読書記録「Carver's Dozen」
川口市出身の自称読書家 川口竜也です!
今回読んだのは、レイモンド・カーヴァー 村上春樹編・訳「Carver's Dozen レイモンド・カーヴァー傑作選」中央公論新社 (1997) です!
・あらすじ
3月30日、東京読書倶楽部の読書会にて紹介いただき、著者の名前と本著を知る。
先日の京都は出町柳の古書店 エルカミノにて購入。「状態が悪いですが大丈夫ですか」と店主に言われた。「構わない」と返答した。
読書会で紹介された人は、ご自身も物書きをしているらしく、「とても参考にしている著者だ」と語っていた。
冒頭に引用した通り、本作品は「村上版ベスト・セレクション」として、いくつかの短篇やエッセイが収録されている。
私自身が一番印象に残った作品でいうと、「ささやかだけれど、役にたつこと(A Small, Good Thing)」。それから、エッセイ「父の肖像(My Father’s Life)」。
「ささやかだけれど、役にたつこと」では、交通事故で息子を亡くした夫婦と、その息子のために誕生日ケーキを焼いたパン屋の主人が描かれている。
病院で昏睡状態(医者はそれを昏睡とは認めなかったが)の息子を見守る間、いつケーキを受け取りに来るのか、何度も電話するパン屋の主人。
息子が危篤状態(医者はすぐにでも回復すると言った)にも関わらず、無遠慮にも電話を掛けてくるパン屋の主人。夫婦は彼のことを「悪魔」と呼んだ。
注文した誕生日ケーキを取りに来ない時点で、家族に「何か良くないことが起きた」のだと察するべきかもしれない。だが正直な話、そんなこと言われても、でもある。
息子の亡き後、ようやくケーキを頼んだことを思い出した夫婦。思いの丈をぶち撒け、パン屋の主人にこう諭される。
「父の肖像」というエッセイでは、アルコール依存症に悩む自分の姿を、亡き父の姿に重ね合わせている。
レイモンド・カーヴァーは父も二世も酒に溺れていた時期があった。そのせいで、失業も経験している。
先の読書会の紹介者曰く、小説家であれ物書きというものは、どこか欠陥があるもので、だからこそ言葉を紡ぐのだと語る。
短編集あるあるかもしれないが、12篇も作品があると、この本からこういうものを得た、感情を覚えたと一言で言うのが難しい。
ただ少なくとも、レイモンド・カーヴァーの作品自体はじめてで、短篇や詩をほんの12篇読んだに過ぎないのだが、「私もこの作家好きだな」と思っている。
あまり愉快とは言えないテーマや物語が多いのだが、不思議と声に出して読みたい感じがするし、実際にしていた。
私は村上春樹さんの作品・翻訳を読む時に、「上質なワインを飲んだかのよう」と語ることが多い。
その心は、「とても良いものを味わったのだけれども、果たして自分が何を味わったのか、具体的に説明ができない」である。
その文章が、レイモンド・カーヴァーの「無駄なことを一切排除した文体」とマッチしている(彼のことを「ミニマリスト」と呼ぶ人もいるらしい)。
ゆえに好きだと思った。他の作品も読んでみたいと思った次第。それではまた次回!
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