エレベーター・デラックス
朝の通勤時間帯。
会社が入居しているビルに入り
エレベーターに乗る。
エレベーターの前には長蛇の列ができていて、そのビル内の会社に勤めている人たちがそれぞれスマホを見ていたり、ボーっと立っていたりする。私もその中の一人。
「リンゴーン」とエレベーターが開く音がして、待っていた人たちが上に運ばれるべく、エレベーター内に自主的に吸い込まれる。大体10人前後。エレベーターの中は人でごった返す。
ある朝、いつものように
エレベーターに乗った。
私は最後列のど真ん中。乗り合わせた全乗客の後頭部を見ることになる。エレベーター内は3列で各列4人くらいが立っている。
…
サラリーマンの男性が目に留まった。
2列目の左端、壁際。彼はエレベーター正面ではなく、横を向いていた。正方形のエレベーター内で壁を背にして中心を向いているのだ。
全員が正面を向く中、
中心を向く人は彼だけだった。
(…はっはーん、さては)
後ろを取られることが嫌なタイプの人だな!
わかる!
多分、この人は会議の席でも、大学の講義室でも、最後尾の席を取るに違いない。だって後ろを取られるのが嫌なんだから!知らんけど!
いやぁ、この人の学生時代にワープして、この仮説が真実かどうか確かめたいなぁ、なんて思いながら、私は上に運ばれた。
…
「なーんてことをこの前思ったんだよね」
と妻に話したら、こう言われた。
「え、あたしそういう人いたら、殺されるんじゃないかと思って、いつも睨みつけるよ」
う〜ん、どうやら、
男女でとらえ方に違いがあるようだ。
【読んでね】思い出したかのように枕草子