「介護について、思ったこと」㉑「介護離職」への別の視点。
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初めて、読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
臨床心理士/公認心理師の越智誠(おちまこと)と申します。
介護について、思ったこと
このnoteは、家族介護者に向けて、もしくは介護の専門家に対して、少しでも役に立つようにと考えて、始めました。
もし、よろしければ、他の記事にも目を通していただければ、ありがたいのですが、基本的には、現在、話題になっていることよりも、もう少し一般的な内容を伝えたいと思って、書いてきました。
ただ、その時々で、改めて気になることがあると、もしかしたら差し出がましいことかもしれませんが、それについて考えたことを、お伝えしようと思いました。
よろしかったら、読んでいただければ、幸いです。
今回は、「介護離職」について、実は見落としていた点があるのではないか、と改めて思いましたので、そのことについて紹介させてもらいたいと考えました。
介護離職
2015年に、政策として掲げられた「介護離職ゼロ」という目標が、どれだけ実現したかというと、その目標は「はるか彼方のまま」なのは変わらないようです。
この介護離職を防ぐために、「介護休業制度」も制定され、それは進歩だと思いますが、介護休業は「93日」しかありません。
まず「介護に直面しても仕事を続ける」意識が重要、という精神論から語られていることに、ちょっとした驚きもあるのですが、介護休業も「今後、仕事と介護を両立するために体制を整えるための期間」ですから、この間に施設に入所してもらうか。デイサービスや、ヘルパーや、それも、仕事と両立するためでしたら、夕方に終了する通常のデイサービスでは不可能でしょうし、さらに延長して利用するとなると、かなりの資金が必要になります。
これらが可能になれば、家族介護者としてかなり無理をしながらでも「仕事との両立」はできますが、資金が用意できないなど、条件が整わなければ無理。ということを示すように、介護離職が大幅に減ることはありませんでした。
方針の変更
その方針が変わったのは2019年でした。
そして、この「介護離職ゼロ」の目標も、それぞれの介護者が、ビジネスパーソンとしても、介護者としても、なるべく後悔のないように、といった方向ではなく、あくまでも「労働力」の側面からのアプローチのようです。
介護で仕事をやめ、介護という「賃金は出ない労働」に専念したとしても、そのことが、まるで「労働」として価値がないかのように扱われることも、問題の一つだと思うのですが、そのことは、あまり問われていないようです。
それ自体が、介護離職後、介護が終わって、復職をする際の障壁になっていると思うのですが。
介護離職をしない
こうした状況は、私自身も専門家になっているので、微力ながら責任もあり申し訳ないのですが、今も、この見られ方は変わっていないようです。
こうした事↑は、とても賛同できる意見だと思います。
家族として、介護という「実践」に24時間・365日体制で、何年関わったとしても、何らかの介護の専門家の「受験資格」にもなりません。
個人的には妻と2人で、19年介護をしていましたから、半分で割ったとして、9年半の「介護経験」になるのですが、このことが、何の評価もされないことは、復職が難しい、といった経済的なことだけではなく、心理的な負担にも関わるのではないかと改めて思ったのは、最近、読んだ書籍の影響です。
アイディンティティの危機
「介護離職」とは、経済的に苦しくなった上に、介護負担がのしかかる。というだけではなく、それまで自分のアイディンティティであった「仕事」を失うことにより、精神的な危機を迎えやすい、ということもあるのだと思います。
しかも、一度、仕事を辞めてしまったあとは、介護をしている時期が、賃金が出ないとはいえ、「労働」として、あまりにも不当な評価をされていることもあり、アイデンティティでもあった仕事に「復帰」する、という「再出発」の希望すらないとすれば、より追い詰められやすくなるといえそうです。
介護離職とは、アイデンティティの危機でもある、という視点を持つことによって、とにかく介護離職をさせない、といった(実質的には、そのための支援が不十分であれば、掛け声にすぎない)見方だけではなく、介護終了後に復職を希望する場合に、社会として、その復職について、どう考えていくか。
もしくは、介護離職した際の、様々な心理的な危険性の一つとして、アイデンティティの危機も視野に入れることによって、家族介護者の支援が、少しでも有効になるのではないかと思いますが、どうでしょうか。
(他にも、いろいろと介護について、書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。
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