JW321 鯖矢、降り注ぐ時
【東方見聞編】エピソード4 鯖矢、降り注ぐ時
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。
大彦(おおひこ)たちは、高志国(こし・のくに:北陸地方)を旅していた。
従う者たちは、下記の通り。
崇神天皇の皇子、大入杵(おおいりき)(以下、リキ)。
それから、葛城宮戸彦(かずらき・の・みやとひこ)(以下、みやさん)。
更に、和珥彦国葺(わに・の・ひこくにふく)(以下、くにお)。
そして、赤ん坊の得彦(えひこ)である。
一行は、安伊奴彦(やすいぬひこ?)(以下、ヌッヒー)の先導(せんどう)で、二千年後の福井県鯖江市(さばえし)の深江町(ふかえちょう)周辺に到達する。
ここで、お爺さんに化身(けしん)した、猿田彦大神(さるたひこの・おおかみ)を迎え、解説をおこなっていると、一人の男が駆け込んで来たのであった。
男「うら(私)は、認めんっ。こんなヤツは認めんげっ。」
大彦「だ・・・誰なのかな?」
男「うら(私)は、この地の魁帥(ひとごのかみ:首長のこと)じゃ! 名前は、まだ無いっ。」
大彦「い・・・嫌な予感がするんだな。」
嫌な予感は的中し、魁帥に「デップ」という名が付けられたのであった。
デップ「うう・・・(´;ω;`)・・・。ジョニーの方が良かった・・・(´;ω;`)ウッ…。」
リキ「自分で決められへんのかいなっ!」
大彦「ところで、認めないとは、どういうことなのかな?」
デップ「地元の人間が、ことごとく夜麻登(やまと)を歓迎すると思ってたんか? うら(私)のような、抵抗勢力もおったんやって(いたんだよ)!」
みやさん「い・・・戦(いくさ)の匂いがしてきたのでござるよ。」
デップ「その通り! 戦じゃ! 戦じゃ!」
こうして、大彦と「デップ」は戦うこととなったのであった。
大彦「まさか、戦になるとは思わなかったんだな。」
リキ「まあ、しゃぁないんやないですか。ところで『ヌッヒー』・・・。」
ヌッヒー「何ですけ?」
リキ「戦の間、得彦を預かっていて欲しいんや。」
ヌッヒー「任せておくんねっ。ねんね(赤ちゃん)は、うら(私)が、しっかり守るさけぇ。」
大彦「ついでに、近くの邑々(むらむら)で、乳の出るオナゴ(女)を探して欲しいんだな。」
ヌッヒー「乳の出るオナゴ?」
大彦「得彦に、乳を分けてもらいたいんだな。」
リキ「わてらでは、乳が出ぇへんからなぁ。」
くにお「乳が出たら、気持ちが悪うござりまするぞ・・・。」
大彦「そういうことで、申し訳ないんだな。」
ヌッヒー「ほんね気にせんときね(そんなに気にしないで)。うら、なぁもにんならんのやで(別に構わないから)。」
デップ「ほんなことより、戦やげっ!」
大彦「そうだったんだな。それでは、攻めかかるんだな。」
するとそこに、猿田彦大神が乱入して来た。
猿田彦「ちょっと待ってほしいんだぜ。」
大彦「ど・・・どういうことなのかな?」
猿田彦「戦う前に、俺に祈りを捧げるべきだぜ。」
くにお「伝承に、そう書かれているから・・・といったところにござろうな・・・。」
猿田彦「その通りだぜっ。」
大彦「で・・・では、祈るんだな・・・。」
一行が、猿田彦大神に祈りを捧げると、空から、何かが降って来た。
デップ「おえぇぇ!! あれは、なんにゃぁ!?」
みやさん「矢が降って来たのでござるよ。」
リキ「矢の羽が、鯖(さば)の尾鰭(おびれ)みたいになってるでぇ。」
くにお「鯖の尾に似ていることから、佐波矢(さばや)と呼ばれておりまする。鯖矢とも書きまするぞ。」
デップ「だちゃかん(ダメだ)。どんならん(どうにもならない)。うら(私)に直撃するんは目に見えとるげ。嗚呼・・・もつけねぇ(かわいそうな)、うら(私)・・・。」
ザクッ
デップ「こ・・・こんな形で終わるとは・・・思わなんだ・・・グフッ。」
大彦一行「デップゥゥゥ!!!」×多数
猿田彦「こうして、一行は、剣に血を濡らさずして、賊を平定したんだぜ。」
リキ「猿田彦のおっちゃんが、活躍しただけやないかい!」
猿田彦「そんなこと言わないで欲しいんだぜ。ちなみに、鯖矢が降り注いだことから、この地は鯖江(さばえ)と呼ばれるようになったんだぜ。」
みやさん「そういう説も有るみたいにござるよ。」
こうして、賊を平定し、得彦がお腹いっぱいになったところで、大彦たちは、更に北に向かうこととなった。
猿田彦「名残惜しいんだぜ。」
ヌッヒー「うら(私)もです!」
大彦「本当にお世話になったんだな。かたじけないんだな。」
リキ「それでは、皆さん、お達者でぇ!」
鯖江市のみなさん「お達者でぇぇ!!」×多数
みやさん「さあ、次は石川県に突入でござるよ。」
くにお「石川県? 高志国(こし・のくに)には、様々な地名が有るのか?」
大彦「その通りなんだな。猿田彦様の社や『デップ』と戦った地は、二千年後の福井県なんだな。ここから更に北の地は、石川県と呼ばれる地域なんだな。」
リキ「更に北へと足を運べば、富山県、新潟県になるんやで。」
くにお「ひ・・・広すぎる・・・。」
驚愕する「くにお」の頬を、得彦が優しく触れるのであった。
つづく
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