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印象深い一皿/イヴォワール
初めて食べたのにホッとするのは何故か
初めて食べたのにホッとする皿とたまに出会う。この安心する感覚を誰かに説明するのはとても難しい。もちろん旨い、のだが、それだけではない。クラシックだったりトラディショナルだったりノスタルジックだったり、そんな表現でもない。懐かしさからくるホッとではなく、心が解れる感じの温かい皿なのだ。雑居ビルの急な階段を三階まで頑張って登りさえすれば、印象深い一皿を出す小さな
印象深い一皿/すずのき
旨い焼き魚のジューシーさはたまらない
焼き魚は嫌いじゃないけれども、町の定食屋さんでメニューにラインナップされていても積極的には選ばない。気がついたら、チキン南蛮定食やら生姜焼き定食やらミックスフライ定食やらを食べている。まだまだ若い証拠だと思いたい。けれども上手い具合に焼けた魚の一皿と出会うと、しみじみ旨いなあとうなってしまう。焼き魚を瑞々しいと表現するのは違和感があるのだけれど、結局、口に含
印象深い一皿/レストラン山内
旨いものを少しずつ。シンプルな幸せ
歳を重ねると食べられるものが少なくなる。それは健康上の問題のこともあるし、あるいは嗜好の変化に伴ってのこともある。結局のところ、人生に寿命があるように、旨いものを好きなだけ食べられる期間にも限りがあるのだ。切ない話だけれど、ある意味無限であることよりもメリハリがあって良いのかもしれない。このレストランは美味しいものをちょっとずつ出してくれる。料理人の手間がかか
印象深い一皿/ビストロクプレ
いつもある幸せは、案外気づかないが尊い
上手く説明できないけれども食べると安心してしまう、そんな一皿がある。例えば、この店のメニューにある仔羊フィレ肉プロヴァンス風は、美味しいとか素晴らしいとかいう表現の前に、なにやらホッとしてしまうのだ。とても控えめな褒めかたをすると、変わらず、という一言になるのかもしれない。いつもある、いつも同じ味、いつも満足する。そのいつもに対して、とても多くの努力がされ
印象深い一皿/ビストロヴィヴィエンヌ
パイ包み焼き、という言葉の魔力
パイ包み焼きが好き、という人とは間違いなく仲良しになれると思う。この愛してあまりある料理のスタイルにすっかり魅了されすぎて、気がついたら頼んだ料理がすべてパイに包まれていた、なんて経験は一度に限らない。その素晴らしさを十全に伝える自信はないが、上手なパイ包みはサクッとしていてパリッとしていてフワッとしていてギュッとしている。素晴らしい食感のそれには、味と香りが閉じ
印象深い一皿/まる富
旨さとはある意味我慢である、のかも
雲丹は美味しいに決まっていると思いたいし、牛肉は旨いの代表選手だ、と心から信じている。けれども、高級かつ美味なものを合わせて使ったからといって、出来上がる料理が素晴らしいとは限らない。むしろお互いの良さを消し合ってしまって、残念な皿になることも多い。しかし、神楽坂にあるこの店で出されたこれには唸ってしまった。ああ旨いなあと、口から漏れて出そうだった。ギュッと濃
印象深い一皿/妻恋坂けい吾
揚げたて天ぷらには、世界一かわいいあれを
自分の舌に合うという表現が相応しいかはわからないが、そう感じる店と出会えると、ただ嬉しい。湯島妻恋坂にあるここは、わたしにとってそんな場所の一つ。手打ちの麺類は蕎麦だけでなく冷麦もある。刺身や肉料理にしても、出しゃばることなく控えめなのにきちんと旨い。目の前でカラリと揚げられる天ぷらに、世界一かわいい大根おろしを添えて頬張ると、ああ旨い、と思わず口にして
印象深い一皿/青天みつはし
旨さの波を受け止める、うれしい悲鳴をあげる
旨い料理を出す店がある。そんなのはたくさんあるだろうと思いがちだが、衒いもなく旨さを前に押し出して矢継ぎ早に皿を提供する店は多くない。素晴らしい、と一皿に唸るだけじゃなく、あれ、これ旨いなあと心の中で幾度となく繰り返してしまう料理と出会えるのは、それこそ幸せなのだ。小さなカウンター、手洗いですら店外にあるこの店が供する料理には、旨さが漲っている。そして
印象深い一皿/コジコメ
そのパスタの旨さは、確か、と表現したい
秋トリュフのタヤリン。タヤリンがメニューにあるだけで心躍ってしまうのに、トリュフという4文字がそこに加わると、もう値段なんて見えない。この一皿をオーダーするために、他の皿を決めるという逆算がアタマの中で始まってしまう。魅惑の皿にこれほどまでに吸い寄せられるのは、覆い尽くすほどに削られたトリュフの香りはいうまでもなく、バターソースのぽってりとした旨さ、それを
印象深い一皿/ブノワ東京
サラダに凄みを感じてみるのは悪くない
杏さんのYouTubeで彼女がメニューにシーザーサラダを見つけたら食べるようにしていると話していて、素敵な趣味だ、コッソリ真似しようと思った。サラダが気に入っているというお店は何軒かある。今回紹介する一皿もまさにそれで、何度も何度も繰り返し食べている。が、飽きない。いつも美味しく、いつも満足して、そしていつもオーダーしてしまう。いつも自宅で作ってみたいなと思
印象深い一皿/御料理 心馬
腹いっぱいだとしても、食べたい〆の丼
鶏肉を小さく切ってあるのを見て心配になったのは内緒だ。炊き立ての新米を目の前で親子丼にしてくれる。親子丼とは大ぶりでジューシーな鶏肉の感覚と卵が作り出す幸福なイメージ。それを損なうのではないかと思った。食べてみるとまったくの杞憂だとわかる。もちろん親子丼なのだけれども、日本料理の〆の一品としての愉しさが押し寄せてくる。一口の中にすべてが納められるからこその旨
印象深い一皿/めしと、さけanno
料理に幻想を見ることができる、それはかなり幸せ
前菜盛り合わせ。阿武真亜子が作るご飯は行き届いている。季節感、味わい、ボリューム。それぞれ必要にして充分。店を構えて固定客もたくさんつく人気店。当然プロの料理人なのだが、最大限の賛辞の表現として、まったくそれを感じさせない。多くの人が家庭料理という言葉に抱くイメージを具現化しているからだ。そう、ある人は、家に帰るとこんなご飯が出ると嬉しいなと思い、
23年 俺様の胃袋 of the year (日本料理部門)
これでいいんだと胃袋が教えてくれる
適当。もちろんその場をつくろう、という意味の使いかたではない。安達直人は、旨い食事をするためにはちょうど良い場所だ。旬の食材、丁寧な調理、程よい量。大見えを切ったような食材を使わない代わりに、高級食材のオンパレードを出された席のような妙な疲れもない。余韻は軽く、けれども確実な満足感が得られる。これ以上は要らない、という意味で、冒頭の、それこそネガティブに捉えら