JW508 天平瓮を作ろう
【垂仁天皇編】エピソード37 天平瓮を作ろう
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
紀元前16年、皇紀645年(垂仁天皇14)。
天照大神(あまてらすおおみかみ)(以下、アマ)が、中嶋宮(なかしま・のみや)への遷座(せんざ)を宣言。
御杖代(みつえしろ)の倭姫(やまとひめ)(以下、ワッコ)は、尾張国(おわり・のくに:現在の愛知県西部)に向かう。
そして、途上、市主(いちぬし)と忍比売(おしひめ)(以下、おしん)が仲間に加わった。
元々の従者ある、采女(うねめ)の香刀比売(かとひめ)(以下、カット)。
大称奈(おおねな)(以下、ねな)。
「ねな」の弟、大荒(おおあら)(以下、アララ)も同行し、ついに、尾張国に入ったと思ったのであるが・・・。
ワッコ「思ったのであるが? どういうことじゃ?」
そこに、神大根王(かむのおおね・のきみ)(以下、ノーネ)がやって来た。
ノーネ「一つ尋ねたき儀(ぎ)有り! 『倭姫命世記(やまとひめのみこと・せいき)』に、忍比売(おしひめ)こと『おしん』の子が受け継ぎ、天平瓮(あまのひらか)を八十枚作って献上したと書かれてる! これ、どういうこと? 何を受け継いだの?」
ワッコ「よ・・・よく分かりませぬが『おしん』の子が代わって、平瓮を作ったということですね。」
アマ「ちなみに、平瓮(ひらか)というのは、平らな『かわらけ』という意味じゃ。素焼きの土器ということじゃな。」
ワッコ「す・・・素焼き?」
アマ「エピソード44の『サノ』と同じ質問をするな!」
ワッコ「えっ? 御初代様こと神武天皇(じんむてんのう)も同じ問いかけを?」
アマ「読者のためと申してな・・・。とにかく、何もつけずに、そのまま焼くということじゃ。」
カット「エピソード47では、その平瓮を用いて、祭祀(さいし)をおこなっておりまする。此度(こたび)も、旅の安全を祈願して、祭祀をおこなったのではありませぬか?」
アマ「うむ。『カット』の申す通りであろう。」
アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」
ノーネ「とりあえず、納得! 気を付けてらっしゃい!」
こうしてようやく、一行は、尾張国に入ることが出来たのであった。
おしん「では、解説を始めます。此度の中嶋宮には、候補地が五つも有るみたいだ。」
市主「まず一つ目が、坂手神社(さかてじんじゃ)にござりまする。」
ねな「鎮座地(ちんざち)は、愛知県一宮市(いちのみやし)の佐千原宮東(さちはら・みやひがし)よ。」
カット「されど、祭神(さいじん)が高水上神(たかみなかみ・のかみ)となっておるぞ。これは、どういうことじゃ?」
ねな「人生いろいろ、伝承もいろいろでしょ。」
アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」
市主「で・・・では二つ目。酒見神社(さかみじんじゃ)にござりまする。」
おしん「鎮座地は、愛知県一宮市今伊勢町(いまいせちょう)の本神戸宮山(ほんかんべ・みややま)だ。」
ワッコ「こちらは『アマ』様が祀(まつ)られておるな。」
ねな「それだけじゃないわよ。酒造りの神様、酒弥豆男神(さけみつおのかみ)と酒弥豆女神(さけみつめのかみ)も祀られてるわよ。それから、本殿の裏に倭姫社(やまとひめしゃ)が有って『ワッコ』様も祀られてるのよ。」
ワッコ「されど、不思議な話じゃ。なにゆえ、酒造りの神様も祀られておるのじゃ?」
ねな「これがロマンよ。無粋(ぶすい)なことを聞いちゃダメッ。」
アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」
市主「で・・・では三つ目。その名も、浜神明社(はましんめいしゃ)にござりまする。」
カット「一宮市の桜(さくら)に鎮座しておりまする。」
ワッコ「こちらも、祭神は『アマ』様となっておるな・・・。特に問題は無さそうじゃ。」
解説は続くのであった。