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国語の授業でAIを使う小学校 ~東京学芸大学附属小金井小学校に行ってきました~

こんにちは!
11月18日、東京学芸大学附属小金井小学校で開催されたセミナーに参加してきたので、今日はそのことについて書こうと思います。

ICT×インクルーシブ教育セミナー Vol.6

東京学芸大学附属小金井小学校とは?

東京都小金井市にある国立の小学校で、東京学芸大学の附属校です。
JR武蔵小金井駅からバスで3分。
国立の付属校全般に言えることですが、教育カリキュラムの研究開発と教員養成に力を入れています。

セミナーの大まかな内容

このセミナーのタイトルは「ICTに学びを救われる子はあなたのそばにいる」です。
このセミナーは、文部科学省が東京学芸大学に依頼している「特定分野に特異な才能のある児童生徒への支援の推進事業」の一環として行われました。

「特異な才能」というとギフテッド教育を思い浮かべますが、文科省は対象をもっと広く捉えています。
発達障害など、マジョリティとは異なる育ち方をするすべての子どもたちの才能を伸ばすカリキュラムを研究する。それがこの事業の目的です。

タイムテーブル

◆午前の部 …生成AIやデジタル教科書を活用した授業
・公開授業① 国語4年「プラタナスの木」(鈴木秀樹 先生)
・公開授業② 理科6年「土地の作りと変化」(小林靖隆 先生)
・協議会(=授業の振り返り) (中川一史 先生 放送大学教授 )

◆午後の部 …インクルーシブ教育や個別最適な学びについて
・セミナー①
・セミナー②
・パネルディスカッション(全体の振り返り)

詳細は、鈴木先生のこちらの記事をご覧ください!

午前の部では「ICT(特に生成AI)の活用」がテーマになっていました。
具体的に言うと、

・どうしたら小学生に生成AIの仕組みを理解させられるのか?
・「今までやりたかったけれどできなかった授業」が、生成AIによって可能になったのではないか?
・それをインクルーシブ教育にも応用できるのではないか?

ということに関して、情報を共有し合いました。

今日はまず、公開授業①国語4年「プラタナスの木」で見学したことについて書こうと思います。

(※この記事もChatGPTの助けを借りて書いています。そのためプロンプトの文章など、細かな部分が不正確である可能性があります。ご了承くださいm(__)m)

「プラタナスの木」授業の流れ

1.一人で考える(意見を作る時間 5分)

→まずは、児童が一人で考えを深める時間をとります。

鈴木先生の「マーちんはもう一度おじいさんに会えると思う?根拠になる文章を引用して、マイ黒板※ に考えをまとめてください。
という問いかけを元に、児童がChromebookを使って自分の意見をまとめました。
※マイ黒板…デジタル教科書に搭載されている機能。教科書の本文を引用しながら、児童が自分オリジナルの板書を作ることができます。
(パワーポイントのスライドを作る時の感覚に近いかもしれません)

マイ黒板のイメージ

2.班で話し合う(意見を広げる時間 10分)

→次に、児童たちが班を作って各々の意見を共有します。
A君「(一般的に)切られた木は、新しく生え変わりますよね。それと同じようにおじいさんも、違う姿になってマーちんの前に現れると思う。」

Bさん「おじいさんがプラタナスの精霊だとしたら、その子孫がマーちんの前に現れるかも?」
という意見が出ていました。

見学に来た数十人の先生たちに囲まれながらこれだけの意見が言えるのは、すごいことですよね。
小金井小学校は日頃から「自分の意見を考えて、言葉にする」ことが当たり前になっているのだなと感じました。

3.フォームに「自分なりの結論」を書いて提出&集計 (振り返りの時間)

 →クラスの意見分布を円グラフにして児童に見せる(5分)
→班での話し合いや発表を経て、児童たちは「自分なりの結論」をマイクロソフトのFormsに提出します。
マーちんは、もう一度おじいさんに会えると思いますか?」
A.会えると思う B.会えないと思う C.その他

みたいな感じです。
班の中で「良い意見」を選抜するのではなくて、「自分なりの結論」として集計する授業設計が、個人的にとてもいいなと感じました。

提出された意見は即座に集計されて、円グラフで児童たちに共有されました。Aの意見が大半を占めました。

4.ChatGPTに、子どもたちの意見を分析してもらう (振り返りを深める時間)

→ここで生成AIの登場です。以下のように活用されていました。
※ChatGPTには年齢制限があり、13歳未満は使用できません。そのため、小金井小学校でChatGPTを使用する時はすべて教師が操作をしています※

ステップ①:AIは「学習しないモード」に設定していると子どもたちに伝える

・ChatGPTは通常、入力した言葉を自動で学習するモードになっています。
このモードをオフにしていることを、鈴木先生は児童たちに伝えていました。
「ChatGPTを使う時は個人情報の扱いに注意しなければならない」ということを、授業の流れに自然に盛り込んでいるのだと思います。

ステップ②:ChatGPTにスタンバイさせる

→先生がChatGPTに教科書の本文を読ませ、「この本文をもとに質問するので、準備してください。」というプロンプトを入力します。

ステップ③:子どもたちの意見をChatGPTに読ませる

「これは子どもたちの国語の授業についてまとめたものです。 子どもたちは『マーちんがおじいさんにまた会えるのか』という問いについて深く考えたと言えるでしょうか?分析してください。分析の結果は小学4年生にも分かるようにまとめてください。」というプロンプトを入力し、子どもたちの意見を集めたformsから出力したスプレッドシートを添付して、ChatGPTに読ませます。

ChatGPTからは「なかなか深く考えられている」という感じの、おおむね肯定的な回答が返ってきました。

ステップ④:子どもたちと同じ問いをChatGPTにも考えさせてみる(クラスにAI=第三者の意見を入れる)

「ではあなた(=ChatGPT)は、マーちんがまたおじいさんに会えるかについて、どう考えますか?」というプロンプトを入力した後、児童たちに「AIはどんな回答をすると思う?」と予想をさせていました。
AIの仕組み(=文章生成のプロセス)について、体験的に学ばせる狙いがありそうです。

子どもたちからはこんな予想が出ていました。
Aさん「『私は検索エンジンなので、個人的な感想を持つことはできません』って言うと思います」
→生成AIと検索エンジンを混同(単なる言い間違いかも?)している場面がありました。
しかし、すぐに他の児童が「検索エンジンじゃなくて生成AIだよ!」と指摘していました。
小金井小学校の児童が、日頃からAIに親しんでいることが分かる発言ですね。

B君「『会えない』って答えると思います。AIは、人間みたいな想像ができないから。」

先生の合いの手「おじいさんが『精霊のようなもの』かもしれないっていうのは、前回の時間までにみんなが考えたことだよね。AIもそうやって(想像力を働かせて)考えることができそうかな?」

多数の児童たち「できないと思う!」

ステップ⑤:子どもたちにAIの回答を見せる(児童の意見とAIの意見を比較させる)

→児童たちの予想を聞いてから、ChatGPTの回答を発表します。
回答を見せる前に予想させることで、児童たちにAIの特徴を考えさせているんですね。

問いかけがクイズ形式になっているので、児童たちが自然と主体的に考えられる設計になっています。すごいですよね。

ChatGPTの回答(概要):
「(本文に書かれている)おじいさんと『また会える』というのは、マーちんたちがおじいさんから感じたことや、おじいさんからの教えを思い出すという意味です。つまり、物理的には会えないけれど、マーちんの心の中にはおじいさんとの繋がりが残っている、ということです。

ステップ⑥:AIの回答にどのくらい共感できるかを、子どもたちに考えさせる

ChatGPTの回答を児童に見せた後、先生が、「AIの意見に共感できるかどうか」を児童に問いかけていました。

・共感できる人 →「パー(指5本)」で挙手する
・共感できない人→「グー(指0本)」で挙手する
・中間の人   →指の数で共感度を示す

というように、挙手した時の指の本数で意思表示をします。
全体的に、グーの数が多かったように思います。(公開授業は特殊な雰囲気だったので、普段はもう少し違った結果になるかもしれません)

この後すぐにチャイムが鳴り、ここで授業終了となりました。

鈴木先生の授業形式(まとめ)

導入:【講義形式】先生主導で前回の振り返りをする
前半:【一人で活動】児童が個別に自分の考えを深める
中盤:【複数人で活動】 グループで話し合って考えを広げる
後半:【第三者を入れて、批判的な視点で考える】 AIを対話に加えることで、自分たちの意見を相対化する

一人→複数→第三者、というステップを経ることで、児童たちの思考が段階的に深まっていく設計になっていると感じました。

【お礼】授業を見学させていただいた感想

鈴木先生、貴重な授業を見学させていただき誠にありがとうございました。
この価値ある情報にアクセスしたいと願っている人が、日本中にたくさんいると思います。
小金井小学校の実践を一人でも多くの教育関係者や保護者に届けたいと思い、この記事を書きました。

感謝の気持ちを表すためにも何か役に立ちたいと思い、授業を見学して私が感じたことを少しだけ書いてみようと思います。


① 国語の授業でChatGPTを使うことの効果

・今回の授業でChatGPTを使った理由は、AIの意見をフックにして子どもたちの考えを深めることが狙いだったのかなと感じました。
ChatGPTを使うタイミング的に、児童たちの考えを揺さぶる効果がありそうだからです。

AIに対してなら批判的な意見を言いやすいので、そこから始まって
「でも待てよ?もしかしたら自分の意見も違った見方ができるんじゃないか…?」と、自分たちの意見を批判的に振り返りやすくする効果もあるかもしれません。

② 小学4年生に生成AIを教えることの限界

・全体を通して、児童は、
「AIは人間みたいな想像ができないよね。 」
と考えていたように見えました。
AIに対して批判的な見方ができていたように感じます。

しかし言い換えると、少しステレオタイプな意見が多かったなとも思います。理屈というよりは、イメージや直感でAIの性質を把握している感じですね。
これが鈴木先生がおっしゃられた「小学4年生に生成AIを教えることの限界」の1つなのかもしれないと感じました。

③ AIと人間の違いを理解する第一歩

・子どもたちは、AIについて批判的な眼差しを持っていました。
実は授業を見学しながら、私は「AIの意見と自分たちの意見の違いを言語化すると、子どもたちはどんなふうに表現するのかな?」と気になっていたのですが、いいところでチャイムが鳴ってしまいました。

この授業は8時間中の6時間目とのことなので、次の授業で子どもたちがどんなことを考えたのか気になります!

まとめ

今日は東京学芸大学附属小金井小学校の国語の授業について書きました。
まだ公開授業①のことしか書いていないのに、すごい分量ですよね笑
それだけ、この日のセミナーは学ぶことが多かったです。

一気に書いたので、一部不正確な点もあるかもしれません。
もし間違いがありましたら、お手数ではございますがコメントやSNSのDM等で教えていただけましたら幸いです。機動的に修正します!

時間を見つけて、続きの記事も書いていきたいと思います。

小金井小学校の授業はここからも見られます!

生成AIの授業活用について学びたい方は、鈴木先生のnoteもめっちゃ勉強になります!ぜひフォローしてみてください!

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