介護について、思ったこと⑤「ヤングケアラー」
いつも読んでくださる方は、ありがとうございます。
そのおかげで、こうして書き続けることができています。
初めて、読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
臨床心理士/公認心理師の越智誠(おちまこと)と申します。
元・家族介護者ですが、介護中に、介護者への心理的支援が足りないと思い、生意気かもしれませんが、自分で専門家になろうと考え、勉強し、学校へ入り、2014年に臨床心理士になりました。2019年には公認心理師の資格も取りました。
さらに、家族介護者の心理的支援のための「介護者相談」を始めて、ありがたいことに8年目になりました。
(よろしかったら、このマガジン↓を読んでもらえたら、これまでの詳細は分かるかと思います)。
介護について、思ったこと
このnoteは、家族介護者に向けて、もしくは介護の専門家に対して、少しでも役に立つようにと考えて、始めました。
もし、よろしければ、他の記事にも目を通していただければ、ありがたいのですが、これまでは、現在、話題になっていることよりも、もう少し一般的な内容を伝えたいと思って、書いてきました。
ただ、今回も、前回と同じくテレビ番組を見ていて、いろいろと気になったことがあったので、私が語る資格もなく、能力も足りないかもしれませんが、お伝えしようと思いました。
もし、よろしければ、読んでいただければ、ありがたく思います。
「ヤングケアラー」という言葉
臨床心理士の資格を取得できた2014年から、紹介していただいて、「介護相談」で働き始められたのは幸運だったと思います。その後、そうした介護者の「相談窓口」がなかなか増えないのは、自分の力不足もあり申し訳ないのですが、なんだか焦りもありました。
同時に勉強不足でお恥ずかしいのですが、「ヤングケアラー」に独特の大変さがあると、改めて知ったのは、2018年の頃でした。10代や20代で介護をされている方々がいらっしゃるのは知っていても、その実情について、自分がどれだけ無知なのかを理解するようになりました。
どうすれば、こういう言葉が投げかけられなくなるのだろうか。そんなことを考えるようになりました。
私が担当させていただいている「介護者相談」には、年齢制限もなく、どなたであっても介護者であれば、(その地域の住民というルールはありますが)基本的には、ご利用いただけます。ただ、もし「ヤングケアラー」という定義に当てはまるような、若い介護者がいらっしゃっても、この「介護者相談」が、自分にも関係ある相談だ、と思ってくれないかもしれない、と感じています。それは、自分の様々な努力不足だとも思っています。
公開講演会
同じ2018年に、認知症に関するシンポジウムがあり、その登壇者の中に「ヤングケアラー」の元・当事者で、現在は「若年性認知症総合支援センター」で精神保健福祉士として働いている方の話が、とても説得力があったので、その人がアナウンスした公開講座にも行くことにしました。
こんなに若くして介護をされている方々が多くいることを、初めて目の当たりにして、そして、その言葉の端々に、こんな困難な状況の中で、それでも家族の介護をされていることはすごいことだと素直に思いましたし、そうした気持ちは、もっと年齢が上の方々の「介護者相談」の時と似ていました。
私は介護を始めたときは30代後半でした。もし、もっと若い時であれば、(勝手な想像で失礼ですが)さらに気持ちへのダメージは大きいだろうから、それでも介護をしている方々がいらっしゃることには、素直に敬意を感じました。ただ、同時に、その個別な負担に対して、適切な支援は本当に必要だと思いました。
クローズアップ現代+
かなり遅くなりましたが、ずっと録画されていた「クローズアップ現代+」を見ました。今年になって、国が初めて、中高生で介護を担っている方々の調査が行われ、「ヤングケアラー」という存在に注目も集まったため、こうしたテレビ番組も放映されるようになったのだと思います。
こうして、10代で、介護に関わっている人たちがいる、ということ自体が、注目され、少しでも支援が考えられるようになるのは、とても大事なことだと思いました。だからこそ、こうして番組が作られ、取材もきちんと行われて放映されることにも、とても意味があると感じました。
気になったこと
ただ、これはそうしたプラス面も大きいのですが、この番組の影響を考えると、少し不安になることもありました。これは、私が言うような資格もないのですが、今後を考えると、二つ気になる点がありました。
一つ目は、「ヤングケアラー」を無理をして、見つけ出さないでほしい、ということです。
国の調査によると、中学生であればクラスに2人はいる、といった統計結果が出ています。そして、家族を介護していることによって、さまざまな困難を抱えている人がいるのは間違いないのですが、誰が「ヤングケアラー」なのかを、無理に見つけ出すことは避けたほうがいいと思っています。
当事者の方々が、自分はヤングケアラーかもしれない。そして、何かしらの支援を求めてもいいのでは、と自然に思え、自ら支援を求められるような環境を作っていただければ、と思います。「ヤングケアラー」というのは、下手をすれば、今後、マイナスのラベリングになる(例えば同級生の間で)可能性も考えられるので、慎重にしていただきたいと、勝手ながら思っています。
「クローズアップ現代+」でも、専門家のこうした言葉がありました。
前出の「ヤングケアラー ——介護を担う子ども・若者の現実」でも、当事者の方々のこうした言葉があります。
イギリスの制度の紹介について
もう一つ気になった点は、「クローズアップ現代+」でのイギリスの制度の紹介の仕方について、です。
ただ、イギリスは、「介護者支援」については「先進国」であって、その法律制定の前、1990年代には「介護者支援法」が制定されています。元々の、「介護者支援」(ケアラー支援)があってこそ、「ヤングケアラー」への支援もよりスムーズに発展してきたと考えられるのではないでしょうか。そこに触れてくれれば、さらに議論も深まるのでは、と思いました。
「介護者支援」については、私も、微力ながらも関わっているのですが、こうした「紹介のされ方」を見ると、自分の努力不足や、力足らずを感じました。
ヤングアダルトケアラー
関係者の方から、指摘されて初めて知ったのですが、私も「元ヤン」らしいです。
日本では、30代の介護者は「ヤングアダルトケアラー」とも呼ばれるらしいです。そうであれば、私も30代で介護者になったので、今は介護を終えていますし「元・ヤングアダルトケアラー」でもあるようです。
(イギリスと日本では「ヤングケアラー」の定義は違い、イギリスでは、30代は「ヤングケアラー」の範囲に入らないらしいです。それは、「介護者支援法」があり、「介護者」は支援されているからではないか、と思いました)。
ただ、日本で30代までが「ヤングアダルト」と区分された意味合いを考えたときに、すぐに思い浮かんだ言葉が「孤立」でした。
30代で介護を始めた時、周囲の同世代には、ほぼ誰もいませんでした。特に年長者からは、どうして、あなたが介護をするんですか?といったことを言われたこともありました。介護離職もしましたから、善意とはいえ、結果として責められるような言動を向けられたこともありました。
確かにその時に求めていたのは、支援の前に理解だったことを思い出します。
理解は、孤立感を減らすように思います。
30代の私でさえ、孤立感があったのですから、それが20代、10代であれば、どれだけの孤立感があるのか?と考えると、その負担感の重さは想像が難しいくらいだと思いますし、その上で介護を継続されているとすれば、それは本当に尊い行為だと思います。
その上で、やはり「適切な支援」が、本人の望むタイミングなどで「選べる環境」になれば、と思います。さらに、より広く、より正確に「理解」されるようになれば、とも思っていますし、自分も支援者の一人として、それが可能になるよう、努力していきたいと考えています。
疑問点や、ご意見などございまいしたら、お聞かせくださると、ありがたく思います。
(他にも介護について、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、うれしく思います)。
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