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2020年12月の記事一覧
【twilight 第8話】余白の目立つ襖絵
「あー、もう、遅いなぁ前の車」
ハンドルを握りながら奥さんがヤキモキしている。
「大切なものでも運んでるんだよ、たぶん」
助手席でそう返すセンセイに奥さんが詰め寄る。
「何よ、大切なものって?」
「んー、たとえば、2段づくりのバースデーケーキとか」
「そんなことあるわけないじゃないの」
センセイの空想は不採用だったようだ。
ガラガラの国道沿いに立つ銀杏並木が降らせた葉が、フロントガラスを叩く。
【twilight 第7話】 リバティのノート
「あなたの個性派指数は…50!よくいるフツーの人です!」
そんなもんだろうなぁと、スマホの液晶に出た診断結果を見ているセンセイに
「50かぁ…バランス取れてるってことじゃん。いいなぁ。オレなんて85もあったよ。変わり者だって書いてあってさ、やっぱそうなのかなぁオレって…」
困り顔の向こうで得意になっているリバティ。センセイはそれに気づいている。
「オレ、もう一回やってみるよ」
とセンセイからスマ
【twilight 第6話】 ヒカリ 美術準備室
「オェッ…」
歯磨きをしながら時折りえずくようになったのは、いつからだろうか。
子供のころはそんなことなかったよなぁ。年齢的に、オジサンに片足突っ込み始めたくらいからのような…、分からない。鏡の前に立つセンセイは、顔の下半分を泡だらけに、そんなことを考えていた。
「まったく…それ、なんとかならないの?」
センセイの胸の内を見透かしたかのようなタイミングで、あきれて笑う奥さん。
「ひは…そほひはれ
【twilight 第5話】ター坊 月のランプ
月をかたどったランプの下に並んだ頭が2つ。カウンターの上には芋焼酎のお湯割りが置かれていたが、酒に弱い2人のコップの中身は一向に減る気色を見せない。
「まぁでも、そんなにうまくいかないよな」
一杯目に飲み終えたビールに赤らんだ顔で、そう話すター坊のこれまでの人生がうまくいっていたことは、センセイの知る限りにおいて、ほとんど無い。
「毎日、朝早くから夜遅くまで働いてさ、帰ったら寝るだけ。こんなの
【twilight 第4話】川面の色
市街地を流れる川に架かる橋の上から、センセイは川面をのぞきこんでいた。真下に映り込む真っ逆さまの世界は、時折り風が運ぶさざなみの上で不安定に揺れた。
「純粋な水色なんて、どこにもないのになぁ」
センセイは、子供の頃にしたお絵描きを思い出していた。水を描くときに使う色は決まって水色。川を描くときもきっと、そうしていたに違いない。
しかし、こうやってまじまじと川面を見てみれば、笑ってしまうくらい絵の
【twilight 第3話】 リバティ 流れのかけ算
「カツハヤシでお願いします」
「あ、じゃあ僕もそれで」
優柔不断なセンセイはだいたいにおいて、連れ合いと同じモノを注文することになる。
そのため、連れ合いが優柔不断な場合は困ったことになる。
刻々と過ぎる時間に、遅々として進まない注文の決定。お互いにメニュー表をパラパラ、ウェイターの足音にビクビク。早くしなければ…。そんなことがこれまでにも度々あった。
1日空いていた休日の予定をどう埋めるか、困