【生活指導】やりたいこととやるべきこと
「やるべきことをやりなさい。」
学校でよく聞く言葉です。
遊び盛りの生徒たちは、勉強やクラスの仕事をするより、友だちと遊んでいたい。
つい「やるべきこと」より「やりたいこと」を優先させてしまいます。
それではいけないと思う先生たちは、冒頭のセリフを生徒に投げかけます。
でも進路洗濯の時期になると、先生のセリフは「やりたいことは何?」に変わります。
今まで「やるべきことをやれ」と言われてきた生徒たちには、「やりたいこと」がわからない。
なので点数や偏差値を上げたり、教科書の内容を暗記したりと言った、目の前の「やるべきこと」をやるようになってしまいます。
こんなすれ違い、あなたの学校でも起きていないでしょうか?
〈私の考え〉
このすれ違いを解消するのは、以前の記事で書いた、デューイの「自由には自制が伴う」という考え方です。
人間には「やりたいこと」をやる自由がある。でもこの「やりたいこと」を短期的なスパンで考えてはいけません。
「やりたいこと」を長期的な目的ととらえなおし、その「やりたいこと」を実現するために、今は「やるべきこと」をやる。
目の前の「やりたいこと」をその時々の欲望に任せてやっていたら、自分の「できること」は広がっていきません。
「できること」が少ないまま大人になれば「やりたいこと」をできる仕事にはつけず、生きるために「やるべきこと」を日々やり続けなければならない人生になってしまいます。
短期的な「やりたいこと」をやり続けていると、長期的には自由を失い「やるべきこと」に追われることになってしまうのです。
こうなってしまわないように、長期的な「やりたいこと」に向かって、短期的には「やるべきこと」をやっていく。
これが「やりたいこと」と「やるべきこと」の正しい関係ではないでしょうか。
〈私の工夫〉
私は1年のはじめの頃に「マシュマロ・テスト」の話をします。
マシュマロ・テストとは、1つのマシュマロを目の前にした子供に対して「今このマシュマロを食べてもいいよ。でも、次に私が来るまで我慢できたら、もう一つマシュマロをあげるよ。」と伝えて部屋を出ていき、子供がマシュマロを食べるかどうかを見る実験です。
このテストを受けた子どもたちを長期的に観察し続けた結果、マシュマロを食べるのを我慢して2つ目のマシュマロを手に入れた子供のほうが、学校の成績が良かったり、仕事で成功を収めたりする確率が高かったそうです。
1つ目のマシュマロを食べてしまうのは、短期的な「やりたいこと(今すぐマシュマロを食べたい!)」を優先した子。
2つ目がもらえるまで待ったのは長期的な「やりたいこと(2つ目のマシュマロもほしい!)」を目指して短期的には「やるべきこと(今は食べるのを我慢しよう)」をやった子です。
この話で「やりたいこと」と「やるべきこと」の関係を理解した生徒たちは、私が「やるべきことをやれ」とだけ言っても、その意味を理解してくれるようになります。
「やるべきこと」の先に「やりたいこと」があるのだと、頭の中で両立させてくれているのです。
〈まとめ〉
「やるべきことをやりなさい。」
このセリフは、「やりたいこと」と「やるべきこと」の対立を煽ってしまいます。
しかし本当は、この2つは対立関係にはありません。
短期的なスパンと長期的なスパンで考えて、最終的に「やりたいこと」をするために今は「やるべきこと」をする。
この位置づけを生徒にしっかりと伝えることが、「やるべきことをやりなさい」というセリフを意味のある指導にするための絶対条件ではないでしょうか。
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