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復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】

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ただいま連載中。プロモーションムービーはこちらです。 https://youtu.be/m5nsuCQo1l8 主人公アルトゥールが仕えるネフィアル女神は、かつては正義とされて…
霧深い森を彷徨(さまよ)うかのような奥深いハイダークファンタジーです。 1ページあたりは2,000…
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#ファンタジー

復讐の女神ネフィアル 第1作目『ネフィアルの微笑』 第1話

復讐の女神ネフィアル 第1作目『ネフィアルの微笑』 第1話

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 暗い灰色ばかりが視界に入る街がある。ジェナーシア共和国の中部に位置する、大きな河川沿いの街だ。

 河川には様々な舟が行き交い、人々や物を流れに乗せて運ぶ。大抵は商用だが、単なる楽しみのために旅する者も少ないが全くいないわけではない。

 街の名は《暗灰色の町ベイルン》。見た目そのままだ。街の建造物や河に掛かる橋、道の全ての石畳も、暗い灰色だけの街であった。
 

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【復讐には代償が必要だ】復讐の女神ネフィアル 第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第18話

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 二階も一階と同じように、荒れた光景を見せている。蜘蛛の巣が天井から壁際に掛かり、足元には、踏むと足跡が残るほどのほこりが積もっている。

 アルトゥールとリーシアンは、そろって廊下を進んだ。階段は屋敷の隅にある。廊下は真っ直ぐに伸びている。左右に三つずつの扉があった。

 いずれも深い褐色の木目のきれいな扉で、ぶどうのつると葉と実を型どった彫刻が表面にほどこされて

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復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第17話

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 リーシアンは、それを聞いてにやりと笑ってみせた。 後ろから続いて階段を上がる。

「俺はハイランのことは気に入らん。かなり危険な奴だと思っている。しかし少なくともこの件に関する限り、お前は、いや俺たちはと言った方がいいな、救われた面もあるんだ」

 ここで言葉を切って、紫水晶の色の瞳の青年神官の視線を正面から受けとめた。二人とも階段の途中で立ち止まる。

「お前の

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復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第15話

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 もはや どれだけ言っても従者は頑なな心を変えず令嬢を連れて逃げ去ることもしないであろう。そうと察したのでアルトゥールは、もうそれ以上言わなかった。

 無意識のうちに抑え込んできた冷ややかな闘志が、体の中に、そして精神にも湧き上がる。神官は通常は鋭利な刃物を使わないものだが、その時の意識は従者が持つ剣よりも、なお鋭く研ぎ澄まされていた。

 ラモーナの悲鳴が聞こえ

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復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第14話

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 従者は、彼はおそらく馬車の御者をしてここに来たのだろう。そう察せられるが、その忠実な男の目には怒りが燃えていた。

 従者が持つ剣は刃が短く、従者自身の二の腕の長さほどしかないが、剣先は極めて鋭く、優れた腕の鍛冶屋の鋳造によるものと見て取れた。それだけのことを瞬時に、アルトゥールは見て取った。

 まっすぐに自分の方へ向かってくる剣先を弾こうとして、メイスを横に払

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復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第13話

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 アルトゥールも眼前にメイスをかまえた。それを見たラモーナ子爵令嬢は、再度金切り声を上げ、 それからその場にへたへたとへたり込んだ。

 誰か助けて、と、か弱い声で呼ぶ。目の前にいる従者に対して言ってるのではない。それは明らかだった。

 アルトゥールはその従者に告げた。

「ここは退(ひ)いてください。僕たちが相手にしたいのはこのハイランだけです」

 従者は答え

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復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第12話

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「本当にいいのですか?」
 
 アルトゥールは念を押す。何か企みがあるのか? そうだ、この状況で油断は出来ない。

「もちろんだよ」

 ハイランは、そうとだけ言った。アルトゥールは次の言葉を待った。何も言わなかった。

「では私がこの件をお預かりしてよろしいですか?」と、ジュリア。

「令嬢は貴女にお任せしよう。しかしヘンダーランの件は貴女にゆずるわけにはいかない

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復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第11話

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 ハイランの目には、きっとアルトゥールがジュリアと仲良くしていると見えるはずだ。そう、彼の目には、そう見えるはずである。

 ハイランの目には。

 他の者からは違うように見えるようだ。彼らから聞いた。聖女ジュリアを崇敬する人々、の中でも、特に『弱者』と言ってよい人々からは。

 ハイランが弱者と呼ぶであろう人々からは。

 アルトゥールの存在すら傷つきの理由になる

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復讐の女神ネフィアル【裁きには代償が必要だ】第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第10話

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 アルトゥールは、すぐには庭に出なかった。扉の影からハイランの様子を見張る。庭は荒れ果て、草が腰の高さまで茂っているが、見通しは利く。門までハイランが歩いてゆくのが見えた。

 ハイランは門を開けた。大きく開け放ったわけてはないので、アルトゥールの位置からは馬車も御者も、令嬢の姿も見えない。頑丈な板状の木の門の影に隠れているようだ。

 ハイランの姿も門の影に消えた

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復讐の女神ネフィアル第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第9話

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「そんな考えは受け入れられないな」

 アルトゥールの声が風に乗って流れる。風は、リーシアンが割った窓の硝子(がらす)から入ってきていた。

 板状の硝子の一つ一つは大きくはない。アルトゥールの手のひらほどの大きさの板硝子だ。

 それが木製の格子戸の、細かく区切られた格子の間に入れられている。格子は、正方形がいくつも並べられた形に組まれていた。

 格子の枠も硝子

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復讐の女神ネフィアル第7作目『聖なる神殿の闇の間の奥』第8話

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 貴族の令嬢を乗せた馬車は、ヘンダーランの屋敷の前で停まった。彼女は子爵の位を持つ父親の娘である。 その父親は今はいない。

 令嬢は若く美しかったが、どこかやつれた雰囲気を漂わせていた。その雰囲気だけは、まるで人生に疲れた中年の女のようでもある。

 疲れた様子は明らかに子爵令嬢の若さも美も損なっていたが、不思議と保護欲をそそる魅力も醸し出されていた。

 令嬢は

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復讐の女神ネフィアル 第3作目 『美女トリアンテの肖像』 第2話

復讐の女神ネフィアル 第3作目 『美女トリアンテの肖像』 第2話

 次の日には、すでに二人で森の奥へと進んで行った。恐るべき魔女ルードラの住む土地へ。村人たちは、香草で香付けした干し肉や、滋養のある果物の干した物を布袋に詰めて、数日保つだけの量をくれた。

 アルトゥールもジュリアも、礼を言ってその場を去った。二人とも必要なだけの食物は神技を使えば出せる。それでも断る理由は無いし、一日に使える神技には、この二人ほどの高位の神官と言えど限界もある。

 こんな森の

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