JW525 産まれました
【垂仁天皇編】エピソード54 産まれました
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
年が明け、紀元前11年、皇紀650年(垂仁天皇19)となった。
そんなある日のこと・・・。
ここは、纏向珠城宮(まきむくのたまき・のみや)。
垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)の元に、大后(おおきさき)がやって来た。
すなわち、日葉酢媛(ひばすひめ)(以下、ひばり)である。
ひばり「大王(おおきみ)。お報せに参りました。」
イク「えっ? 今年って、何か有ったっけ? 『記紀(きき)』にも伝承にも、今年の記事は無かったと思うんだけど・・・。」
ひばり「確かに・・・記事は有りません。しかし、大王と私と作者による、壮大な陰謀が有りまする。」
イク「あっ! も・・・もしかして、産まれたの?」
ひばり「はい! 倭姫(やまとひめ)こと『ワッコ』ちゃんが、ようやく産まれました。」
イク「毎年、産んだとしたら、最短で、今年、産まれるってわけだね?」
ひばり「その通りです。紀元前15年、皇紀646年(垂仁天皇15)8月1日に、大后となってより、休みを挟まず、十月十日(とつきとおか)の妊娠期間を繰り返した場合、今年の誕生となりまする。」
イク「そうか・・・。そうなるんだね・・・(´;ω;`)ウッ…。」
そこに、当該の人物がやって来た。
「ワッコ」である。
ワッコ「父上! お久しぶりです! 母上! お初にお目にかかりまする!」
ひばり「ワ・・・ワッコちゃん? 汝(いまし)は、まだ、赤子(あかご)なのですよ?」
ワッコ「ま・・・待てませんでした・・・(〃ノωノ)」
イク「いいじゃないか。かなり前から、出演してるんだし・・・。」
ひばり「そ・・・そうですね。」
ワッコ「では、父上、母上。伊勢(いせ:現在の三重県)に戻りまする。」
ひばり「えっ? もう行かれるのですか?」
ワッコ「私は御杖代(みつえしろ)にござりますれば・・・。」
イク・ひばり「汝(なれ)って子は・・・(´;ω;`)ウッ…。」×2
こうして、ようやくにして「ワッコ」が産まれたのであった。
そして、三年の歳月が流れた。
すなわち、紀元前8年、皇紀653年(垂仁天皇22)。
ここは、阿佐賀国(あさか・のくに)。
阿佐加藤方片樋宮(あさかの・ふじかたの・かたひ・のみや)。
天照大神(あまてらすおおみかみ)(以下、アマ)が、高らかに宣言した。
アマ「遷座(せんざ)致すぞ! 此度(こたび)の宮の名は、飯野高宮(いいのたかみや)じゃ。」
ワッコ「さあ、早速、参りましょう!」
アマ「溌剌(はつらつ)としておるのう。産まれたからか?」
ワッコ「はい! これで気兼(きが)ねなく、活躍できまする。」
そこに「ワッコ」の従者たちがやって来た。
ねな「『ワッコ』様? 頭がおかしくなったの? あなたは、今、数(かぞ)えで、四歳なのよ?」
ワッコ「分かっておる。されど、良いではないか。」
アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」
市主「と・・・とりあえず、次の遷座地に向かいましょう。」
するとそこに、乙加豆知(おとかづち)(以下、かづっち)という男がやって来た。
かづっち「『倭姫命世記(やまとひめのみこと・せいき)』に従って、やって来ましたぞ。『かづっち』ですぞ。飯高県造(いいたか・の・あがたつくり)の祖と言われておりますぞ。神田(かんだ)と神戸(かんべ)を献上致しますぞ。」
ワッコ「神に捧げる田と、祭祀(さいし)に貢献する人たちのことじゃな。して、飯高とは、めでたい名前じゃが、二千年後の何処になるのじゃ?」
かづっち「三重県松阪市(まつさかし)の大部分ですぞ。奈良時代には、飯高郡(いいたか・ぐん)になりますぞ。では、いつもの台詞を御願い致しまするぞ。」
ワッコ「汝(いまし)が国の名は、何ぞ?」
かづっち「いすひ(いすい)、飯高国(いいたか・のくに)!」
こうして、遷座の旅が再開したのであった。
つづく
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