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介護について思ったこと⑫コロナ感染・高齢者「原則入院」見直し に関して

 初めて、読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
 臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。

 いつも読んでくださる方は、ありがとうございます。
 そのおかげで、こうして書き続けることができています。


(この「介護について、思ったこと」を、いつも読んでくださっている方は、『感染拡大』から読んでいただければ、繰り返しが避けられるかと思います)。

自己紹介

 私は、元・家族介護者でした。介護中に、当事者が納得できるような、介護者への心理的支援が足りないと思い、生意気かもしれませんが、自分でも専門家になろうと考え、勉強し、学校へ入り、2014年に臨床心理士になりました。2019年には公認心理師の資格も取りました。

 さらに、家族介護者の心理的支援のための「介護者相談」を始めて、ありがたいことに9年目になりました。

(よろしかったら、このマガジン↓を読んでもらえたら、これまでの詳細は分かるかと思います)。

介護について、思ったこと

 このnoteは、家族介護者に向けて、もしくは介護の専門家に対して、少しでも役に立つようにと考えて、始めました。

 もし、よろしければ、他の記事にも目を通していただければ、ありがたいのですが、基本的には、現在、話題になっていることよりも、もう少し一般的な内容を伝えたいと思って、書いてきました。

 ただ、ある出来事があり、その報道によって、改めて思うことがありましたので、もしかしたら差し出がましいことかもしれませんが、それにについて考えたことを、お伝えしようと思いました。
 よろしかったら、読んでいただければ、幸いです。

感染拡大

 2021年の年末には、新規感染者が減少したものの、2022年の年明けから、一気に感染は拡大し、ピークアウトという言葉が繰り返し言われながら、基本的には、高止まりのままで、4月には、再拡大の傾向になってしまっています。

死亡したのは80代の男女。

 最近、死亡者数も、感染者数の拡大に比例するように拡大傾向なのですが、それでも、65歳以上の高齢者が亡くなった場合は、かなり淡々と報道されるようになったと思うのは、考え過ぎでしょうか。

高齢者「原則入院 」見直し

 そういう状況の中、気になるニュースを知りました。

 これまでは新型コロナウイルスに感染した高齢者は、「原則入院」でした。
 それを見直すことが議論されているらしいのです。

 その理由の一つとして、フレイルが挙げられていました。

 高齢者が新型コロナ感染で入院した場合、数日間であっても、身体機能や認知機能を低下させるリスクがある。コロナ病棟の看護師が介助に不慣れだったり、日々の歩行訓練などをできなかったりするためだ。第6波では、入院後のフレイル進行により、コロナの病状が収まった後、介護をより必要とする別の施設に移る高齢者が目立った。

 確かに年齢が高くなるほど、ほんの数日の入院で、さまざまな機能が衰えるのは自然だと思います。フレイルは、まだ新しい概念で、要介護状態と、健康であることの中間と言われていますが、それは、老化とどう違うのか。そして、この概念の必要性も、理解力の不足のせいか、正直、私にはまだ分かりません。

 ただ、もしも衰えたとしても、その後、体力が回復し、本人が望んだ上で適切なリハビリなどに取り組めば、身体機能が再び回復する可能性もあるはずです。

 フレイルを防ぐため、と入院せず、新型コロナウイルス感染により亡くなったとすれば、それは本末転倒に思えます。

死亡のリスク

 現在、治療法が、完全に確立されていない新型コロナウイルスに関しては、まずは、死亡を防ぐことが最優先されるものだと思っていました。

 軽症から急変したり、連絡が取れないまま発見時に死亡していたりと昨年夏の「第5波」と同じ状況が繰り返されている。ただ、「第6波」がそれまでと異なるのは、高齢者が多くを占める点だ。

 新型コロナウイルス感染患者は、重症化かどうかを見定めるのが困難で、それだけに急変する患者をどうするか、が議論されてきたはずでした。特に「第6波」が収まりきっていないまま、「第7波」に突入するかもしれない現在でも、感染した場合の最も避けるべきは、死亡のリスクであることは変わらないと思います。

 そのため高齢者は、重症化しやすく、上記の記事のように自宅療養で死亡する人が多いとすれば、「原則入院を維持する」ということになるのが、とても自然なように思います。

施設の状況

 一方、「高齢者施設の運営者からは『原則入院を維持してほしい』という意見も聞く」。有志の1人、釜萢敏・日本医師会常任理事はそう明かした。多くの施設が隔離できる状態になく、十分な治療をすることも難しいためだ。

 高齢者施設の中で感染が広がれば、ここでは職員が感染したという例が挙げられていますが、そうなれば、感染した場合の死亡リスクの高い高齢者にも感染する可能性が、当然高くなるはずです。

 提言をまとめた武藤香織・東京大医科学研究所教授は「入院しないと治療が困難な高齢者を入院させられる体制を維持するためには、原則入院を目指す方針では難しい」と話す。

「原則入院」を避けるとすれば、感染しても、施設、もしくは自宅療養に移行することを推奨していると、考えられます。

 急激な重症化に対応し、死亡リスクを下げるための「原則入院」だったと理解していますが、こうした提言がされる背景には、私が無知なだけで、入院しないと治療が困難な高齢者と、入院が必要でない感染した高齢者を、正確に診断できるようになったのでしょうか。それならば、筋が通った提言だと思います。

2022年2月の状況

 鹿野院長は「感染から2、3週間かけて亡くなっている。医学的には重症なのに、新型コロナの分類では軽症。数字のマジックだ」と指摘する。
 医療逼迫の現状を踏まえ、国は高齢者施設内での療養を推奨しており、陽性の職員が陽性の入所者をみる「陽陽介護」が発生。鹿野院長は「施設は救急要請しづらい状況で、弱っていく入所者の心臓が止まり慌てて救急車を呼んでも手遅れ。先進国の医療とは思えない地獄絵図だ」と話す。

 この記事は2022年2月に書かれたのですが、この状況が劇的に改善したという話を、私が情報弱者のせいか、聞いたことがありません。

 もし、改善していなければ、「高齢者施設内での療養を推奨」するよりも、入院して治療できる体制をもっと整える。つまりは、治療可能な病床数を増やす、ということが、今でも求められているように思えます。

専門家の意見

 専門家らと意見交換をした日本プライマリ・ケア連合学会の草場鉄周理事長は「療養させられるかは、施設の状況によって異なるだろう」と指摘。それでも「認知症になるよりも、住み慣れた場所で最期を迎えたいという人もいるので、それを支援する枠組みはあってほしい」と訴える。

 この意見の真意が伝わりにくいのは、記事にする中で、何かが抜け落ちてしまったのかもしれません。

 ただ、コロナ感染という状況に関して、認知症の話が出てくるのが分かりませんでした。新型コロナウイルスに感染し、入院することで、認知症発症のリスクがかなり高まるという医学的な知見があれば別なのですが、ここで「認知症が発症するか」「住み慣れた場所で最期を迎えるのか」という2者択一を選ばされるようになっているのは、かなり乱暴な議論のように思います。

 この記事の中の発言は、高齢者は、コロナに感染したら、自宅で最期を迎えることも考えてほしい、というようにも伝わってしまいますが、それは、こちらの理解が浅いせいでしょうか。

 まずは、今の時点でも、死亡者を減らすために治療体制をどうすればいいのか、という議論が先のように思います。

専門家組織のあるメンバーは「高齢者の治療の問題だけでなく、みとりのあり方を含めた踏み込んだ議論が必要だ」と話した。

 ましてや、この議論は、コロナウイルス感染と直接、関係があるとは思えません。
 助かる命なのに、医療対策が不適切なため、死亡してしまった場合には、「みとりのあり方を議論」する前に、どうすれば助かる命を増やせるか?を検討する方が、先だと思いますが、間違っているでしょうか。

高齢者の命

 特に「第6波」になってからの死亡者数は、急速に増加しています。

試算は22年4月20日までの累計値で、80歳以上が3097人と大部分を占める。40~59歳は138人、60代は326人、70代は778人になると推計した。

 80歳以上でも、90歳以上でも、コロナ感染で亡くなっていいとは思えません。

 そこから、さらに5年、もしくは10年生きる可能性がある場合も考えられます。そうでないとしても、新型コロナウイルスに感染して症状が悪化して、そこから治療によって治る可能性があるのならば、年齢を問わず、その命を救うべきだと思います。

 高齢者であっても、今生きていて、さらに生きられる可能性がある命を大事にしようとしないのは、先進国とはいえないはずです。

 長く生きているから、と切り捨てるような「思想」が当たり前になってしまったら、これから先、病気になったら、弱ったら、と切り捨てられる人が、より多くなるきっかけになりかねませんので、これからでも、医療体制をさらに整えることを、目指すべきだと思っています。

(この作品↑はフィクションとはいえ、現場で働く医師でもある著者が執筆し、読後の印象は、とにかく患者を治療することに文字通り心身を削る努力をしている姿が描かれているように感じました。医療者のためにも、医療環境を整えることがとても重要だということはわかったようにも思います)。

優生思想

 3年目になるコロナ禍において、医療現場も、介護現場も、想像もできないほどの大変さがあると思います。

 その中で、「原則入院」の見直し、という議論も出てきているのかもしれません。

 でも、ここで、まるで「高齢者の切り捨て」のようにも思える政策をとってしまったら、それは、現在のコロナ対策だけでなく、将来へ「ソフトな優生思想」を踏み出す第一歩にも繋がりかねませんので、慎重に議論していただきたいと思っています。





(他にも、介護のことを、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。



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越智誠  臨床心理士/公認心理師  『家族介護者支援note』
 この記事を読んでくださり、ありがとうございました。もし、お役に立ったり、面白いと感じたりしたとき、よろしかったら、無理のない範囲でサポートをしていただければ、と思っています。この『家族介護者支援note』を書き続けるための力になります。  よろしくお願いいたします。

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