JW320 だから神社
【東方見聞編】エピソード3 だから神社
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
大彦(おおひこ)たちは、高志国(こし・のくに:北陸方面)へと旅立った。
従う者たちは、下記の通り。
崇神天皇の皇子、大入杵(おおいりき)(以下、リキ)。
それから、葛城宮戸彦(かずらき・の・みやとひこ)(以下、みやさん)。
更に、和珥彦国葺(わに・の・ひこくにふく)(以下、くにお)。
そして、赤ん坊の得彦(えひこ)である。
一行は、安伊奴彦(やすいぬひこ?)(以下、ヌッヒー)の先導(せんどう)のもと、川を遡(さかのぼ)るのであった。
そして・・・。
ヌッヒー「着いたげ。」
大彦「ん? 着いた? どこに着いたのかな?」
ヌッヒー「深江(ふかえ)に着いたんやって(着いたんだよ)。」
リキ「なっ! こないなとこに、連れて行ってくれとは言うてへんで!」
ヌッヒー「まあまあ、怒らなんなって(怒らないで)! ちなみに、二千年後の福井県鯖江市(さばえし)の深江町(ふかえちょう)周辺やげ。」
するとそこに、杖をついた爺さんがやって来た。
爺さん「御苦労様なんだぜ。」
大彦「あっ! 汝(いまし)は、前回登場した翁(おきな)! どういうことなのかな?」
爺さん「どうもこうもないぜ。ここに来たんだから、社(やしろ)を建てなきゃいけないんだぜ。」
みやさん「なにゆえ、そうなるのでござるか?」
くにお「伝承が有るゆえ・・・ということにござろうな。」
爺さん「その通りだぜ。」
ヌッヒー「その名も、大山御板神社(おおやまみいたじんじゃ)やが!」
リキ「ほんで、鎮座地(ちんざち)は、どこになるんや? 深江町か?」
爺さん「違うんだぜ。福井県鯖江市(さばえし)の舟津町(ふなつちょう)だぜ。」
みやさん「舟津? 舟を着けたからにござるか?」
ヌッヒー「その通り! 舟を着けたところが、舟津になったんやが!」
大彦「ところで、社は、地図を見ると、小山の麓に鎮座しているんだな。」
爺さん「山の名前は『王山(おうやま)』だぜ。元々は『逢山(あうやま)』だったんだぜ。」
リキ「逢う山? 誰に逢ったんや?」
爺さん「俺・・・いや、わしに逢ったから、逢山だぜ!」
くにお「ところで、翁よ・・・。汝(いまし)は何者ぞ? 只者(ただもの)とは思えんっ。」
爺さん「良いところに気付いてくれたぜ。そう! 俺が、俺こそが、猿田彦大神(さるたひこの・おおかみ)だぜっ。大山御板神社は、俺を祀(まつ)った神社なんだぜっ。」
一同「ええぇぇ!!」×多数
得彦「ほぎゃぁぁ! ほぎゃぁぁ!」
大彦「皆の驚く声で、得彦が起きてしまったんだな・・・(´;ω;`)。」
リキ「どうしてくれんねんっ。」
猿田彦「どうするも、何も、赤子は泣くのが務めなんだぜ。」
くにお「とにかく、逢山の麓に鎮座すれば良いのでござるな?」
リキ「ちょっと待てぇぇ!」
くにお「皇子(みこ)? 如何(いかが)なされもうした?」
リキ「地図を、よう見てみぃ。舟津神社(ふなつじんじゃ)になってるでぇ。猿田彦のおっちゃんが、祀られた神社は、大山御板神社やろ? どういうことやねん?」
ヌッヒー「実は、舟津神社に合祀(ごうし)されてもぉたんにゃわ(しまったんだよ)。 のちに舟津神社が建てられて、ほんとき(そのとき)に、一緒にされたんやと(されたんだって)。」
猿田彦「その通り! ちなみに、俺の社は、そこではなく、逢山の頂上だぜ!」
みやさん「されど、二千年後の地図を見ると、頂上には、何も無いのでござるよ。」
猿田彦「かつては、頂上の俺の社が、上の宮と呼ばれ、麓の舟津神社は、下の宮と呼ばれていたんだぜ。さ・・・されど、社殿は・・・。」
くにお「ん? 如何なされもうした?」
猿田彦「社殿は、室町時代に老朽化で撤去されて・・・(´;ω;`)ウッ…。」
リキ「はぁ?! それ以降、社殿が無いんでっか?!」
得彦「ほぎゃぁぁ! ほぎゃぁぁ!」
リキ「嗚呼! 得彦! ビックリさせてもうたなぁ。ごめんやで!」
大彦「ちょっと! 大きな声は、厳禁なんだな。」
リキ「す・・・すんまへん。」
ヌッヒー「のうのう(なあなあ)、猿田彦様・・・。」
猿田彦「うう・・・・・・(´;ω;`)ウッ…。ん? 何だね?」
ヌッヒー「有るげ。」
みやさん「えっ? 有る?」
ヌッヒー「社殿、有るんやって。西暦2019年、皇紀2679年(平成31)の3月に建てられたんやと(建てられたんだって)。山の中腹に、再建されたんたなやな(再建されたみたいだね)。」
猿田彦「なんとぉぉ!!」
くにお「これで、一安心(ひとあんしん)にござりまするな。」
猿田彦「こ・・・こんなに嬉しいことは無いんだぜ・・・(´;ω;`)ウッ…。」
大彦「ふぅぅ・・・。ようやく泣き止んだんだな・・・。これで、一安心なんだな。」
猿田彦「えっ? 聞いてなかったのか?」
大彦「あっ! 申し訳ないんだな。流し聞きをしていたんだな・・・。」
猿田彦「大丈夫なのか? 心配なんだぜ。」
大彦「心配御無用に願いたいんだな。仰(おっしゃ)っていた通り、山頂に建てるんだな。」
猿田彦「よろしく頼むぜ。」
こうして、一行が、解説を終えようとした、その刹那(せつな)、一人の男が駆け込んで来た。
男「うら(私)は、認めんっ。こんなヤツは認めんげっ。」
大彦「だ・・・誰なのかな?」
男「うら(私)は、この地の魁帥(ひとごのかみ:首長のこと)じゃ! 名前は、まだ無いっ。」
大彦「い・・・嫌な予感がするんだな。」
唐突に現れた、魁帥。
大彦の予感は的中するのか・・・。
次回につづく