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書評

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2021年3月の記事一覧

寛容へのステップ ——保坂和志『読書実録』について

寛容へのステップ ——保坂和志『読書実録』について

 読み終えた文庫本の裏表紙を覗くと簡単なあらすじが載っていることがある。簡潔で要を得た説明にことさら異を唱える気にもならないが、目を通してみるとどこか据わりの悪い感触が過ぎる。具体的に何が拙いというのでもない。自分が要約を書けばもっとひどいものになるだろうとも思う。それでも漠然とした、半ば無意識下の違和感がどうしても拭えない。あるいは、こういう書評などを書いているとしばしば起こる、言い表そうとして

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性的ゾンビ 遠野遥『破局』について

性的ゾンビ 遠野遥『破局』について

 自分の側に社会秩序や規範があり、正しく悪を裁こうとしているまさにそのとき、人は最も暴力的に振る舞うものである。それが顕著になるのはたとえば居合わせた群衆によって痴漢が取り押さえられるような場面で、加害者が逃げる素振りを見せようものなら群衆は手段を選ばない。群像2020年6月号に掲載された著者のエッセイ『記憶』ではその場面が次のように描かれている。

 作者は取り押さえられる痴漢の加害者を集団リン

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怖い話 ——遠野遥『改良』について

怖い話 ——遠野遥『改良』について

 一般に、子供は大人よりはるかに強い視力を持っている。電子機器の発展が進み全体として近視の傾向にある現代日本であっても事情は同じで、見えないことに鈍感になってしまった大人をよそに子供たちはものをよく見ている。だからこそ、私たちには何でもない昏がりの死角が、ふだん見え過ぎるほど見える目を持った子供たちには怖ろしいのである。得体の知れない黒い影が闇の中を横ぎりはしないかと不安になるからだ。そしてこの作

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