JW529 帰って来た物部
【垂仁天皇編】エピソード58 帰って来た物部
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
紀元前8年、皇紀653年(垂仁天皇22)。
天照大神(あまてらすおおみかみ)(以下、アマ)が、遷座(せんざ)を宣言。
次の宮の名は、飯野高宮(いいのたかみや)と発表された。
そして、御杖代(みつえしろ)の倭姫(やまとひめ)(以下、ワッコ)は、従者たちと共に、候補地の解説をおこなう。
前回は、六つの候補地のうち、四つを紹介したのであったが・・・。
乙若「では、五つ目を紹介致しましょう。五つ目は、花岡神社(はなおかじんじゃ)にござりまする。三重県松阪市(まつさかし)の飯高町宮前(いいたかちょう・みやまえ)に鎮座(ちんざ)しておりまする。」
インカ「されど、祭神(さいじん)は『アマ』様の御子息、天忍穂耳尊(あめのおしほみみ・のみこと)こと『耳』様になっておるぞ?」
ねな「何を言ってるの? これが、ロマンなのよ。」
アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」
カット「では、最後の六つ目を紹介致しましょう。その名も、滝野神明社(たきの・しんめいしゃ)にござりまする。」
ワッコ「神明と申すからには『アマ』様が祀(まつ)られておるな・・・。」
カット「はい。されど・・・。」
ワッコ「ん? されど?」
カット「かつては、松阪市の飯高町作滝(いいたかちょう・さくたき)に鎮座していたのですが、今は、有りませぬ。」
ワッコ「どこぞに、合祀(ごうし)されたのか?」
カット「左様にござりまする。二千年後は、松阪市の飯高町赤桶(いいたかちょう・あこう)に鎮座する、水屋神社(みずやじんじゃ)に合祀されておりまする。」
ねな「神社合祀令(じんじゃごうしれい)が有ったから、仕方ないのよ。」
アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」
アマ「皆の者、御苦労であった。わらわは、しばらく、この地に留まるぞ。」
ワッコ「し・・・しばらくですね・・・(;^_^A」
こうして、なにはともあれ、飯野高宮に遷座したのであった。
そして、年が明けて、紀元前7年、皇紀654年(垂仁天皇23)となった。
その年の8月4日のこと・・・。
ここは、纏向珠城宮(まきむくのたまき・のみや)。
垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)が、驚きの声を上げていた。
イク「ええぇぇ!! そんなの聞いてないよ!」
ケモロー「驚き過ぎだがや。我(われ)が、引退するだけだで?」
イク「で・・・でも、これまで、僕を支えてくれてたのに、どうして、今になって・・・(´;ω;`)ウッ…。」
ケモロー「仕方ないが。もう歳だで。」
イク「そ・・・それで、次の大臣(おおおみ)は『ケモロー』の息子、玉彦(たまひこ)になるの?」
ケモロー「そうしたいのは、やまやまなんだけどよぉ・・・。」
玉彦「大王(おおきみ)・・・悲しいがや。我(われ)も引退だがや。」
イク「ええぇぇ! 玉彦も!」
玉彦「そういうわけで、次の尾張氏(おわり・し)を率いる者を紹介するがや。我(われ)の息子、弟彦(いろとひこ)だがや。『いろりん』と呼んでちょう(ください)。」
いろりん「我(われ)が『いろりん』だがや。」
イク「じゃあ、次の大臣は『いろりん』ってこと?」
ニック「大王? 物部を忘れてもろたら、困るで!」
ちね「せや! 元々は、わてらの一族が大臣を務めてきたんやで?」
イク「そ・・・そうか・・・。そうなるんだね・・・。」
ニック「当然・・・『わて』やろ?」
イク「よし! 『ニック』を大臣に任命しよう。そして『ちね』も大夫(たいふ)に任じちゃうよ。」
ちね「大夫?」
イク「大臣を補佐する役目だよ。」
ニック「そないなモン、新設するんでっか?」
イク「そうだよ。ヤマトは、大きくなったからね。一人では負担が大きいと思うんだ。そういうわけで、大夫を新設するよ。ちなみに、五人の大夫だよ。」
ニック「えっ? 五人も!」
五人の大夫とは?
次回につづく