【補足】等級制度 設計方法(おまけ)
今回は等級制度策定における補足論点として、昇降格の判定方法の詳細についてや、管理監督者の取り扱いなどより細かな論点について触れていければと思います!
1,昇降格の判定方法
まずは、前回の記事で簡単にご紹介させていただいた、昇降格の判定方法(以下のプロセス)について、より丁寧に解説いたします。
昇降格の判定を行う際の大きな流れとしては上記図の一番下の手順に沿って行います。
①候補者の選定
②検討会議(評価会議)の実施
③昇格者の決定
④昇格通知
①候補者の選定
候補者の選定を行う際には、メンバーにとって納得性や公平性が高いものとなるよう、全社共通の基準を定めておくことを推奨しています。
何を基準として設定するのかについては、各社が重視されるポイントが異なりますので、一概には言えませんが、弊社の推奨としては、図中にも記載した通り2つの選定基準を設けることをオススメしております。
また、総合評価結果の判定基準として、
半期ごとの評価かつS~Dの5段階評価とした場合、最高評価「S」を2回連続で取った場合、もしくは「SまたはA」を2年間で3回以上取得している社員
等級定義表に基づいた判定基準では、前記事でご紹介した「入学要件」や「卒業要件」で判定(詳しくは下記の記事を参照)といった形で設定いただくのが一般的な方法になります。
ただし、会社によっては
・半期ではなく、通年での評価としている
・非管理職の方は最短で半期での昇格ができるようにしたい
といった点で、今回提示している基準が意向に沿わない場合もありますので、その場合には総合評価結果の判定基準を一部調整いただくことも可能です。込めたいメッセージに応じて調整いただければと思います。
なぜ2軸を設けるのか?
ここで、なぜ総合評価結果と等級定義表に基づいた評価の2軸から判定をおこなうのか疑問に思われた方もいるかと存じます。
そちらの回答としましては、
短期的な評価結果のみ(総合評価結果のみ)ですと、そのタイミングでたまたま良い結果が出たメンバーも昇格することになる可能性もあり、昇格後の降格リスクが高まるといった点が懸念されます。
一方で、長期的な視点のみ(等級定義表に基づく判断のみ)とした場合、継続的には頑張っているが、直近の総合評価結果が芳しくない場合、昇格後の昇給が難しく、その点で従業員の方のモチベーションが損なわれてしまう危険性がございます。
そのため、総合評価結果と等級定義表という異なる2つの時間軸から昇降格を判定される事を推奨しております。
※総合評価結果が短期視点、等級定義表が長期視点での判定となる理由につきましては、下記の記事をご覧ください。
必ずしも2軸で評価しなければならないのか?
弊社では、上記の通り2軸にて評価を行うことを推奨しておりますが、評価基準が増えるほど昇格の判定が厳しくなりますので、その点でどちらか一方のみを判定基準とされる会社もございます。
2軸とするポイントは、昇格判定後の能力不一致による降格リスクへの対応となりますので、下位等級の方については会社全体へ与える影響も少なく、昇降格を流動的に行うためどちらか一方の基準とされても一定問題はないかと思われます。
その他の判定方法は?
その他の判定方法としては、成果や昇格に対する意気込みを把握するためプレゼンテーションの実施や、より客観的な視点を取り入れるために360度評価や外部アセスメント(テスト)を導入するといった方法もございます。
客観性や正確性を求めれば求めるほど、評価の工数が高くなっていくため、通常業務も含め全体的なバランスに鑑みつつ、どこまで実施されるのかをご検討されるのがよろしいかと思います。
②検討会議(評価会議)の実施
こちらは、総合評価の評価期間と昇降格の判定を同時期に行う場合には、総合評価結果の最終決定を行う評価会議内で合わせて実施します。
主に確認するポイントとしては、どういったポイントで昇降格の対象者となったのかの確認と、その判断結果に評価者の偏りが無いかを確認し、参加者の合意のもと決定する想定です。
※評価会議の詳細な実施方法については、評価制度にて解説しております。
詳細は下記よりご確認ください。
③昇格者の決定
会議内で昇格者が決定しましたら、本人に通知を行うための準備を行います。具体的には、昇給額がどの程度となるのかや、どのように本人に伝えるかといった準備がございます。
④昇格通知
基本的には、上長または代表者、人事との1on1を設定し通知いただくことを想定しております。
以上が、昇降格の判定方法についての詳細なご説明となります。
2,昇降格の判定の実施頻度
上記ご説明した通り、成果と行動による評価だけでなく等級の判定となると、3軸から各メンバーを評価する必要があります。
また、昇降格の判定にプレゼンテーションや外部アセスメントを含める場合には多くの工数がかかるため、半期ごとや四半期ごとに実施することが難しい場合がございます。
その際のオプションとして、下記の通り、昇降格の判定は年に1回のみとする場合(②)や、推薦者が出てきた場合に都度実施する(③)といった方法もございます。
上記の方法によって、実施の工数を減らすことはできますが、デメリットとして「等級定義表との接点が減り、メンバーの意識が薄れてしまう」といった可能性がございます。
そのため、大きく工数を要さない場合には可能な限り毎期実施し、各メンバーの成長指針として接点を多く作られる事を推奨いたします。
3,管理監督者の設定
IPOをご検討されている場合には、必要となってくる論点になります。
厚生労働省が提示している資料より、管理監督者として認められるには役職名によらず次の4項目の要件を満たす必要があります。
特に、①の職務内容や②の責任、権限の範囲といった内容については、等級定義の内容とも関わってくるものになります。
管理職=管理監督者としたい場合に、管理職に該当する等級の要件が上記を満たせていないと、等級定義を調整する必要が出てきますので上記を意識しつつ等級の段階数をご設定される事をおすすめしております。
※会社様によって管理職を全員管理監督者として取り扱わない場合もございます。
最後に…
前編~後編、そして本記事を総括して、やはり等級制度は評価や報酬制度と比較すると、具体的な活用イメージや成果創出との関連性が見えにくく後回しとされやすい(それにより運用が形骸化しやすい)傾向にございます。
(note記事のリアクション数を見ても顕著ですね…笑)
評価制度や報酬制度が短期的な視点での還元とすると、等級制度は長期的な視点での還元を目指すものです。
転職が一般的なものとなり、雇用の流動化がますます進んでいる現代において、自身のキャリアをどのように描いていくのかを意識する人はどんどん増えています。
そのような中で、短期的な視点での還元も一定重要ではありますが長期的にどのような成長を企業側が想定しているのかを示すことも採用時のアピールポイントとしてもより必要となってくるのではないかと考えています。
本記事が、目先の還元だけでなく長期的還元といった視野から、等級制度の重要性についても今一度考えるご参考となりましたら幸いです。
以上、等級制度の設計方法でした!次回は報酬制度についてご紹介できればと思います!