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「“アイコン” を持たないブランドは生き残れない──記憶に残る存在になる方法」マーケティング基礎ブランディング編②全5話

AI時代、消費者の選択肢は無限に広がる。そんな中で「選ばれるブランド」になるには、一目で認識される“アイコン”が不可欠だ。Appleのリンゴ、Nikeのスウッシュ…。強いブランドは、視覚と記憶に深く刻まれる。本話では、ブランドを象徴する「アイコン」の重要性と作り方を解説。あなたのブランドは、ただの「選択肢の一つ」になっていないか?

◯マーケティング基礎編シリーズ

1週目:WEBマーケティング編
2週目:顧客心理編
3週目:SNS拡散編
4週目:コミュニティ編
5週目:データ分析編

●6週目:ブランディング編
「ブランドとは “違い” である──競争を抜け出す差別化戦略」
「“アイコン” を持たないブランドは生き残れない──記憶に残る存在になる方法」
「AI時代はブルーオーシャンの宝庫──新市場を創り出すブランディング戦略」
「差別化の本質は“価値観のアップデート”──顧客の視点を変えるブランド戦略」
「ブランドは “意思決定” で決まる──戦略を実行するための最終チェック」

全5話でお届けします!

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アイコンの情報量ってすごいですよね!

浮かばない印象、曖昧なイメージの先に

 朝の出勤ラッシュを抜けた都心のオフィス街。社会人2年目のユキは、ビルのエントランスで軽く息を整えてからエレベーターに乗り込んだ。先週まで、社内ではブランディングの第一歩として「差別化」について議論し始め、商品が他と何が違うのか、どういう強みを打ち出すかを整理している。だが、実はそれだけでは終わらない問題があると感じている。それは――ユーザーがぱっとイメージできる“何か”がまだ足りないことだ。

 ユキの会社の商品は、性能面では「そこそこ良い」と評判だし、サポート面の丁寧さも強みとしてまとめようという方針ができあがりつつある。しかし、いざ知り合いに「うちの商品の特長は〇〇なんですよ」と話してみても、「へえ、よく分からないけど、まあいいんじゃない」と曖昧な反応で終わってしまうことが多い。なぜ人の記憶に残らないのか――そこがユキにとっての疑問だ。

 昼休み、社内のカフェスペースで軽食をとりながら、ユキは同僚に「うちの商品、ここが違うよ! と言っても、なんだか印象が薄くて覚えてもらえないみたいなんですよね。どうしたらユーザーの頭に“あ、それってあのブランドだ!”とイメージが浮かぶんでしょう?」と漏らした。すると同僚は「分かるよ、何かアイコンというか、象徴になる要素が欲しいよね。うち、ロゴマークはあるけど地味だし……SNSでバズるようなビジュアルも作ってないし」と頷く。

 ユキは「ロゴ……やっぱり何かそういう“シンボル”が必要なんですかね? でもどう作ればいいんだろう」と苦笑する。

 上司は先日、「“最強のブランディングはアイコン”だよ」とぼやいていた。たとえば“誰でも知っている赤いロゴ”とか“耳に残るフレーズ”とか、そういったものが一発でユーザーの脳に刻まれると強い、と。しかし会社内にデザイン専門家がいるわけでもなく、「オリジナルキャラクター作りますか?」といった案も空回りしている。ユキは心の中で「結局、何をどうすればいいの?」という焦りを感じていた。

 この日も、ユキは定時で仕事を終え、アパートに帰宅すると真っ先にリビングのソファへ目をやる。そこにはやはりうさぎ先生の姿――元大学教授でマーケティングや心理学、AI研究にも通じながら、社会の闇の組織によりウサギ姿に変えられたという不思議な存在である。先生は羊羹をつまみながら「おかえり、ユキくん。何やらまた考え事してるみたいだけど……」と静かに声をかける。

 ユキは靴を脱いでリビングに入り、「先生、今度は“アイコン”の話をしたいんです。上司が“覚えやすい象徴がないと、ブランディングは弱い”って言うんですけど、ロゴやキャラクターを作るだけじゃダメなんじゃ? って感じで……どうすればいいのか分からなくて」と苦笑気味に打ち明ける。

 先生はテレビを消し、「なるほど、ついに“アイコン”に着目したか。ブランディングはアイコンが肝心という言葉もあるくらいさ」と耳をぴんと立て、夜の勉強会が始まろうとしていた。

 

仏教の曼荼羅もアイコンと似た概念らしいですよ?

アイコンが示す記憶の入り口――先生の深き洞察

 夜のアパート、リビングの照明は落とされ、ユキはテーブルにノートパソコンを開いて、先生の話をしっかりメモする態勢をとっていた。先生はソファに腰掛け、いつものように穏やかな口調で「まずはアイコンとは何か、その威力を知ることから始めよう」と話し始める。

● アイコンとは何か

 先生いわく、「アイコン」とはブランドを“一目で認識できる象徴”。それはロゴマークやキャッチフレーズ、カラーリング、キャラクター、サウンドロゴ、果ては特定のデザイン要素まで広範囲に及ぶ場合がある。たとえば世界的に知られるファストフード店のロゴを見れば色使いだけで「あ、あそこだ」と分かるし、スマホのアイコンやジングル音を聞いただけである企業を想起することがある。ユーザーの記憶に最短ルートで入り込むのがアイコンの役割だ、と先生は言う。

 ユキは「確かに、私も“あのピンクの○○ロゴ”とか“赤い筒状のキャラ”を見るだけでブランド名が浮かぶかも……すごく強力ですね。じゃあそれをうちの会社でも作ればいいんですか?」と問いかける。

 先生は耳を揺らしながら、「ただ作ればいいというものではなく、“アイコン”がブランドの根幹と繋がっているかが大事さ。単に奇抜なデザインを作っても、“え、なんでこんなロゴなの?”と違和感があれば逆効果。ブランドの理念や差別化ポイントを体現するアイコンが理想なんだ」と強調する。

 ユキはそこに腑に落ちるものを感じ、「ああ、そうか……うちの場合、前回“長く使えて安心”みたいな方向性にしたけど、そこから派生した何か象徴を作ったほうがいいかもしれないですね! でもどうやって?」と目を輝かせる。
 先生は「そこがアイコン作りの難しさだ。理念に合ったビジュアルやフレーズ、キャラクターを考え、ユーザーの心に瞬時に刷り込む仕掛けを作る。“いかに分かりやすく、かつブランド価値を表現するか”がポイントさ」と語った。


アイコンを見ただけでビジネスモデルまで見えるかも?

● AI時代のアイコンが持つ意味

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