向かい席の彼女、その向かい席の僕
僕は電車に乗っている。
学校に向かういつもの快速電車。車内は比較的ゆったりと、しかし、からっとした雰囲気がする。会話は1つもない。
電車が速度を上げる音が妙に大きく聞こえる。
もう太陽は僕の真上だ。暑いなァ。人の気も知らないでさ。
向かい側、端の席に女性が座っている。
妙齢に見えるが纏う空気はまるで中学生と言えるほど、1つ1つの挙動が忙しない。他人の瞳に映る自分を思う、落ち着きを知らない様子の人。
彼女は薄い文庫本に目をやっている。右手で支えるページの量は、ほんのまだ一章く