3Cを素材に戦略を旅する地図とコンパスを持つ方法〜マネプロ#17
こんにちは! DeNAでHRビジネスパートナーをしている坪井(@tsubot0905)です。
マネジメントの進化を探求するnote
『マネプロ』は今回が第17回目です。
このマネプロnoteのシリーズでは、5分で分かりやすく学べるシンプルな構成と、相手とのコミュニケーションで使えるようなシンクロしやすい問いを意識した内容を心がけています。
さて、マネプロの#11から5回にわたり、3C分析を通じて戦略に影響する視点を探求してきました。
今回は、それらを戦略につなげる思考の探求です。
3CとSWOT分析、TOWS分析なども絡めてお伝えして参ります。
テーマは「3Cから戦略へ」。
目次はこちら!
<戦うフィールドの地図となるSWOT>
SWOT分析といえば、提唱から半世紀過ぎた今も世界中のマネジメント層が使う定番中の定番フレームワーク。
1965年、ハーバードビジネススクールの看板教授だったケネス・アンドルーズが生み出しました。
SWOTはそれぞれ、「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」の頭文字を取っています。
前者の2つが内部要因で、自社の目的達成にとってポジティブな要素かネガティブな要素かで「強み」と「弱み」に分けています。
対して、後者の2つは外部要因。ポジティブな要素を「機会」、ネガティブな要因を「脅威」として整理しています。
SWOTの良いところは、目標を達成するために事業が向き合う視点を整えられることです。
戦うフィールドを俯瞰できる地図に使えるため、
パワポならスライド1枚の中で伝えられてしまう。
そんな便利なフレームワークですよね。
<3CをSWOTにつなげる>
では、これまで探求してきた3Cはいらないのか?
そんなことはなく、この二つはつなげて考えることができます。というか、つなげて活かすんです。
3CとSWOTは、
「自社」と「競合」→ 強み・弱み
「市場/顧客」と「競合」→ 機会・脅威
とそれぞれ対応しています。
先に3Cで客観的な情勢を理解し、それをもとに自社にとっての強み・弱み・機会・脅威を考えると全体が見やすくなります。
具体的な事例とともに見ていきましょう。
「自社」と「競合」→ 強み・弱み
アップルから見て、スマートフォンの市場での競合はGoogleです。
アップルのiPhoneは、統一されたデザイン力を中核としており(強み)、高価格でありながら、日本の市場では高いシェア率を獲得している。
一方で、競合GoogleのAndroidは、各国のメーカーに機能・デザインを任せることでラインナップを広げ、早くから低価格アイテムも提供していたこともあり、世界でのシェア率はiPhoneの約3倍高い状況です(アップルにとっての弱み)。
※参照:https://xera.jp/entry/iphone-android-share#20201iPhoneAndroid
「市場/顧客」と「競合」→ 機会・脅威
緊急事態宣言で出社や飲食が厳しくなりました(市場)。
これは、オフィス業態や飲食業態にとっては大ダメージ(脅威)。
そこで活躍中なのが、オンライン会議システムや宅飲み用のデリバリー。
今までのプレイヤーだけでなく市場の顧客の新たなウォンツを満たせるよう、様々な体験価値を提供しようと企業の新規参入や新たなサービスが生まれています(機会)。
<3C分析とSWOTの視点の違い>
3CとSWOTの関係を整理してみましょう。
まず、どちらも内部と外部の要因を分析している点では同じです。
3Cの「自社」と「競合」の比較はSWOTでの「強み」と「弱み」として現れやすく、内部要因に。
3Cの「顧客・市場・競合」による「自社」への影響は「機会」と「脅威」であり、外部要因となります。
しかし、両者の考える視点は少し異なります。
3Cは、「自社」を含めて客観的な要素を考慮に入れたファクトを重視します。対して、SWOTは「自社」の目標達成を主眼として、主観的な判断を組み込んだジャッジが存在しています。
小学生の頃に描いたであろう「わたしたちの〇〇町MAP」的なものを想像してください。
手始めに、自分たちのフィールドである地域の白地図に「お店」や「道路」の客観的な情報を書き込んでいく。(これが3C)
そこから、「おいしいお店」「おすすめの道」などあれこれ自分の解釈を入れた主観的な情報を書き込んで独自のMAPを完成させる。(これがSWOT)
このような順序で進めていたはずです。
客観的にみてから主観に落とし込む思考プロセスの方が状況を正しく捉えやすい。なので、3C分析をしてからSWOT分析に入ると、より事業が向き合う視点を整えられるのです。
<戦う方向性のコンパスとなるTOWS>
SWOTはご存知でも、TOWSは知らないって方もいらっしゃるのではないでしょうか?
こちらは、1982年にサンフランシスコ大学教授のワイリックさんが提唱した考え方です。別名、クロスSWOTとも呼ばれるアプローチ。
3CやSWOTはあくまで現状把握の手法ですが、TOWSは整理した現状から、戦略や対策を導き出す手法として使われます。
具体的にはこちらの図解をみていただくと!
※書籍「経営戦略全史」からアレンジして抜粋
クロスSWOTと呼ばれる所以が分かりますよね。
TOWSは並び順からも分かる通り、
まず外部環境を見てから内部環境へフォーカスすることを薦めています。
そして、マイナスからプラスの要素を見るようにとも。
人間、自分のことやプラスのことを中心に考えてしまいやすいからこそ、
「外側からマイナスの側面を見るように」とマーケティングの巨匠フィリップ・コトラーさんも推奨していたそうです。
<TOWS分析から導く4つの戦略>
図の通り、TOWSの組み合わせによる各象限に対して、取る方針や打ち手を決めていきます。
【 弱み×脅威 → 防衛/撤退 】
自社の弱みと外部の脅威を最小化する方針です。弱みの克服や脅威の減少につながる防衛的なリアクションを検討します。合併や事業売却など、事業を断念するしかない場合は撤退もあるかもしれません。
【 弱み×機会 → 弱点強化 】
弱みを補完して機会を活かす方針です。例えば、市場のニーズをつかんでいながら自社にそれを供給する能力がない場合、事業提携や技術協力などのアクションを検討することになるでしょう。
【 強み×脅威 → 差別化 】
強みを最大限に活用し、脅威を最小化する方針です。例えば、海外から資金力のある会社が日本市場に参入してきた時、どのように対応するかのアクションを検討することはこれに該当します。
【 強み×機会 → 積極攻勢 】
自社の強みを好環境の中で最大化する方針です。自社の強みを使って、この機会を拡大・発展させるために、さらに人・物・金といったリソースを集め、勝負を仕掛けるアクションを打ち出す企業もあると思います。
余談ですが、TOWS分析では、S・W・O・Tのそれぞれに5項目あげるだけで、組み合わせが100通りにもなってしまいます。
全てを並べて検討するには大変なので、TOWSは表舞台には出にくいのかもしれませんね。
ですが、SWOTという地図に対して、TOWSはどの方角に進むかを示すコンパスになると感じませんか?
進む方向性が明らかになり、
自然と次の一手が浮かんでくる。
全員が同じベクトルを向いて前進できれば
企業の成功にまた一歩近づけるのだと思います。
<戦略づくりはサイエンスとアート>
さて、ここまで「3C→SWOT→TOWS→戦略」へとつなげていく思考を丁寧に整理してきました。
優秀な経営者の方は1つずつのステップを踏まなくても、一瞬にして情報を頭で組み立てていることでしょう。(が、誰もが経営の天才なわけではないから、こうした概念化したフレームワークが有効なはず)
では、天才ではなくても考えられる、良い戦略づくりの要諦となるものは何でしょうか?
私なりの持論をお伝えすると、サイエンスとアートの両輪で考えることだと思います。
いままでの話は、頭で考える論理的なサイエンスのアプローチ。
ですが、戦略を決めるという行為には最後、意思が入り込みます。
どんなに客観的なファクトを集めても、その状況をどう読み、何を選ぶかの判断はリーダーの主観であり意思です。
そして『ストーリーとしての競争戦略』の書籍にあるように、
良い戦略は、思わず人に話したくなるワクワクするストーリーでもあります。点や単線の構図では、ワクワクするストーリーにはならない。
つまり、戦略づくりは人を魅了するアート作品のようなものではないかと思うのです。
そう考えると、以前のマネプロで書いた戦略の解釈である、
「ワクワクする勝利の方程式」というインプットから
組織開発のスループットを通じて戦略の実現を目指す話は、
戦略を使う側の視点からサイエンスとアートの要素を含んで表現しているつもりです。(いかがでしょうか?笑)
そして、「戦略」と呼ぶからには、トップが長期的視点であらゆるリソースを活用してでも成功したい方針を示すわけです。
ですから、戦略というのは、戦略を決めた人のサイエンスとアートが交わった「意志の塊」なのではないでしょうか。
<今回のQuestions>
以上が17回目のマネプロでお届けしたかったコンテンツでした!
いかがでしたでしょうか?
ということでマネプロ恒例、最後の問いです。
今回のテーマを通じて、リーダーやマネージャーの方々に問いかけたい4つの質問を選びました。忙しい皆さんの思考の整理と、新たな行動の後押しになれますように!
※「自分はこう考える」「自分ならこれを問いかける」という考えはぜひTwitterにて「#マネプロ」を付けてつぶやいていただけたら嬉しいです!
<次回に向けて>
『戦争論』を書いた戦略の祖とも言われる軍事学者クラウゼヴィッツの言葉に「戦略の失敗は、戦術では取り返せない」とあります。
つまり、戦いをどう攻略・省略するのか。
ここがしっかりと練りこまれていないと、いくら現場が優秀でも、個々の戦術が優れていても、勝機はないということです。
それを踏まえ、マネプロでも戦略編から入って戦術の話につなげていく流れとしました。
一方で戦略が決まれば、あとは
戦略を机上の空論にしないためにも
戦術の重要性が高まることになります。
次回からは、戦略をいかに戦術に落とし込むか。
マネプロの戦術編に入りたいと思います。
というわけで、次回のテーマは「戦略を戦術へ」
戦術について探求を深めたいと思います。
マネプロの戦術編もお楽しみに!
次回は2週間後の水曜日。
良かったらぜひnoteのスキやフォローをお願いします。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
読者のみなさんと共にマネジメントの進化を探求できれば何よりです。Twitterのフォロリツ大歓迎です!DMでの感想も是非!(@tsubot0905)
noteで取り上げた内容について、みなさんの持論や新たな問いかけの視点をもらうことでマネジメントの探求がもっと楽しくなるはず。ですので、みなさんからのリアクションを心待ちにしております。よろしくお願いします!