JW499 咎人の子
【垂仁天皇編】エピソード28 咎人の子
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
紀元前25年、皇紀636年(垂仁天皇5)11月。
狭穂彦王(さほひこ・のきみ)の謀反(むほん)は鎮圧された。
しかし、大后(おおきさき)の狭穂姫(さほひめ)(以下、さっちん)も命を落としてしまう。
そんな中、勝利した、垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)は、甥の八綱田(やつなた)(以下、つなお)に名を与えていた。
イク「倭日向武日向彦八綱田(やまとひむかたけひむかひこ・やつなた)だよ。長いね。」
つなお「かたじけのうござりまする。されど、大后のことを想うと・・・。」
イク「何を言っているの? 逆賊(ぎゃくぞく)が死んで、皇子が帰ってきたんだよ? 最高の結末じゃないか! こんなに喜ばしいことが有ると思う? おかしくて、笑っちゃうよね?」
つなお「お・・・大王? そのような『記紀(きき)』に書いておらぬことを・・・」
ホームズ「あう。あわう。」
イク「そうだよ『ホームズ』・・・。『かか』様は、僕と『ホームズ』を置いて、兄上殿に従って逝(い)ったんだよ。どうかしてるよね? おかしいよね?」
つなお「大王・・・。大后も、身をちぎられる想いであったはず・・・。」
イク「そうだね。そうじゃないと困るよね? 『ホームズ』?」
ホームズ「あうう・・・。」
つなお「つ・・・つきましては、これにて務めを終(お)えましたので、東国に帰りまする。して、これにて『くらんくあっぷ』となりまする。当然のことながら、我(わ)が父、豊城入彦(とよきいりひこ)こと『トッティ』も引退となりまするので、併(あわ)せて、お報せ致しまする。」
イク「そっか・・・。『つなお』も『トッティ』兄上も、僕の元から去っていくんだ・・・。もう『つなお』とも『トッティ』兄上とも会えなくなるんだね・・・。『トッティ』兄上なんて、登場もせぬままに『くらんくあっぷ』だなんて・・・。ちょっと、どうかしてるよ。どうせ、僕が、大后に捨てられた、みじめな大王(おおきみ)だから、二人とも見限(みかぎ)ったんでしょ?」
つなお「そ・・・そのようなことでは・・・。」
イク「いいんだよ。『さっちん』に捨てられたのは、本当のことなんだから・・・。」
するとここで、大臣(おおおみ)の尾張建諸隅(おわり・の・たけもろすみ)(以下、ケモロー)が口を挟んだ。
ケモロー「ええかげんにしてちょうだゃぁ(ください)! 大王は、この国を統(す)べる者だで? そんなことで、どうするがや。早う、新しい大后を迎え入れんと、かんて(ダメだよ)!」
つなお「左様ですな。『さっちん』様の遺言(ゆいごん)に従い、丹波道主王(たにわのみちぬし・のきみ)こと『ミッチー』殿の娘を迎え入れるべきにござる。」
イク「新しい大后? そんなモノいらないよ。僕の大后は『さっちん』だけだから・・・。」
ケモロー「何を言うとるがや! 大王には、皇子(みこ)がおらんのだで?」
イク「何を言ってるの? 誉津別(ほむつわけ)こと『ホームズ』がいるじゃないか!」
ケモロー「馬鹿も休み休み、言わんと、かんて! 『ホームズ』様は、咎人(とがびと)の子だで? それに、『ホームズ』様は、言の葉も発せられない有り様でねぇの!」
イク「と・・・咎人の子? 『さっちん』は悪くない! 悪いのは、狭穂彦なんだよ?!」
つなお「大王が、どう思っておられたとしても、各地の豪族たちは、そうは思うておりませぬ。」
イク「そ・・・そんな・・・『さっちん』が咎人? ぼ・・・僕の大后なんだよ?!」
ケモロー「大王の御気持ちも分かるけどよぉ、そう簡単に済ませられる話ではないがや。」
イク「それじゃあ、『ホームズ』が大王になることは無いってこと?」
つなお「そういうことになりまする。ですから、新しい大后をば・・・。」
「イク」は、どのような決断を下すのであろうか?
次回につづく
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