JW496 嘘だと言ってよ
【垂仁天皇編】エピソード25 嘘だと言ってよ
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
紀元前25年、皇紀636年(垂仁天皇5)10月1日。
垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)は、来目邑(くめ・のむら)に行幸(ぎょうこう:天皇の外出)した。
大后(おおきさき)の狭穂姫(さほひめ)(以下、さっちん)も同行しての行幸である。
そして「さっちん」の膝枕(ひざまくら)で昼寝をしていた「イク」は「さっちん」の涙で、目を覚ましたのであった。
イク「でも、一体、何だったんだろう? 何かの前触れ?」
さっちん「申し訳ござりませぬ!」
イク「えっ? 『さっちん』? ど・・・どうしたの?」
さっちん「その夢は、私の兄、狭穂彦(さほひこ)の謀反(むほん)を伝えるモノにござりまする。兄は、大王を害(がい)し奉(たてまつ)らんと欲(ほっ)しておりまする。」
イク「さ・・・『さっちん』?」
さっちん「私は、兄の心を止めることができませんでした。されど、兄の企(たくら)みを伝えたなら、兄を見殺しにすることになりまする。だからといって、伝えねば、大王を・・・。私は悩みました。そして、今日、私は愚かな考えを抱(いだ)いてしまいました。眠る大王を見て・・・。」
イク「う・・・・嘘(うそ)だよね? 『さっちん』? 嘘だと言ってよ『さっちん』!」
さっちん「まことにござりまする・・・(´;ω;`)ウッ…。小さな蛇は、兄が、私に授けた短剣にござりまする。大雨は、私の涙にござりまする・・・(´;ω;`)ウッ…。」
イク「『さっちん』・・・。そ・・・そんな・・・。嘘だ・・・。そんなこと・・・。」
さっちん「申し訳ござりませぬ! 如何様(いかよう)な罰(ばつ)も受けまするゆえ・・・。」
イク「ば・・・罰? な・・・何を言ってるの? いいかい? 何もなかった。何もなかったんだ。僕は、ただ、目を覚ましただけ・・・。『さっちん』は、膝枕をしていただけ・・・。」
さっちん「そのようなこと、許されませぬ。私は、大王を・・・。」
イク「何もなかった。いいね? 何もなかったんだ。今日のことは、僕と汝(なれ)の心に秘(ひ)めておこう。『さっちん』は、何も悪くないんだから・・・。」
さっちん「さ・・・されど・・・(´;ω;`)ウッ…。」
イク「悪いのは、狭穂彦だよ。僕の『さっちん』を苦しめた、狭穂彦だ・・・。『オシキ』!」
聞き慣れぬ大王の大声を聞いて、来目を治める、久米押志岐毘古(くめ・の・おしきびこ)(以下、オシキ)が駆け込んで来た。
オシキ「大王? どうしたんすか?」
イク「時は来た!」
オシキ「えっ?」
「イク」は、来目邑から、「オシキ」を派遣した。
そして「オシキ」が辿り着いた場所は、垂仁天皇の甥、八綱田(やつなた)(以下、つなお)の元であった。
ちなみに、オシキの登場はオリジナルである。
つなお「如何(いかが)致した? 大王(おおきみ)は、来目に御幸(みゆき)なされていたはず・・・。なにゆえ、汝(いまし)が、ここにおるのじゃ? 大王は、どうした?」
オシキ「そこなんすけどね。なんか、よく分かんないすけど、大王が、時は来たと伝えろって・・・。」
つなお「時が来た・・・。そうか・・・。作者オリジナル設定の合言葉が発動したのか・・・。」
オシキ「俺が出てるんで、オリジナルなんだろうなぁとは思ってましたけど、合言葉も?!」
つなお「とにかく、つつがなく拝命(はいめい)致したと、お伝えしてくれ。」
「イク」からの指示を受け、「つなお」は軍兵を従えて出陣した。
目指すは、謀反(むほん)を画策した狭穂彦王(さほひこ・のきみ)の館である。
この動きは、狭穂彦の耳にも届いた。
狭穂彦「おのれぇぇ。『イク』めぇ。我(われ)の動きに勘付いたのか?!」
ついに発覚した謀反。
狭穂彦の運命や如何に・・・。
次回につづく