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戦略キャンパスで差別化を図る!シルク・ドゥ・ソレイユから学ぶ競争と共創〜マネプロ#14

こんにちは! DeNAでHRビジネスパートナーをしている坪井(@tsubot0905)です。

マネジメントの進化を探求するnote
『マネプロ』は今回が第14回目です。

このマネプロnoteのシリーズでは、5分で分かりやすく学べるシンプルな構成と、相手とのコミュニケーションで使えるようなシンクロしやすい問いを意識した内容を心がけています。

さて、第11回のマネプロからは3C分析のCustomer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)を順にテーマとしてお送りしております。

今回のテーマは「競合に向き合う」の前編。

“シルク・ドゥ・ソレイユの勝ち方”を参考にしながら「戦略キャンパス」という考え方を紹介していきます。

目次はこちら!

<競合を知るべき理由>

まずは「競合」について認識を揃えましょう。

競合とは、競い合う立場にある相手/他社を指します。競合分析は、競合が何をしているかを知り、どんな特徴があるのかを理解することで、自社の方向性を考える際の材料となります。

競合の動きを知ることが
なぜ自社の方向性を考える材料となるのか?

それは、顧客にとって競合は選択肢の一つになるからです。顧客は自分のニーズを満たすために最も良いと感じるものを選択します。(顧客のテーマは前回のマネプロをご覧ください)

たとえば、遊びたいというニーズを持つ人は、ゲーム、遊園地、映画館、公園といった様々な遊びの中からたった1つを選ぶわけです。

消費者である私たちはニーズに対して商品やサービスを買う/使うときに価値を比較して選びます。

それゆえ、企業は顧客から選ばれるために、顧客の選択肢となる競合についても向き合う必要があるのです。


<競合について向き合う考え方>

そんな「競合」に向き合うための考え方として戦略キャンパスを紹介したいと思います。

これは『ブルーオーシャン戦略』の本で登場した考え方です。自社と競合の「提供価値」を比較して、共通の視点を持つことができます。

戦略キャンパスを用いて競合と自社を比較し、自社にとってのKSF(Key Success Factor)を見極め、新たなコンセプトで新たな市場を創る。これがブルーオーシャン戦略の要です。

わかりやすく言い換えると、自社の成功の鍵となる要因を考え、何が勝敗を決するのかを見極めた上で、どの価値で勝負するかを決めることです。

具体的な例を見た方がわかりやすいので、次章でシルク・ドゥ・ソレイユを例に戦略キャンパスの使い方を学んでいきましょう。

<KSFを見極め、勝負する価値を決める>

百聞は一見に如かず。まずは図を見てみてください。シルク・ドゥ・ソレイユとサーカスの提供価値の違いを戦略キャンパスに落とし込んでいます。

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この図を見て真っ先に「あれ、どうしてシルク・ドゥ・ソレイユとサーカスを比較してるの?」と思われた方もいるかと思います。

シルク・ドゥ・ソレイユとサーカスは別ジャンル・・・に感じますよね。

実は私もその1人でした。ラスベガスで「O」や「ブルーマン」のショーを見た時の印象は「これ、サーカスなの??」といった具合で。

でも、これこそまさにブルーオーシャン戦略が成功している証拠です。

従来のサーカスは、チケット代が安く、ターゲットも子どもが中心でした。そのため、出演料のかさむ花形パフォーマーや維持コストの高い動物を使ったショーをやめられず、穴埋めとしてのグッズ販売が欠かせませんでした。

しかし、シルク・ドゥ・ソレイユはそういった従来のサーカスらしさをあえて排し、ターゲットも演劇や舞台を好むような教養ある大人に絞りました。テーマ性を設け、芸術性の高い音楽とダンスを取り入れることで、サーカスを演劇と同じレベルにまで引き上げたのです。

こうした戦略の成功によって、私はまんまと「シルク・ドゥ・ソレイユ」をサーカスとは別ジャンルだと思い込んだわけですね。

※現在はコロナの影響を受けて経営困難な状況ですが、市場や顧客をアッと驚かせたショーをまた見たい!復活を心から祈っております!!


<シルク・ドゥ・ソレイユの足し算・引き算>

もう少し具体的に戦略キャンパスの中身を見ていきましょう。

シルク・ドゥ・ソレイユは、従来のサーカスの提供価値を分析し、独自にサービスを付け加えたり、逆に従来のものから大胆に削ったりすることで、新たなジャンルを創出しました。

これをマネプロ#8の<戦略の足し算・引き算・かけ算>の時と同じく加減乗除に当てはめて見てみます。

まず、足し算。
従来のサーカスよりも「チケット代」を上げ、「個性あふれる独自のテント」を追及しました。さらに、「テーマ性」「洗練された環境」「複数の演目」「芸術性の高い音楽とダンス」といった要素を新たに加えています。

みなさんが「シルク・ドゥ・ソレイユ」と聞いて頭に浮かべるのは、これらの新たに付け加えられた要素ではないでしょうか?

続いて、引き算。
従来のサーカスに比べ「笑いとユーモア」「危険やスリル」の要素を減らしています。これはおそらく、減らしたというより「テーマ性」「芸術性の高い音楽とダンス」を追及した結果自然に減ったのでしょう。

驚くべきは残りの部分で、もともとはサーカスの象徴といってもよかった「花形パフォーマー」「動物ショー」「館内グッズ販売」「複数の舞台の同時ショー」を大胆にもすべて排除してしまっていることです。

これらが組み合わさり彼らの存在を際立たせているのがよくわかりますね。
メリハリの効いた足し引きが差別化につながっています。

正直、シルク・ドゥ・ソレイユが戦略キャンバスに書かれたものをどこまで事前に描いていたのかは分かりません。ですが、どんな価値で勝負するかを決めて実践していたのは間違いないと思います。

自社においての戦略の足し算と引き算、ぜひ議論してみてください。

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<競合がいる2つのメリット>

これまではシルク・ドゥ・ソレイユがサーカス市場の競合に対して、どのように差別化を図ってきたかを書いてきました。

最後に、敵のように感じるかもしれない「競合」も、そんなに悪いものでもないんですよ、という視点を体験談と共に2つお伝えします。


①事業の競争は市場の共創になる

競争がなければ、さらなる高みを追求する手が緩んでしまう可能性があります。それでは市場が育ちません。

今から10年ほど前のこと。クーポン共同購入サイトの業界で1、2位を争っていたグルーポンとポンパレはお互い競い合いながら市場を牽引して大きく育てました。

2010年に生まれたばかりの市場が、2013年には​約400億円の市場に成長していたのです。多い時には230ものサイトが存在していて大活況でした。

ですが、今のクーポン共同購入サイトは大手資本傘下のサービスとして4社(ポンパレ/ルクサ/くまポン/ラクーポン)が残っているくらいでしょうか。

この経験から、市場が維持・発展するのは企業同士が健全な競争をして、顧客への提供価値を高め続けている証拠、と考えるようになりました。

競合がいるからこそ市場は共創によって成長します。
逆に共創できなくなった市場は衰退し、残念ながら市場とは呼ばれません。


②絶対価値ではなく相対価値が見つかる

競合をベンチマークすることで分かりやすい指標やベクトルが生まれることがあります。

私が過去に人事の仕事をしていた時、比較対象の競合企業の方が売上も利益も自社を上回っていました。しかし、一人当たりの営業利益額に注目してみると、我々の方が優っていました。

一人一人が生み出している価値は自分達の事業の方が競合と比較して高いと考えることできたわけです。これにより、社員の提供価値に誇りを持てる事業ができていることを社内外にメッセージできました。

比較する相手がいなければ、自分達はコレが強いんだ!と示すことはできませんよね。競合の存在によって、自社らしい価値に自信が持てることもあるのではないでしょうか?


<今回のQuestions>

以上が14回目のマネプロでお届けしたかったコンテンツでした!
いかがでしたでしょうか?

ということでマネプロ恒例、最後の問いです。

今回のテーマを通じて、リーダーやマネージャーの方々に問いかけたい4つの質問を選びました。忙しい皆さんの思考の整理と、新たな行動の後押しになれますように!

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※「自分はこう考える」「自分ならこれを問いかける」という考えはぜひTwitterにて「#マネプロ」を付けてつぶやいていただけたら嬉しいです!

<次回にむけて>

今回は、”競合と向き合う”をテーマに戦略キャンパスを紹介しました。自社らしさを大事にしながら競合同士が競争し、豊かな市場を共創していくべし、という姿勢が伝われば幸いです。

さて、戦略キャンパスを描こうとすると
こんな壁にぶち当たってしまうことがあります。

そもそも何がKSF(成功の鍵となる要因)か分からない…
何が勝負の行方を左右するのか、何で勝負していくべきか…

これ、けっこう大事な問題です。KSFを見極めるには、競合と比較する前に、まず顧客にとって何が価値なのかを考えなければなりません。

そこで、顧客にとっての価値を「品質」の視点から議論する際の考え方を次回で紹介します。

というわけで、次回のテーマは今回に引き続き「競合と向き合う」の後編です。

次回は2週間後の水曜日。
良かったらぜひnoteのスキやフォローをお願いします。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!

読者のみなさんと共にマネジメントの進化を探求できれば何よりです。Twitterのフォロリツ大歓迎です!DMでの感想も是非!(@tsubot0905

noteで取り上げた内容について、みなさんの持論や新たな問いかけの視点をもらうことでマネジメントの探求がもっと楽しくなるはず。ですので、みなさんからのリアクションを心待ちにしております。よろしくお願いします!

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