からないが彼女が目を覚ます時とほぼ時を同じく僕も目を覚ます。目を開けて隣を見るとすでに目覚めた彼女が朝日に照らされた横顔で僕を見つめていた。それだけで幸せだった。

"おきた?"

悪戯っぽく笑う彼女の顔が綺麗で僕は一瞬言葉が出なくなってしまった。それから僕らは15時前に家を出た。何故朝普通通りに目が覚めたのにその時間に

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1日と言う単位での死

1日と言う単位での死

僕らの体内では毎日1.2兆個もの細胞が細胞分裂によって新たに生まれている。その分死んでいく細胞もいるから、極端に言えば1日という単位で僕らは死んで新たに少しずつ生まれ変わっているとも言える。

もちろん全てが新しく入れ替わるわけではないんだけれど、それでも昨日とは少し違う僕らとして今を生きている事になる。毎日少しずつ死んで、少しずつ新しく生まれる。その1日という区切りとしての死はやっぱり眠りにつく

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影絵

影絵

訳もなく電気も付けずに2人で横になっていた。何かを待っていたのかもしれないし、たまたま電気を付けなかっただけかも知れない。

彼女は何の前触れもなくスマホのライトをオンにして天井に掲げ、それから僕の胸の上にそれを置いた。たまにくるこの無茶振りに僕は意地でも応えなくちゃならない。多少、というか全然面白くなくても。

だから手始めに僕は影で犬を作った。(お、今笑ったな?よしよし。手応えはあったぞ)次に

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キスマーク

キスマーク

歯型を眺めている。彼女はさっき仕事へ行った。寝惚け眼で慌しくセックスをした後、愛してるって言い合うあの時間もそこそこに。だから僕はまだ微かに彼女の体温が残る布団に潜って彼女の匂いに包まれながら歯型の残る指を眺めている。いつからだっただろう?彼女がこんなにも僕に噛み付く様になったのは。

歯型が付くくらいだからこれは大変に痛い。
だけど彼女が僕を噛みたがるのは決まって復活の夜か、純粋に僕らがお互いを

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ピーターパンとティンカーベル

ピーターパンとティンカーベル

ロンドン、ケンジントン公園で乳母車から落ちて孤児になった彼は遂に誰にも見つけられる事はなく歳も取らなくなってしまった。現実的な話をしてしまえば、この時のベビーシッターの責任能力の欠如にはほとほと呆れるのだが。

彼の名前はピーターパン。ネバーランドのロストボーイと呼ばれる子供達の1人だ。そんな彼には優秀な(またはチート級の)相棒がいる。そう、ご存知ティンカーベル。彼女の鱗粉を浴びて信じる心を持てば

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はんぶんこ。

はんぶんこ。

僕と彼女は気持ち悪いくらいに似ている。それでいてあり得ないくらいに正反対の部分を持っている。次話す言葉が分かったり、流してもいない曲の同じ部分を歌い始めたり、ふと口から同時に溢れる言葉が一語一句間違わずに同じだったりする。かと思えば僕は物事をすぐに分解して深く考えたがるのに対し、彼女は見たまま感じたままの直感タイプ。

そんな風な僕らだからたまに意見が合わない時もある。何かを半分こしようとすると、

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13畳ワンルームで僕らは旅をする

13畳ワンルームで僕らは旅をする

布団は床に敷く。ベッドフレームは僕ら2人を抱え切れるほど強くなかった。愛し合うたびに彼は悲鳴を上げてその悲痛な叫びが部屋にこだましていた。流石に可哀想だと思った。

この13畳のワンルームは彼女の部屋であり、僕らの動く城であり、互いを閉じ込めておくための牢獄であり、そして何よりもう一つの隔離された世界だ。ここに居れば外界からの全てを断ち切って2人になれる。世界に2人だけみたいだねなんて言える。雨が

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