見出し画像

『悪童日記』『ふたりの証拠』『第三の嘘』読書感想。


面白くて久しぶりに一気読みしてしまった。

平易な文体、簡潔な場面描写。
感情表現を一切記さないのに人の心が浮かび上がってくるのがすごい。
しかもこの文体と場面描写が呼び起こすイメージと現実世界における他者の心の汲み取ったときの濃度がとても近いので、主人公の双子たちがかなりトリッキーな振る舞いをするのにも関わらず、不思議なリアリティがある。

要所要所でそれまで紡いできた物語を全てをひっくり返すようなどんでん返しがあるのだけれど、それを見せられた後でもそれ以前の物語が虚構だと思えないくらいどっぷり浸かってしまっている。

小説が現実を侵食してくることはかなり相性の良い小説の場合、稀にあるけれど、こんな風にロジカルな文体と場面描写というツールを駆使した侵食は初めてだった。
その発見までもが心地よく、心を昇天させてくれる。

そして、ロジカルに構築されているのにも関わらず、なぜか謎解き要素が鬱陶しくない。
ガチガチしておらず、川流れのように心地よい。
これがエンタメ小説と文学の大きな差なのだろう。

本棚行き決定の良本でした。

良い出会いは純粋に嬉しい。

いいなと思ったら応援しよう!