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6つの技術で上手くいく!先生初心者のための授業の教科書 8.おわりに

 先生になると、なった瞬間から「先生」として教壇に立たなくてはなりません。教壇に立つ前にみっちりと研修をして、十分な技術をつけてからデビュー、なんてことはしてもらえません。

 なぜか学習指導案(授業の計画書)の書き方だけはみっちりと教え込まれるのに、実際に教壇に立った時に使える技術については、ほとんど教えてもらえません。だから自己流でやるしかありません。

 「先生」になったばかりの先生は、自己流を作り上げるために大きな苦労を強いられます。しかも仕事は授業だけではありません。校務分掌、学級経営、生活指導、学校行事、そして部活。様々な仕事がひっきりなしに降ってくる中で、自己流の授業技術を作り上げるのは並大抵のことではありません。

 7時ころ出勤してその日の動きや教室環境の確認、朝の打ち合わせが終わると学活、授業、給食、授業、学活、掃除で16時。部活が終わるのは19時近くで、そこから校務の仕事をしているともう22時近く…こんな生活で、本を読んだり自主的に研修に参加したりして勉強できるはずもありません。(私が本を読めたのは、せいぜい通勤電車と部活がない日曜日くらいのものでした…)

 わかりやすい授業、楽しい授業をしてあげたいのに、そのための勉強も、準備すらまともにできない。「こんな授業でごめんね」なんて思いながら授業に臨んだ時は、教壇で泣きそうになるくらい、苦しさと申し訳なさに苛まれます。

 授業技術を高めるために勉強する時間はない。でも授業のプロとして授業をおろそかにはしたくない。本稿は、そんな思いを抱えて葛藤していた10年前の自分に向けて書いた、授業技術の基本についての教科書です。(もし本章から読み始めていただいた方がいらっしゃいましたら、1.はじめにをお読みいただけると嬉しいです。)

 室町時代の能楽者世阿弥は、芸事の上達過程を「守破離」と表現しました。まずは教科書通りの型を「守」ってその通りにできるようになる。次にその型をすこし「破」って(崩して)自分流にアレンジする。最後に型から「離」れて自分なりの新しい型をつくりあげる。

 授業技術の上達過程も、このようにあるべきです。本稿が、10年前の私と同じように悩む初任者・若手教員の方々にとっての教科書、基本の型となれば、これほど嬉しいことはありません。

 最後に、繰り返しになりますが、本稿は私の10年間の経験に基づいてまとめたものです。科学的根拠があるわけでも、学術的な流れを汲んでいるわけでもありません。多くの方の意見をいただき、よりよい教科書としてブラッシュアップしていきたいと思っています。ぜひ、ご意見をお聞かせください。

 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

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