「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」⑦自分がコントロールできることをする。
今は、コロナ禍で、不安が続いているかもしれませんが、介護をされている方は、こうした日常になる前からも、毎日、ずっと気が抜けない時間が続いていると思います。
介護が始まってから、いつ終わりが来るか分からない毎日が、ずっと継続している感覚だけは、周囲の状況がどうなっても、もしかしたら、変わらないのかもしれません。
私は、臨床心理士/公認心理師の越智誠(おちまこと)と申します。家族介護者の心理的支援を仕事にしています。いつも読んでくださる方には、同じことの繰り返しになり、申し訳ないのですが、私も家族の介護をしていた時期があります。(リンクあり)。その時間の中で、介護をされている方のこころのサポートが必要だと考え、臨床心理士になりました。
このnoteの記事も、もし、できたら、家族介護者のために、少しでもお役に立てれば、と始めて、続けています。
介護生活での気持ちの状態は、説明しがたい大変さもあると推察することしかできないのですが、それでも、ほんの少しでも、負担感や、ストレスを減らせるかもしれない方法は、お伝えする努力はしていきたいと思っています。
時間的にも余裕がなく、どこかへ出かけることも出来ない場合がほとんどだと思いますが、この「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」シリーズでは、何回かに分けて、お金も時間も手間もなるべくかけずに、少しでも気持ちを楽にする方法を考えていきたいと思います。少しでも気が向いたら、試してみてもらえたら、幸いです。
「自分がコントロールできることをする」
「介護の大変さを、少しでも、やわらげる方法」シリーズ第7回目のテーマは、「自分がコントロールできることをする」です。
これは、ちょっと聞いただけだとわかりにくいことだと思います。
最初は、この本の中に出ていたことを読み、私自身もそれほど気がついていないことだったのですが、実際に言葉にしてもらうと、実は大事なことではないか、と思うようになりました。
たとえば、こういう方法です。
ストレスを和らげるためには、どんなに小さくても、何かこちらでコントロールできるものを見つけます。毎週、決まった晩に、友人と食事に出かける、また、邪魔されずに、あるテレビ番組を見るのも良いでしょう。介護を代わってくれる誰かに、毎日、または毎週の予めわかっている時間に来てもらって、少し当てにさせてもらってはいかがでしょうか。
それは、つまり、以下のような介護環境だから、より必要になるという事です。
介護を担うあらゆる人にとって、それは、以前のままの愛する人を失い、それまでの関係が失せ、夜安らかに眠るという基本的な欲求を奪われ、夢と目標を失い、人生のその段階で当然得られるべき余暇の時をなくし、自分自身の人生を自分の手で思うように動かすことができなくなることにほぼ等しいのです。この次々と訪れる喪失によって、介護者が弱っていくのは容易に理解できますが、外部の人間にはそれがほとんどわからないのです。
家族介護者であれば、以上のような表現に納得がいくと思うのですが、あらゆることが、自分の意志で選ぶことが難しくなります。ある意味では、すべてのことに巻き込まれるような時間になったという感触があるのではないでしょうか。
巻き込まれるような状況の中で出来ること
介護が始まったばかりであれば、そこに適応するだけで精一杯で、おそらくは、その環境に慣れていくことが、介護をしていく、ということでもあると、思います。
ただ、その時期を過ぎて、さらに長く介護をしていると、いつ終わるかわからないということで、拘束感が続き、それに加えて、自分の思い通りにいかないことが当たり前になりがちです。
そういう時間の中で、自分で状況をコントロールできないのは、仕方がなく、ある意味で、そこに慣れていくことで、負担感が減ると思われるのかもしれません。だから、自分で何かをコントロールするといったことを、いったんはあきらめる、というのが、多くの介護者が考えていることのようにも、思います。
ただ、たとえば、いつ終わるか分からない介護を続けていることで、ずっと緊張を続けることになりがちで、その方が気持ちとしては楽だと思いがちですが、毎日の生活の中で、ほんの少しでも(1分でも)リラックスする時間を作ったほうが、ストレスに対して強くなる、と言われています。
ですから、介護を始めて慣れるまでは余裕もないので、巻き込まれるような毎日で、ずっとコントロールがきかない状態は仕方がない、と思います。ただ、介護する生活に、少しでも慣れてきた時に、1日のうちにわずかでも、「自分がコントロールできることをする」ことで、負担感が減る可能性があります。
それは、具体的には、家族介護者の周囲の方の手助けとして、こんな方法があげられています。
介護しないでも、できることはいろいろあります。介護者と夕食に出かける日をきちんと決めてはどうでしょう。介護者の家を訪ねて、勝ち負けがはっきりするトランプやボードゲームで遊ぶのも良いでしょう。曖昧さの渦中にいると、どんなにささやかであれ、明瞭さによって気持ちが落ち着くものです。
誰かの助けを借りる、ということが難しい場合には、たとえば、デイサービスなどの時間を使って、自分自身で何か結果が出るようなゲーム的なものをしたり、毎日、この時間に決まったことをしてみる、を試してみては、どうでしょうか。
キーワードは、「どんなに小さくても、何かこちらでコントロールできるものを見つけます」と、「どんなにささやかであれ、明瞭さによって気持ちが落ち着くものです」だと思います。
もちろん疲労が強い場合は、休養を優先させ、無理をする必要はないのですが、同じ時間に、とてもささやかでいいので、自分のためのことをする、ということで、自分の生きている時間は、確かにコントロールできている、という意識が持て、それが、思ったより負担感を減らしてくれるのかもしれません。
今の時間で、何かできることを考える
さらには、これは、場合によっては難しいことだと思いますが、少し先のことを考えるという方法です。
介護に追われるというよりは、介護で毎日が過ぎてしまって、それで24時間365日が終わっていく、というのが、家族介護者の実感だと思います。そして、とにかく疲労感が蓄積し、どうして疲れているのかも分からない、といった感覚になっているのかもしれません。
ただ、たとえば、何かのおりに、「介護が終わったら、こんなことをしたい」といった気持ちが、ふっと出てくることがあるとすれば、それは、介護を継続していく中で、あきらめざるをえなかったような思いであるはずで、それは、いったんは、あきらめないと介護を続けるのが、かえって辛かったことだと思います。
ただ、介護生活に少し慣れて、疲労や疲労感は蓄積する一方で、それでも、「介護が終わったら、これをしたい」ということがある場合は、「終わったら」ではなく、「今の介護をしながら始める」と、考えてみるのは、どうでしょうか。
もちろん、そんなことを考えただけで疲れてしまう、といった場合には、やめたほうが、いいのですが、それでも「やりたい」気持ちがある時のみ、今の介護の中で、ほんの少しずつ、1分でも2分でも、その「やりたいこと」に向かって、できたら定期的に考えたり、何かを少しずつ具体的に取り組むことを、再開されるのも、いいのかもしれません。
それをすること自体が苦痛になってしまったら、本末転倒ですが、どうして、このようなことを試みることを提案しているかといえば、介護をしながらでも、自分のために、ほんのわずかでも、時間と手間ひまを使う、といったことをされることで、「自分がコントロールできている手応え」が出てくる可能性があるからです。
そのことで、100%介護のためだけの時間ではなくなるので、ほんの少しだけでも、拘束感が減る可能性もあります。もし、よろしかったら、ご自身の疲労感などに注意をしながら、試してみていただけると、幸いです。
個人的な記憶
今回のことは、他の方の著書「認知症の人を愛すること」を全面的に参考にして書いてきました。最初は、少し意外でしたが、自己コントロール感を少しでも取り戻す時間を持つことが、負担感を減らすかもしれない、ということを教えられました。それは気がつかされてみると、本当にそうかもしれないと思えることです。
負担がない限りにおいて、それは試みる価値はあると思いました。
今回、そうしたことを考えていて、自分の記憶の意味が、少し違ってきたようなことがありました。
みなさまにお伝えしようとして、こうして記事を書いていますが、家族介護者であった時も、毎日、少なくとも、自分自身に今日あったようなことは書いていました。それも、母親の病院へ通って、帰ってきて、義母の介護に携わり、夜中の担当なので、介護の隙間時間に、毎日、夜中に書く、ということをしていました。
それは、書くことに対して、本当にダメになるくらい技術が落ちないようにしたい、といった気持ちがありましたが、今、考えると、それは毎日、同じことを繰り返すことで、自分のコントロールができる時間を少しでも持っていたい、という気持ちもあったのかもしれない、と思いました。
今回は、以上です。
少しでも、負担感が減ればいいのですが、もしも、合わない場合は、他の方法も試していただければ、幸いです。「介護の大変さを、少しでもやわらげる方法」(リンクあり)。
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