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「ブランドは “意思決定” で決まる──戦略を実行するための最終チェック」マーケティング基礎ブランディング編⑤全5話
どれだけ素晴らしいブランディング戦略を考えても、実行しなければ意味がない。ブランドを確立するために必要なのは、“意思決定” だ。しかし、企業内で新しいアイデアを通すのは簡単ではない。本話では、「意思決定の壁」を突破し、ブランディングを実行に移すためのフレームワークを紹介。戦略を「アイデア止まり」にせず、現実のビジネスに落とし込むための最終ステップとは?
◯マーケティング基礎編シリーズ
1週目:WEBマーケティング編
2週目:顧客心理編
3週目:SNS拡散編
4週目:コミュニティ編
5週目:データ分析編
●6週目:ブランディング編
①「ブランドとは “違い” である──競争を抜け出す差別化戦略」
②「“アイコン” を持たないブランドは生き残れない──記憶に残る存在になる方法」
③「AI時代はブルーオーシャンの宝庫──新市場を創り出すブランディング戦略」
④「差別化の本質は“価値観のアップデート”──顧客の視点を変えるブランド戦略」
⑤「ブランドは “意思決定” で決まる──戦略を実行するための最終チェック」
全5話でお届けします!
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迫り来る決断の波、揺れるユキの心
都心のオフィス街がいつも通り忙しなく動き出す朝。社会人2年目のユキはいつものように会社のフロアに到着し、デスクへ向かう。ここ数ヶ月、彼女はブランディングの学びを深め、「差別化」「アイコン」「AI時代のブルーオーシャン」「価値観アップデート」といったキーワードをベースに社内外で実践を試みてきた。ときに困難もあったが、会社の商品が“長期サポート型家電”という新しいコンセプトで動き出したり、ユキの趣味である写真サークルでも“撮影技術よりコミュニケーションやストーリーを大事にする”という価値観でメンバーが増えるなど、着実な成果が見えてきている。
しかしこの朝、ユキの表情は浮かない。上司から昨晩、ある相談を受けたのだ――「社内で新たなブランディング戦略を正式に決定し、企業として打ち出すため、近々経営陣にプレゼンを行うことになる。ユキにもその中心メンバーとして参加してほしい」と。ユキにとっては大きなチャンスであり、同時に大きなプレッシャーでもある。なにしろ会社の上層部は保守的な面が強く、大胆な方針転換には慎重になるだろう。いくらテスト販売で結果を出し始めたとはいえ、最終決定に至るには根拠と説得力が必要だ。
昼休み、社内のカフェスペースで同僚とランチをとりながら、ユキは不安を吐露する。「ブランディング成功のためにちゃんと意思決定を引き出さなきゃいけないんですけど、トップが最終OKを出さないと私たちだけじゃ勝手に変えられないですよね……どうすればうまく説得できるのかな。私、上層部にプレゼンなんて初めてで……」
同僚は「でもユキちゃんが今まで頑張ってきたんだし、数字もある程度出てるじゃない。テスト販売で反応がいいとか、サークルも盛り上がってるとか……。説得材料はあるんじゃない?」と背中を押すが、ユキは「ありがとうございます。でもやっぱり意思決定を動かすって、ただ数字を出すだけじゃダメな気がして……社内政治というか、上層部の理解を得る方法を探らないと」と表情を曇らせる。
そう、この最終話のテーマは「意思決定が鍵!」。ブランディングを成功させるには、結局会社のリソース配分や正式方針を変える必要があり、そのためには上層部が納得し、具体的にGOサインを出す必要があるのだ。ユキは「どう説得すれば、社内が本腰を入れて“長期サポート家電”や“価値観アップデート”を本格化させてくれるのか……」と悩み、(先生にまた相談しよう)と心に決める。
その夜、アパートへ帰宅し、ドアを開けてリビングに入ると、案の定ソファにはうさぎ先生が羊羹を頬張りながら横たわっていた。テレビの音を少し下げて、先生は耳をぴんと立て「おかえり、ユキくん。今度はどんな悩みかな? なんだか難しい顔してるけど……」と穏やかな声をかける。ユキは靴を脱ぎながら「先生、聞いてください……会社の上層部にプレゼンしなきゃいけなくて、ブランディング戦略を正式に動かすかどうかの最終判断が迫られてるんです……。どうやって意思決定を動かせばいいのか、分からなくて困ってます」と正直に打ち明けた。
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決断を促す論理と感情――うさぎ先生が示す実行の術
夜のアパート、リビングの灯りを落として薄暗くするなか、ユキはノートPCを開き、先生のアドバイスを待ち構える。先生はソファに腰かけ、いつものように落ち着いた口調で話し始めた。「ブランディングで“差別化”や“アイコン”を整えても、組織がそれを正式方針にするまで動かなければ、大きな効果は得られない。結局、意思決定こそが最後のハードルであり、そこを乗り越えないと成果に繋がらないんだ。つまり、ユキくんが今感じてるプレッシャーは当然のものさ」と言う。
ユキは苦笑いしつつ、「そうですよね……上司を含め、上層部が“やろう”と決めてくれないと、私たちの動きも中途半端になってしまう。数字は多少出せてるけど、相手が納得するためには何が必要なんでしょう? ただ資料を出せばいいのかな……?」と不安げに問う。先生は「数字は大事だけど、それだけじゃ人は動かないことも多い。論理と感情の両方を満たす必要があるんだよ」と耳を動かす。
● 意思決定を動かす2つの要素:論理と感情
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