無印良品から学ぶビジョンを使ったリーダーシップ〜マネプロ#6
こんにちは! DeNAでHRビジネスパートナーをしている坪井(@tsubot0905)です。
マネジメントの進化を探求するnote
『マネプロ』は今回が第6回目です。
このマネプロnoteのシリーズでは、5分で分かりやすく学べるシンプルな構成と、相手とのコミュニケーションで使えるようなシンクロしやすい問いを意識した内容を心がけています。
さて、前回はMVVの「ミッション」についてお伝えしました。
今回のテーマは「ビジョン」。
目次はこちら!
<ビジョンとは理想の世界観>
ビジョンとは、実現したい未来の行先や方向性を示すこと。
リーダーはビジョンを
衣服のように身につけている
リーダーシップの権威と呼ばれているウォーレンベニスはリーダーとビジョンの関係性についてこう表現しています。リーダーは当たり前のように、自ら理想を実現させようとすることでビジョンを使う者になっている、ということを伝えているのだと思います。
ビジョンは、MVVの中でも未来への考え方を示す概念です。
そのためビジョンは未来視点から経営や事業の意思決定をする際の拠り所となり、企業としてブレずに変化を加速する動きへとつながります。
それでは、特徴的なビジョンを持つ企業の事例から探求を深めたいと思います。
<ビジョンの事例:良品計画/無印良品>
今回取り上げるのは、無印良品(以降無印)。
シンプルかつリーズナブルな無印の商品が売れに売れ、1989年に西友から独立した(株)良品計画は1995年には東証1部上場を果たしましたが、2000年に突如成長が止まり初の減益、2001年度には初の最終赤字を記録しました。
そんな中、社長が交代。事業の考え方やあり方から見直してコンセプトを刷新します。
掲げたキーワードの1つが「“これがいい"ではなく“これでいい"」。この言葉はビジョンの表現の中で長らく活かされてきました。
言葉だけ見るとビックリですよね。あまりに潔い、大胆な宣言にかなり驚いたものです。20年前からアナ雪の「これで〜♪ いいの〜♪」と高らかに歌い上げていたわけです。
変革期のタイミングに、自社のコンセプトに”これでいい”というキーワードを持って来られる企業はないし、それにGOサインを出せるリーダーもすごいと思ったんです。みなさんもそう思いませんか?
コンセプトの言葉を刷新しただけではありません。改革が始まった当時、お店に残っていた不良在庫38億円分の衣料品の焼却処分を社員に見せ、自分たちが変わらなければならないことを社員に示したのだそうです。ここも大胆ですよね。今のは改革シーンの一例でしたが結果として、2003年には増収増益、2005年に完全復活宣言を発表できるような成果を出せています。(参考:『日本の持続的成長企業』)
さぁ変わるんだと言っても、成功体験が積み重なってきたことを変えることはなかなか難しいもの。新たな方向性を打ち出して改革を進めた約5年間の忍耐力と実行力によるV字回復はまさに天晴れ!
当時のエピソードを聞くと危機感そのままに、企業のやろうとしていた方向性を示す言葉の力強さを感じました。コトを成すために望ましい状態をその企業らしい言葉で描いており、しっかりと実践して成果につなげているのが印象的な事例でした。
<ビジョンは『ON』であれ>
無印の例にもあるように、ビジョンにはその企業らしさを感じさせるオリジナリティ(O)が必要だと感じます。
というのも、過去にビジョンづくりを携わっていた際、様々な会社のビジョン事例を見ていて多いなと感じた3つの言葉があるのです。それが「チャレンジ」「イノベーション」「フューチャー」。
これらの単語を並べただけでは、その企業らしいビジョンは何も言っていないのと同じです。未来に向かってチャレンジするのもイノベーションを起こしていくのも当然のことですから。
ビジョンを作る時には、その企業の過去の歴史からつながる、独自の意味が込もっていることが必要だと思っています。企業には創りたい世界観があるはずで、ビジョンはその企業の未来を感じるものが良い。それが「らしさ」となりオリジナリティにつながります。
極端に短い文章で伝わらないよりは、多少文章が長くても伝われば良いんです。文章の言葉自体は大事ですが、文章の言葉の意味を知り、同じ景色を見ることの方がもっと大事です。そのビジョンを目指したいと思えるか。ワクワクするか。
良品生活のように厳しい時期を迎えた変革期のビジョンであれば、今を耐えながらも信じて前に進むんだ、という変革に本気を感じるようなビジョンが必要だと思います。それは無印の例にもあったワクワクよりもザワザワするようなビジョンかもしれません。
ビジョンは自社らしく味わいのある言葉や意味がないと力強く歩めないものではないでしょうか?自分たち独自のあり方を大事にしたビジョンは、企業の進化や変革のセンターピンとなり、企業や社員に方向性を与えてくれるはずです。
さて、続いてビジョンのONの「N」の話です。
ビジョンは掲げた瞬間、先にやるもの・いつかやるものとなりがちですが、理想の実現にむかうのは「今」であることを意識する必要があります。つまりビジョンのONの「N」はNOWを意味します。
「いつやるの?いまでしょ!」なんだか、東進ハイスクールの林さんが浮かびますね(笑)
言葉を飾って終わりにせず、常に行動に反映していくことが大事です。昨日より1%だけ行動を改善し続ければ1年で38倍の効果になっているそうです(1.01の365乗)。ビジョンの実現は一人ひとりの、1日1日の実践の積み重ねなんだと思います。
<ビジョンと社員の関係性>
ビジョンは語らなければ相手に伝わりません。
ビジョンは経営者しか語るシーンがない?
そんなことはありません。
例えば、採用面接で候補者の方からビジョンを聞かれたらどう答えますか?これはビジョンを自分の言葉で語れるかどうかを試されるわかりやすいシーンだと思います。
また、ビジョンは伝え続けないと相手から忘却される運命であると肝に銘じる必要があります。自分自身ですら年始に抱負を語っていたことを年末には忘れていることってありますよね…それと同じです。(ビジョンは常にON!)
人は普段のコミュニケーションにおけるトピックスの割合から物事の重要度を判断するそうです。
事業の売上や利益、業務上の課題や進捗の話は日常的に話題になると思います。ですが、ビジョンの話は意識しないと話題にはなりません。
ですから、ビジョンを使いこなすには、リーダーは日々のコミュニケーションの中で話題を選び、積極的にビジョンを語りかけたり、問いかけたりすることを大切にしないといけません。
つまり、相手との話題占有率に応じて人のマインドシェアは決まり、仕事における意識が変わるということです。
冒頭のウォーレンベニスの言葉は、リーダーが自らビジョンを体現することを示していましたが、相手に対して働きかけるビジョンの使い方として「話題を選ぶ」という視点も持てると良いと思います。
<ビジョンとミッションの関係性>
日々自分たちが何に命を使い、どんな存在価値を持って歩んでいくのかを示すミッション。その歩む道はどこへ向かうものなのかを示すビジョン。
ミッションはWhyの問いかけに答えるもの。
ビジョンはWhatの問いかけに答えるもの。
ですから「なぜそのビジョンなのか?」を問われればミッションが浮かぶ。「ミッションを通じて何をしたいのか?」を問われればビジョンが浮かぶ。両者はそんな関係性にあると言えます。
ただし、2つとも掲げなければならないかというとそうでもなく、私は1つでも良いと思っています。
実際、ミッションは作らずビジョンしか作らなかった経験がありました。MVVはあくまで企業理念を伝える切り口だと以前お伝えしましたが、企業として何を実現したいのかを示すのに1つの方がシンプルであればそれでいいのだと思います。
では、1つだけ掲げるとしたらどちらが良いのか?
それは自分たちの力強い原動力にできるのはどちらかで判断すれば良いでしょう。
個人的には、「have to」(〜を果たす思考)の考え方が強ければミッションドリブンな企業。「want to」(〜をしたい思考)の考え方が強ければビジョンドリブンな企業。そんな感覚を持っています。
会社の例でいえば、DeNAはミッション寄り、リクルートはビジョン寄り。リーダーの例でいえば、キングダムの王賁はミッション型、信はビジョン型ですね(伝わるかな...笑)
皆さんの組織はミッションとビジョン、どちらの方が会社全体のパワーに転換できるでしょうか?両方掲げて中途半端になるなら、旗印は1つにして注力するのも手です。
<リーダーはビジョンを未来への架け橋にする>
ビジョンは、目指したい行先や方向性を示す「理想の世界観」。言い換えるならば、独自性と実践を追求するための「変化のあり方を示したもの」とも言えるのがビジョンです。変化をマネジメントする最善の方法は、自ら変化を生み出すこと。そのためにビジョンはマネジメント上、必要不可欠なものであるはずです。
リーダーにはビジョンを描き、ビジョンに導くことが求められます。企業の未来にとって大事なものは何か見極め、未来の状態を語り、企業の方向性を示して全ての人をコトに集中させる。現在から未来へと架け橋をつくり牽引することがリーダーの役割であるといえます。
<今回のQuestions>
以上が6回目のマネプロでお届けしたかったコンテンツでした!
いかがでしたでしょうか?
ということでマネプロ恒例、最後の問いです。
今回のテーマを通じて、リーダーやマネージャーの方々に問いかけたい4つの質問を選びました。忙しい皆さんの思考の整理と、新たな行動の後押しになれますように!
※「自分はこう考える」「自分ならこれを問いかける」という考えはぜひTwitterにて「#マネプロ」を付けてつぶやいていただけたら嬉しいです!
<次回にむけて>
今回のマネプロではビジョンをテーマにお伝えしてきました。
第4回でお伝えした通り第5,6,7回は企業理念を伝える切り口であるMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)について一つずつお届けして参ります。
ビジョンもミッションも実現していくものとして説明してきましたが、実現にむけて成功確率を高めるために組織として体現していきたい思考・行動がバリューの話につながっていきます。
というわけで、次回のテーマはバリュー。
MVV編の締めくくりですね。
次回は2週間後の水曜日。
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今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
読者のみなさんと共にマネジメントの進化を探求できれば何よりです。Twitterのフォロリツ大歓迎です!DMでの感想も是非!(@tsubot0905)
noteで取り上げた内容について、みなさんの持論や新たな問いかけの視点をもらうことでマネジメントの探求がもっと楽しくなるはず。ですので、みなさんからのリアクションを心待ちにしております。よろしくお願いします!