JW534 夫婦で見た夢
【垂仁天皇編】エピソード63 夫婦で見た夢
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
紀元前7年、皇紀654年(垂仁天皇23)11月2日、白鳥が献上された。
誉津別(ほむつわけ)(以下、ホームズ)が言葉を発すると期待されたが、空振(から・ぶ)りに終わる。
この結果に、垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)は、嘆き悲しむのであった。
イク「白鳥の件(くだり)・・・何だったんだよ!」
オーカ「もう、こうなったら、寝るしかないのではあらしゃいませんか?」
ニック「なるほど・・・。その手が有ったか・・・。」
カーケ「身を清めて、寝るのかね?」
オーカ「そうですぅ。」
くにお「そして、神の御告げをいただくと?」
オーカ「それ以外の方法があらしゃいますか?」
こうして「イク」は、歴代の大王(おおきみ)たちと同じように、身を清め、祈(いの)りを捧(ささ)げ、寝たのであった。
そして、夢の中に、ある神が現れた。
イク「あっ! 汝(いまし)は、どういう神様なの?」
神「そんなことより、僕の宮(みや)を大王(おおきみ)の宮みたいに、立派なモノにして欲しいんだよね。」
イク「えっ? 宮? どうして、そうなるの?」
神「武甕雷神(たけみかづち・のかみ)こと『タケミー』と、経津主神(ふつぬし・のかみ)こと『ふつ』に、大きな社(やしろ)を建てて欲しいって言ったんだよね。でも、近頃では、大王の宮の方が大きいじゃないか! ちょっと納得いかないんだよね。」
イク「だから、どんな神様なの?」
神「とにかく、そうすれば、皇子(みこ)は喋(しゃべ)れるようになると思うよ。」
そこで目が覚めた「イク」は、すぐさま、大連(おおむらじ)と大夫(たいふ)たちを呼び出した。
イク「僕の夢に現れた神様が何者なのか、それを調べるため、太占(ふとまに)の支度(したく)をして欲しいんだよ。」
ちね「・・・となると、ここは『オーカ』殿の出番やな。」
オーカ「気張らせてもらいますぅ。」
武日「ちなみに、太占とは、牡鹿(おじか)の肩甲骨(けんこうこつ)を火で炙(あぶ)り、熱で出来た割れ目で吉凶(きっきょう)を占(うらな)うことやじ。」
オーカ「ただの火で炙るのではあらしゃいません。波波迦(ははか)の樹皮(じゅひ)を炭火にしたモノで炙りますぅ。」
武日「波波迦?」
オーカ「上溝桜(うわみずざくら)のことにあらしゃいます。ちなみに、割れ目の模様のことを、町形(まちがた)と呼びますので、そちらも覚えておいてください。」
くにお「覚えておいた方が良いのか?」
ちね「そないなこと、有るわけないやろ!」
イク「とにかく、早く占ってよ!」
オーカ「か・・・かしこまりました。」
するとそこに、大后(おおきさき)の日葉酢媛(ひばすひめ)(以下、ひばり)がやって来た。
ひばり「大王! 夢を見ました。神の御告げです。」
イク「えっ? こんな場面、『古事記(こじき)』には無いよ?」
ひばり「説明があとになり、申し訳ありませぬ。実は『釈日本紀(しゃくにほんぎ)』という、鎌倉時代に編纂(へんさん)された『日本書紀(にほんしょき)』の注釈書(ちゅうしゃくしょ)では、私が夢を見たことになっているのです。」
イク「それで、夢に現れた神様っていうのは?」
ひばり「阿麻乃彌加都比女(あまのみかつひめ)こと『ミカ』様です。」
イク「どんな神様なの?」
ひばり「出雲(いずも:島根県東部)の神様にござりまする。その神が申されることには、自分には、まだ祝(はふり)がいないので、祀(まつ)ってくれる者を与えてくれたなら、皇子(みこ)は話すことが出来るようになり、寿命も延(の)びるだろうと・・・。」
イク「えっ? 女神(めがみ)? 僕の夢に現れたのは、男神(おがみ)だったけど・・・。」
するとそこに、太占を終えた「オーカ」が戻ってきた。
オーカ「大王! 出雲! 出雲!」
出雲とは?
次回につづく