拝啓、背景
惨めだと思う。
自分を少しでもかわいく、かっこよく、
自信を持てるように、と。
今に思えばなんだったんだろうと思う。
1週間も早くから決まっていた約束。
なんとなくそわそわした心地で過ごした一週間は早かったような、遅かったような、正直あんり覚えていないかも
想像できる?
なにがあったのかなって
「惨めに思う」「なんだったんだろう」
私はその約束を、本来待つべき1週間に加えて、2時間待った。
だけど、その約束は達成されなかったのだ。
約束を破るなんて!
連絡もしないなんて!
待たされた、放置された、頭の中に「された」で一杯になる。
「せっかく外に出たんだし」なんて思うこともできずに、頭の中を感情に支配されたまま帰路に着くしかできない
家に着いて、伽藍とした部屋がふてぶてしく思えて腹が立つ。とりあえず冷蔵庫を開け、水を飲む。
まあ座ろう。
ふぅ、
もう連絡なんて取れない。
(なんでスカート履いたんだ?
布が余って邪魔だな)
当たり前だ信用できないじゃないか
私からの連絡だけがまるで重箱のように重なっている。それにも腹が立って閉じた。
似たような境遇の人を見つけて共感したい衝動で「約束 ドタキャン」とか「約束 来ない」とか調べる。みんな怒りが沸騰している。ぐつぐつ
私の代わりに怒ってもらった気がしてスッキリしてきた。インターネットのある時代に生まれてよかった。
顔を上げて、今朝から出しっぱなしの鏡に映った自分を見る。涙が出てきた。
今朝の私を思い出す。
この鏡にいた人はいつもよりもいい化粧品を選んで、アイロンを手首の可動域の限界まで捻って捻って、少しでもよく見えるように頑張っていた。
惨めじゃないか。
雑踏の中、街の人にとってはただの景色かもしれない。
でも、私は風景として活躍する為に朝の1時間を使ったわけじゃない。
来なかったあの人に"人"として見てもらう為に準備したのだ。
選りすぐったお気に入りの色のリップは、
ティッシュの上だと、掠れて汚く見える。
こんな色のリップでは無かった。私の中では。
自分を哀れんだって仕方ない。
人には人の悩みがあって、なんとか折り合いを付けて生きている。
こんな日でも過ぎてしまえば、明日があって、いつもと同じ時間に起きて同じ電車に乗る。
そういうものだ。