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機能不全おじさんジャーナル

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おじさんのフィールドワークの記録と事件簿
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記事一覧

嫌いな上司との向き合い方と心理的本質主義

 ある週末、上司と仕事終わりに飲みに出かけた。

 月に一度程度のペースでそんな不毛極まりない会が開かれる。彼は部下と飲みに行くのが夢だったのだと言い、毎度私を誘うのだが私の夢は温かい毛布にくるまれて猫ちゃんと穏やかな眠りに着くことである。
 フロロロロ・・・、という小気味良い音に包まれたい。そして出来ることならばそのまま音の粒とともに温かな毛の隙間に吸い込まれていきたい。
 

 私は人から、そ

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やまゆり園事件 空っぽの器と自己救済

 よく宇宙の壮大さに比べれば個人の問題なんてちっぽけなものだ、という慰めの言葉をよく聞く。確かに物質的な比較をすればちっぽけなものだし、宇宙と比べれば吹けば飛ぶ程に些細なものだ。そして何より、それらは大体において時間の経過と共に風化していく。
 しかし、その事実があったとしても今目の前にある問題というのは確固として存在しており、簡単に吹き飛ばせるようなものではない。だからこそ人は打ちのめされるのだ

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心霊スポットの種と同級生との思い出

 高校性の頃、一人の同級生がいた。彼女は艷やかな黒髪を背中に垂らし、顔立ちはどこか和製のアヴリル・ラヴィーンを思わせた。そんな彼女とは高校3年生の頃に同じクラスで、そこで知り合った。
 話すようになったきっかけがどういうものだったのかは思い出せないが、彼女は同じクラスに仲の良い人が居なかった様で教室内ではどこか浮いていたし、私も仲のいい人が近くに居ないときにはいつもヘッドフォンをして音楽を聞きなが

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メンエス再襲撃 違法マッサージ店を追う

 2024年11月、東京都品川区のメンズエステ店で強盗未遂事件が発生した。犯人は女性従業員にナイフを見せつけ現金を奪おうとし男性店長に取り押さえられた。
 逮捕された実行犯は17歳の少年だった。
 
 少年は逮捕後の調べに対し「Xで闇バイトを探した」と答え、「違法な店だから捕まらない」という言葉で犯行をそそのかされたのだという。
 同様の事件は他にも、東京都豊島区のリラクゼーション店で刃物のような

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元エホバの証人二世マッチングと新興宗教施設訪問のエピローグ

 マッチングアプリを使って婚活をしている師匠にならって私も少し前からマッチングアプリを入れている。

 私はマッチングアプリを開く時、大概において酒酔いの状態であることが多い。そうでないと見ていられない人も多いし、勢いだけでスワイプすることが出来るからだ。勢いは大事である。よしんばそれによって事故が起きても勢いさえあればこっちのものだ。むしろ勢いが足りず中途半端な事故が起きるのが一番怖い。

 私

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脅迫と色仕掛けで始まるリレーションシップ

 日曜日、いつもの居酒屋で一人でちびちび飲んでいると店の女将が言った。

「たしか結婚してなかったよね?恋人とかいないの?」
 
 残念ながらいない旨私が言うと女将は続けた。
「お客さんのお孫さんが二人いるんだけどね。上の子は活発で彼氏もいるんだけど下の子は大人しい子でね。よかったらどうかなって」
 どうかな、とは。そして孫を紹介するのはどうなのだ。祖父母からいきなり変な男を紹介される孫の気持ちを

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日本一のムダと呼ばれたダムとそこに沈んだ村。心霊スポットと狂小屋の謎

日本一のムダと呼ばれたダムとそこに沈んだ村。心霊スポットと狂小屋の謎

 日本最大の総貯水量、堤体積を誇る最大にして最後の巨大ロックフィルダムとして名高い徳山ダム。
 このダムの計画が公表されたのは1957年、狂乱の時代の始まりである高度経済成長期の頃であった。下流域の発展の為に電気と水、さらには治水を担う多目的ダムとして総事業費3350億円にも上る大規模な事業となった。
 そして、そのダムの為に一つの村が沈んだ。

 当初、40万キロワットの発電能力で計画されていた

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話したがりおぢビギンズ

 ある金曜日、裁判を見に行こうと思い計画的に有給を取得していた。
 気持ちが昂りすぎていた私は、前日の夜には釣りに出かけた後にファストフード店でドライブスルーをして期間限定メニューを馬鹿みたいに食べた後に血糖値の急上昇による気絶で眠りについた。
 
 翌朝、6時にアラームで目を覚ました後にゆっくりと時間を掛けてコーヒーを淹れ、茶菓子と共に美味しく頂く。普段私が行っている近所の地裁支部が開くまで時間

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アマゾン地獄レビュアーズ

 ある調査で、海外掲示板Redditにおいて27種類の異なる音楽ジャンルのコミュニティに投稿されたユーザーのコメントの分析が行われた。そこで100件のコメントにつき、ユーザーが何回ポジティブな言葉や表現を使っているかを調査し、音楽ジャンル別幸福度ランキングが作成された。
その結果、最も幸福度が高かったのはジャズのファンだったという。

 因みに2位にランクインしたのはヘヴィ・メタルのファンだった。

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噂に扇動される男たち

 眼の前に座る、私の直属の上司という肩書を冠した醜く肥大した醜悪な生き物がお通しのポテトサラダを吸い込み、それをビールで流し込むと続けざまに唐揚げを頬張った。

 彼は夏の健康診断でコレステロール値が芳しくなかったということで、現在ダイエットを頑張っていると語っていた。
 しかし、その日彼はダイエット中にも関わらず唐揚げにビールという組み合わせを幸せそうに接種していた。もしかすると、鶏肉はヘルシー

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初対面の女性に「今晩泊めてくれませんか」と言われた日

 前職の自動車部品工場の営業をしていた頃、私は昼食を職場近くの公園で食べていた。職場の食堂には嫌に重苦しい空気が漂っており刑務所の方がよほど雰囲気がいいのではと思えるほどであった。よくあんなにも食事を不味そうに、そしてギスギスとした雰囲気で毎日食べられるものである。とはいえ、会社で注文する弁当は確かにお世辞にも美味しいとは言えないものだったのでもしかするとあの雰囲気はそれが原因かもしれない。
 

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焼酎の聖水割りとMくんの思い出 彼から学んだ事

 私が以前勤めていた職場にMくんという私よりも3つか4つ程年上の男性が居た。
 彼は職場では結構めちゃくちゃなキャラクターで、忘年会の場で「無礼講」と聞くやいなや職制のスピーチに対し「黙れハゲ!」とやじを飛ばしたり、会社でバイクのマフラーを交換しようと休憩中に職場の工具を用いて交換したかと思えば購入していたのはただのマフラーカバーで、実質直管のサウンドを工場に響かせてみたり、ある日の昼休憩には職場

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川にまつわる怪談と初めての心霊体験。そして海外駐在員に聞いた除霊法

 数年前、私は夢のマイカーを手に入れた。

 もっとも、20代前半の頃に格安で売られていた軽自動車を買って乗っていたことがあるが数ヶ月で突然エンジンが掛からなくなり廃車となっていたのでそれ以来の、実質初めてのちゃんとした車だった。
 ちゃんとした車、とはいってもそれなりに年数のいった中古車で、細かい内装の樹脂部品などには日焼けによる劣化がちらほら見て取れた(そしてそれから2度ほど故障して細々とした

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マルチにハマったSくんの思い出

 1919年、パプアニューギニアのガルフ地区に駐在していた行政官の元へある報告が届いた。
「沿岸地域の村々で住民等が興奮状態にある」
 住民たちは村落に現れた先祖の霊に「カーゴを搭載した大きな船で親族の霊が戻ってくるのでその受け入れを準備するように」と告げられ、それを受けた指導者等はこれに従い歓迎の準備を命じた。住民の興奮状態は1920年5月22日付で沈静化したという記録があるがその間、彼らは日常

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