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JW325 蝦夷の神様
【東方見聞編】エピソード8 蝦夷の神様
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
高志国(こし・のくに:北陸地方)を旅する、大彦(おおひこ)たち。
従う者たちは、下記の通り。
葛城宮戸彦(かずらき・の・みやとひこ)(以下、みやさん)。
それから、和珥彦国葺(わに・の・ひこくにふく)(以下、くにお)。
そして、赤ん坊の得彦(えひこ)である。
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新潟県の魚沼神社(うおぬまじんじゃ)を紹介した一行は、更に北へと向かったのであった。
くにお「して、ここは何処(いずこ)にござりまするか?」
大彦「こ・・・ここは・・・。」
くにお「ん? 如何(いかが)なされましたか?」
みやさん「ここは、秋田県秋田市にござるよ。」
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くにお「は?! 秋田?! 秋田と申せば、二千年後、東北地方に分類される地域ではござらぬか? 高志国とは、北陸地方と申していたではないか?!」
みやさん「我らの時代は、明確な境界線が無かったと思うので、秋田に来ても問題ないと思うのでござるよ。」
くにお「それで良いのか!?」
大彦「とにかく、来てしまったモノは、仕方ないんだな。」
くにお「そう言われると、文句のつけようがござらぬが、なにゆえ、秋田に?」
大彦「北方鎮護(ほっぽうちんご)のため、神様を祀(まつ)るためなんだな。」
くにお「北の地を守るために・・・。して、どちらの神を祀られたのでござりまするか?」
大彦「武甕雷神(たけみかづちのかみ)こと『タケミー』を祀ったんだな。」
みやさん「その通りにござるよ。『タケミー』を齶田浦神(あぎたのうらのかみ)として祀ったのでござるよ。」
くにお「ん? 齶田浦神? なにゆえ、名を変えたのじゃ?」
大彦「元々は、蝦夷(えみし)の地元神、または、海洋神という説が有るんだな。」
くにお「蝦夷? 蝦夷とは?」
大彦「東北地方で暮らしていた人々のことなんだな。ヤマトに加わっていない人たちを、大陸風に呼んでいたんだな。」
くにお「大陸風?」
みやさん「大陸の漢民族と呼ばれる人々は、自分たちが文化の中心で、周りの人々は、文化的ではない蛮族と考えていたのでござるよ。そして、蔑(さげす)んだ呼び方をしていたのでござるよ。」
くにお「漢民族のように、拙者たちの子孫も、ヤマトに与(くみ)しておらぬ者を蛮族として呼んでおったということか?」
大彦「まあ、そういうことなんだな。」
くにお「して、彼(か)の者らが、ヤマトと同じ文化を受け入れた折、齶田浦神(あぎたのうらのかみ)が、武甕雷神(たけみかづちのかみ)と同じになったと?」
大彦「そうだと思うんだな。名前が違うだけで、同じ神様を祀っていた・・・となれば、遠い親戚のような感じがして、親しくなれそうな気がするんだな。」
くにお「地元の神を否定せぬ代わりに、ヤマトの神も受け入れよ・・・ということにござりまするか?」
みやさん「我らが強(し)いて、そうさせたというよりは、地元の人々が、同じ神にしたという方が、正しいと思うのでござるよ。」
くにお「なにゆえじゃ?」
大彦「それがしたちが祀っている神々は、八百万(やおよろず)の神様なんだな。一柱(ひとはしら)増えようが、二柱(ふたはしら)増えようが、何も変わらないんだな。」
くにお「なるほど・・・。わざわざ、同じ神にせずとも、齶田浦神(あぎたのうらのかみ)は、齶田浦神として加わっても障(さわ)りありませぬな・・・。」
みやさん「ヤマトの文化を受け入れた人々が、いつしか、同一神として祀るようになった方が、自然なのでござるよ。」
大彦「それがしも、そう思うんだな。無理強(むりじ)いは、反発を招くだけなんだな。」
みやさん「ちなみに、無理強いさせたと考える者は、大陸のキリスト教という神を連想して、そう考えていると思うのでござるよ。」
くにお「キリスト教?」
みやさん「千五百年後に、我が国にやって来る宗教にござるよ。この神様は、ヨーロッパという地域にいた、いろんな神様を否定したのでござるよ。」
くにお「なっ! して、千五百年後のヤマトは、大丈夫なのか?」
大彦「その辺は、後の世の人たちに任せるしかないんだな。」
くにお「ヤマトよ・・・。無事であってくれ・・・。」
みやさん「ここで心配しても、仕方ないのでござるよ。」
くにお「まあ、とにもかくにも、齶田浦神を祀ったわけじゃな?」
みやさん「左様! そして、これが、古四王神社(こしおうじんじゃ)の起源にござるよ!」
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くにお「社(やしろ)が建ったのか? して、秋田市の何処に鎮座(ちんざ)しておるのじゃ?」
みやさん「秋田市の寺内児桜(てらうち・こざくら)にござるよ。」
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大彦「ち・・・ちなみに・・・。」
くにお「ん? 如何なされましたか?」
大彦「斉明天皇(さいめいてんのう)の御世に、それがしも祀られちゃったんだな・・・(〃▽〃)」
みやさん「七世紀の大王(おおきみ)にござるよ。」
くにお「皇子(みこ)・・・。嬉しそうですな。」
大彦「そ・・・そんなことより、驚くべきことがあるんだな。」
くにお「なんでござろうか?」
大彦「得彦が、一度も起きなかったんだな。」
みやさん「言われてみると・・・。これは快挙(かいきょ)にござるよ!!」
得彦「ほぎゃぁぁぁ! ほぎゃぁぁぁ!」
大彦・くにお「あ・・・。」×2
こうして、快挙は未遂に終わったのであった。
つづく