JW635 神夏磯媛
【景行征西編】エピソード6 神夏磯媛
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦82年、皇紀742年(景行天皇12)9月。
ここは、崗国。
二千年後の福岡県北九州市の八幡西区周辺。
先に筑紫(今の九州)に派遣された、三人の男が、崗県主と面会していた。
三人の男とは、すなわち、多の臣の武諸木(以下、モロキ)。
国前の臣の菟名手(以下、ウナ)。
物部の君の夏花である。
モロキ「して、貴殿が、崗県主か?」
県主「そん通り! エピソード7に登場した、熊鰐命の子孫になるばい。」
ウナ「名は無いのか?」
県主「そもそも『日本書紀』に、こげん場面は、無かけんね。仕方なかっ。」
夏花「では、早速じゃが、煙について、問いたい。これは、どういうことじゃ?」
県主「実は・・・客人が来とうとや。」
モロキ「客人?」
県主「では、紹介します。神夏磯媛ばい。『カンナ』と呼んでつかぁさい。」
カンナ「お初にお目にかかりまする。アタイが『カンナ』よ。」
ウナ「『カンナ』? 何処かで聞いたことが・・・。」
カンナ「国前国(今の大分県の国東半島)を治める『ウナ』殿なら、知っていても、おかしくはありませんね。」
カンナ「夏吉の・・・。」
ウナ「おお! そうであった! 夏吉を治める、魁帥じゃな?」
カンナ「その通りよ。ちなみに、魁帥は、首長って意味・・・。エピソード38で、弟猾って方にも使われてるわよ。」
夏花「されど『日本書紀』には、一国の魁帥としか、書かれておらぬぞ?」
カンナ「そうね。中央の人たちは、忘れてしまったみたいね。でも、地元の人たちは、どうかしら?」
モロキ「地元?」
カンナ「若八幡神社・・・。」
ウナ「おお! そうであった! 福岡県田川市の夏吉に鎮座する、若八幡神社にて、汝も祀られておるのであったな?」
カンナ「そういうこと・・・。だけん、夏吉なのよ。」
夏花「して、なにゆえ、ここまで参ったのじゃ?」
カンナ「それについては、これを見てからにして欲しいわ。」
モロキ「これ?」
そこに示されたのは、飾り付けた賢木であった。
ウナ「上の枝に、八握剣を掛けておるぞ。」
夏花「中の枝には、八咫鏡を掛けておる。」
県主「下の枝には、八尺瓊勾玉を掛けとうよ。」
モロキ「なるほど、何処ぞに、求婚に向かうのじゃな?」
カンナ「なんで、そうなるのよ!」
モロキ「さ・・・されど、エピソード606にて、求婚に、三種の神器を模したモノが要り様であったと書かれておるぞ?」
カンナ「ま・・・まあ、似たようなモノよ。大王に捧げ奉るため・・・。」
ウナ「なるほど! 『カンナ』殿も、大王の妃になりたいのか!」
カンナ「違うわよ! 国を捧げ奉るのよ!」
県主「夏吉も、ヤマトに与すると?」
カンナ「そうよ。ヤマトの一行が参られると聞いて、直ちに、磯津山の賢木を抜いて、飾り立てたのよ。」
夏花「磯津山? それは、何処に有る山なのじゃ?」
カンナ「夏吉の・・・まあ、近くの山ってことよ。」
ウナ「なるほど! 夏吉では、近くの山のことを磯津山と申すのじゃな?」
カンナ「違うわよ! 具体的に、分からないってこと!」
県主「したら、舟の舳に、白旗を立てとんしゃぁも、そげんこと?」
カンナ「そうよ。ヤマトには叛かないって証を立てて、乗ってきたのよ。」
モロキ「されど、大王が参られると聞いて、舟でやって来たというのは・・・。」
カンナ「何? 何か障りでも有るわけ?」
モロキ「ヤマトに与するのは、大歓迎なのじゃが・・・。」
ウナ「何が言いたいのじゃ?」
モロキ「どうせ、訳アリなのであろう?」
カンナ「うっ!」
夏花「図星のようじゃな?」
カンナ「汝たちには、負けるわね。そうよ! アタイたち、すごく困ってんのよ。」
ウナ「なるほど! 賊を鎮定せねば、ならぬのじゃな?」
カンナ「そうよ。賊が、いっぱいなのよ!」
賊とは?
次回につづく
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