JW523 「きさ」を捧げよ
【垂仁天皇編】エピソード52 「きさ」を捧げよ
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
紀元前12年、皇紀649年(垂仁天皇18)。
天照大神(あまてらすおおみかみ)(以下、アマ)が遷座(せんざ)した。
この地の豪族、建呰古(たけしこ)(以下、ケシコ)も出演を続投する中、御杖代(みつえしろ)の倭姫(やまとひめ)(以下、ワッコ)は、従者たちと共に解説をおこなうのであった。
乙若「此度(こたび)の宮の名は、阿佐加藤方片樋宮(あさかの・ふじかたの・かたひ・のみや)にござりまする。」
ワッコ「な・・・長い・・・。」
カット「そして、此度の宮の候補地は、四つにござりまする。」
市主「まず、一つ目。加良比乃神社(からひのじんじゃ)を紹介致しましょう。鎮座地(ちんざち)は、三重県津市(つし)の藤方(ふじかた)にござりまする。ちゃんと『アマ』様が祀(まつ)られておりまするので、御安心くださりませ。」
ワクワク「二つ目は、雲出神社(くもづじんじゃ)だよ。鎮座地は、三重県津市の雲出本郷町(くもずほんごうちょう)だよ!」
おしん「こちらの社(やしろ)も、ちゃんと『アマ』様が祀られております。」
インカ「三つ目は、阿射加神社(あざかじんじゃ)になりまする。鎮座地は、三重県松阪市(まつさかし)の大阿坂町(おおあざかちょう)にござりまする。」
ねな「でも、祭神(さいじん)が、猿田彦大神(さるたひこ・のおおかみ)と、前回、鎮(しず)まった、伊豆速布留神(いつはやふるのかみ)こと『ふるるん』になってるわよ? これは、どういうことなの?」
インカ「そ・・・そのようなことを言われましても・・・。」
ワッコ「どうもこうもない・・・。これがロマンじゃ。」
アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」
カット「最後の四つ目は、阿射加神社(あざかじんじゃ)にござりまする。」
ねな「ちょっと! 三つ目と同じ名前なんだけど、どういうこと?」
カット「いわゆる論社(ろんしゃ)というモノで、どちらも本物と主張しておるのじゃ。致し方あるまい。」
ワッコ「して、鎮座地は?」
ケシコ「三重県松阪市の小阿坂町(こあざかちょう)にござりまする。こちらも、祭神は、猿田彦大神と『ふるるん』になっておりまするので、いわゆるロマンにござりまするなぁ。」
ワッコ「とにもかくにも、候補地の紹介は済んだのじゃな?」
市主「左様にござりまする。」
するとそこに、二人の人物がやって来た。
ワッコ「な・・・何者じゃ?」
女「私は、吉姫(よしひめ)よ。」
男「我(われ)は、吉彦(よしひこ)じゃ。」
カット「吉姫? 吉彦? もしや、エピソード474にて、宇加之彦(うかのひこ)の子と申す『オノコ(男)』が解説していた神では?」
ねな「たしか・・・淡海国(おうみ・のくに:現在の滋賀県)に、吉御子神社(よしみこじんじゃ)が創建されたって話だったわよね?」
吉姫「その通りよ。されど『倭姫命世記(やまとひめのみこと・せいき)』では、私たちが、宇加之彦(うかのひこ)の子となっておるのです。」
乙若「ところで、宇加之彦とは?」
吉彦「それが、よく分からぬのじゃ。食物の神の倉稲魂神(うかのみたまのかみ)ではないかと、作者は考えておるようじゃが、確証は無い。」
吉姫「では『ワッコ』殿。『倭姫命世記』の台詞を御願い致します。」
ワッコ「えっ? ああ・・・では、申しまする。」
一同「・・・・・・。」×13
ワッコ「汝(いまし)らが、漁(あさ)るモノは何ぞ?」
吉彦「『アマ』様に御贄(みにえ)として捧げる『きさ(赤貝のこと)』を漁っておりまする。」
ワッコ「御贄?」
吉姫「神に捧げる食べ物のことを指しまする。」
アマ「なにゆえ、このような流れになったのか、全く意味が分からぬが、素晴らしいことじゃ。『きさ』を捧げるが良い。」
吉姫・吉彦「ありがたきかな。」×2
こうして、二柱(ふたはしら)の神は、御贄を捧げたのであった。
つづく
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