偏差値教育の光と影:学生に与える影響を考える
偏差値教育に関して、考えるべき点がたくさんあります。今回は、その始まりと人々への影響について話したいと思います。
偏差値教育の始まりと必要性
偏差値教育の始まりは1957年とのことです。これは、学生の学力を合理的に評価し、特に競争が激しい学校の合格判定を客観的に行う目的で導入されたシステムです。当初は特定の学校の入試選抜のために開発されましたが、その後の日本の教育界において革新的な役割を果たしました。
1970年代前半には、この偏差値教育が日本全国の学習塾や地方の業者テストに広がり、学生の受験校選びに大きな影響を与えるようになります。この時期から、「輪切り」と呼ばれる進路指導が行われるようになり、学生の受験校を偏差値によって区切ることが一般的になりました。この背景には、高度経済成長期を経て生活が安定し、教育への関心が高まり、大学や高校への進学希望者が急増したことがあります。
このような社会状況の中で、偏差値教育は教育機会の均等化と学力の客観的評価を目的として、ますます重要性を増していきました。
注1:出版社などが作成した学力テスト
注2:大根を輪切りするように志願者を層別化するので「輪切り」と呼ばれている
偏差値教育の問題点
偏差値教育の導入は、学力の平均値との比較によって各学生のランキングを明確にし、学生や保護者にとっての進路選択における明確なガイドラインを提供しました。
しかし、偏差値による評価システムは、学生の個性や多様性を無視する側面や、過度な競争を助長する問題点を持っています。偏差値教育が学生に与える精神的なプレッシャーや、教育の画一化への懸念は、現代教育の大きな課題の一つです。
このように、偏差値教育は日本の教育システムにおいて重要な位置を占めていると同時に、その効果と限界に関して様々な意見が存在しています。
偏差値教育の負の側面
1.競争と比較の文化
偏差値教育は、「他の人よりも上に行かなければならない」というプレッシャーを生み出します。この絶え間ない競争心は、他人と自分を常に比較する習慣をつくり、社会におけるお互いの関係を競争の観点からしか見られなくなる可能性があります。これは、自分より偏差値が高い人を嫉妬したり、悪い競争心を強くしたりして、学生の間にいらない緊張を作り出します。
2.学歴主義の強化
偏差値教育は学歴主義をさらに強化し、社会での地位や収入が学歴によって大きく左右される現象を生み出しています。これにより、大人になってからも他人よりも上に立とうとする心理が強まり、社会人としての人との関わり合いで「マウントを取る」ような行動が見られるようになります。このような学歴に基づく評価は、個人の能力や適性、努力を適切に反映させない場合があります。
3.自信喪失とチャレンジ精神の欠如
低い偏差値によって自己評価が下がると、自信を失い新たな挑戦に対する意欲も低下します。自己肯定感が低いと、失敗を恐れてチャンスを逃すことが多くなり、成長の機会を自ら逃してしまう結果につながります。このような状況は、個人の潜在能力を十分に発揮させず、多様な可能性を閉ざしてしまいます。
4.表面的な学習と思考の浅さ
偏差値教育は、テストで高得点を取ることを最優先とする学習スタイルを奨励します。この結果、深い理解を促す学習よりも短期間で結果を出すための表面的な知識の詰め込みが優先されがちです。これにより、創造性や物事の深い理解、独自の考えを持つ力が育ちにくい環境を作り出しています。
5.精神健康への影響
偏差値教育による過度なプレッシャーは、学生の精神健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。常に評価され、ランク付けされることへのストレスは、不安、抑うつ、自己価値の低下など、精神的な問題を引き起こす原因となります。これらの精神的な負担は、学生の学習効率や生活の質にも影響を及ぼし、長期的な幸福感や満足感を得にくくします。
まとめ
今回は、偏差値教育の始まりと人々への影響について、特に負の側面について話しましたが、偏差値教育が完全に否定されるべきものではないことも理解しています。これは、学生の学力を公平に評価し、自己の位置を知る上で有効なツールとなります。さらに、学生が成績を上げようとする意欲を高める効果もあります。しかし、学生の個性や多様性を軽視し、過剰な競争を助長する傾向があるのも確かです。教育システムとして偏差値を利用する際には、その長所と短所を踏まえ、学生一人一人の能力や潜在力を最大限に引き出すための適切なバランスを見つけ出すことが大切です。
最終的には、教育の目標は試験に合格するのではなく、学生の思考力、創造力、そして人としての成長を促すことにあります。
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