JW322 能登国造
【東方見聞編】エピソード5 能登国造
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
大彦(おおひこ)たちは、高志国(こし・のくに:北陸地方)を旅していた。
従う者たちは、下記の通り。
崇神天皇の皇子、大入杵(おおいりき)(以下、リキ)。
それから、葛城宮戸彦(かずらき・の・みやとひこ)(以下、みやさん)。
更に、和珥彦国葺(わに・の・ひこくにふく)(以下、くにお)。
そして、赤ん坊の得彦(えひこ)である。
一行は、福井県から、更に北上し、石川県に突入したのであった。
大彦「・・・ということで、石川県のどこなのかな?」
リキ「石川県七尾市(ななおし)の所口町(ところぐちまち)やで。」
みやさん「千年後の能登国(のと・のくに)にござるよ。」
くにお「して、何の為に、こちらへ?」
リキ「この地に、能登生国玉比古神社(のと・いくくに・たまひこじんじゃ)が鎮座(ちんざ)してるんやっ。」
大彦「な・・・長いんだな。」
リキ「安心してください。気多本宮(けたほんぐう)という別名も有りますよって。」
くにお「ところで、こちらの社(やしろ)には、どのような神が祀(まつ)られているのでござるか?」
みやさん「大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)と素戔嗚命(すさのお・のみこと)、それから、櫛名田比売(くしなだひめ)にござるよ。」
くにお「大国主様が祀られると、義理の両親が付いてくる仕組みなのか?」
リキ「その辺は、よう分からへんけど、『気多神社縁起(けたじんじゃえんぎ)』によると、大国主様は、三百余りの神様を引き連れて、出雲(いずも)からやって来たみたいやなぁ。ほんで、大蛇などを退治して、海路を開いたみたいやでぇ。」
大彦「ちょっと待って欲しいんだな。」
リキ「ん? なんです? 大伯父?」
大彦「こちらの社は、エピソード209で、既に紹介されているんだな。それがしの父上、八代目こと孝元天皇(こうげんてんのう)の御世に創建されてるんだな。」
くにお「た・・・たしかに、拙者(せっしゃ)の祖父たちが、解説をしておりますなぁ。」
リキ「実は、今の大王(おおきみ)の御世になって、遷座(せんざ)してるんですわ。」
みやさん「いつ遷座したのか、詳しい年代が記載されておらぬので、この旅を契機に、遷座することにしたのでござるよ。」
大彦「そ・・・そんな大事な役目が有るとは、知らなかったんだな。四道将軍(しどうしょうぐん)なのに、聞いてなかったんだな・・・(´;ω;`)ウッ…。」
リキ「すんまへん。おとん(崇神天皇のこと)から頼まれてたんですけど、大伯父に言うの、忘れてましたわ。ホンマ、すんまへん。」
くにお「ところで、何処(いずこ)に遷座なされるので?」
みやさん「石川県羽咋市寺家町(はくいし・じけまち)にござるよ。」
大彦「当然、こちらも能登国なのかな?」
リキ「その通りです! 流石は、大伯父っ!」
得彦「ほぎゃぁぁ! ほぎゃぁぁ!」
リキ「あっ! すまんっ! 得彦! 起こしてもうたなぁ・・・(´;ω;`)。」
大彦「大きな声は、ダメなんだなっ。」
みやさん「ち・・・ちなみに、社の名は、気多大社(けたたいしゃ)にござるよ。」
くにお「されど、七尾市から羽咋市への遷座となると・・・。」
大彦「ん? どうしたのかな?」
くにお「来た道を戻ることになりまする・・・。」
みやさん「まあ、我(われ)らが遷座したというのは、作者のオリジナルにござるゆえ、その辺りは、勘弁して欲しいのでござるよ。」
こうして、無事に気多大社が遷座されたのであった。
そして、一行は、再び北上を始めた。
くにお「して、ここは何処にござりまするか?」
リキ「石川県中能登町(なかのとちょう)の小田中(こだなか)やで。」
みやさん「たくさんの古墳(こふん)が有るのでござるよ。」
大彦「その通り! その名も、小田中古墳群なんだな。」
くにお「さ・・・されど、なにゆえ古墳群に?」
リキ「それはなぁ。この中に、親王塚古墳(しんのうづかこふん)っちゅうモンが有るからや。」
みやさん「そ・・・それは、この地で、誰かが亡くなる・・・ということにござるか?」
リキ「せやっ。実はなぁ。この古墳・・・わての古墳と言われてるんや!」
くにお「なっ!? それは、如何(いか)なる仕儀(しぎ)にて?!」
みやさん「何者かに、闇討ちされたのでござるか?!」
リキ「安心せぇ。すぐに死ぬわけやない。わてが、死ぬんは、遠い先の話や。」
大彦「そうなんだな。『リキ』は、能登国造(のと・のくに・のみやつこ)になるんだな。」
くにお「なるほど・・・。国造として、この地に留(とど)まったと?」
リキ「その通りや。ほんで、能登氏(のと・し)の先祖になったんや。」
みやさん「それで、ここに『リキ』様の古墳が有るのでござるか・・・。」
リキ「そういうことや。せやから、皆とは、ここで、お別れや。」
大彦「寂しくなるんだな・・・。」
リキ「そないなこと言わんといてください。大伯父っ。わても、ツラいんですわ。特に、得彦と別れるんが・・・(´;ω;`)。」
くにお「大王は、このこと、御存知で?」
リキ「当たり前やないかいっ。ちゃんと別れの挨拶、したでぇ。」
みやさん「そんな場面は無かったのでござるよ。」
大彦「今回のために、その場面は、割愛したんだな。」
リキ「まあ、そういうことですんで、皆さん、あとのこと、得彦のこと、頼んますっ。」
得彦「ああうう・・・。」
リキ「おおっ! 得彦ぉぉ!! わては、寂しいでぇぇぇ!!!」
能登の地に、「リキ」の雄叫びが、コダマするのであった。
つづく
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