「アニサキスぶっ殺しサーモン」 冷凍・加熱なしで安全に生食可能に! 新技術開発の熊大で試食会
熊大・産業ナノマテリアル研究所の浪平隆男准教授と王斗艶准教授の研究室グループは、海棲生物に寄生するアニサキスを冷凍・加熱無しで不活性化、リスクを排除する技術の実用化を目指している。10月28日と29日、FORICO・学生会館(ともに黒髪地区)で学生・教職員・市民を対象とした「パルスサーモン」の試食会を実施した。
アニサキスは魚類の広範な種類に寄生し、激しい腹痛や嘔吐を伴う「アニサキス症」の原因とされ、食中毒の約半数がアニサキスによるものとされる。両准教授の技術は生魚の切り身に瞬間的に大電流を流すことでアニサキスを殺処分して無害化するというもので、電子レンジと異なり対象物が加熱されることもない。同じ電気エネルギーでもあっても雷に近い性質を持ち、瞬間的な電撃によって、食品が生で品質が変わらないまま安全な状態にすることができるという。昨年からのクラウドファンディングにより、既存のアジに加えてサーモンに対応。今後も対応魚種を増やす目論みで、今回はパルス電流で安全化した「パルスサーモン」が試食の対象となった。
試食会では学生が多く参加し、パルスサーモンと通常のサーモンを食べ比べ、味や色味の違いなどを比較検討した。工学部の学生は「若干(味が)違う気もするが、言われてなければ全くわからない。美味しい」と笑顔を見せ、文学部の学生は「佐久間宣行氏の『オールナイトニッポン』で紹介されていた。アニサキスで苦しんだことがある人も多いと思う」と技術発展に期待を寄せた。
記者も試食してみたところ、ほんの若干、パルスサーモンの方がスモーキーに感じたものの、ほとんど違いはなかった。試食した学生からも「むしろ(普通のサーモンより)パルスサーモンの方が好みかもしれない」との声が聞かれるなど、品質に変化はなくむしろ味は好評のようだった。
同技術を研究している浪平准教授は、「(パルス処理をした生魚の)需要は高いと思う。食べたい人や売りたい店も多いが、パルスパワーの電源確保、寄生虫殺菌装置などのシステムが一般に普及していないため、まだ商業化できていない」と話す。今回の試食会については企業にとっての各種リスクを低減し、市場需要が高いことを周知・証明するために宣伝を進めているという。寄生虫に対する不安を取り除き、それでいて冷凍や加熱と異なり風味なども変わらない利点を活かしつつ、「さらなる可能性も明らかにしていきたい」と力を込めた。
今後、試食会やPRキャラクター「アニー」を通じた新アニキサス撃退法のブランディングやプロモーションにも力を入れる計画だという。
(2024年10月29日)
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