狩野誠

落語大好き、音楽大好き、読書大好き、お酒大好き、女房まあ好き

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最近の記事

400字で分かる落語「馬」

「う」の72:馬(うま) 【粗筋】 午年で神社へ初詣、絵馬を収めることにしたが、「嫁さんがほしい……家内安全、商売繁盛、無病息災、世界平和……」何もかも書きたいが、スペースがない。そこでまとめて「実現」とだけ書いた。これを見た神様、何を実現するか分からず、表に描かれた絵の「馬」を実現させてしまう。男のもとへ来た馬、狭くて馬が住む場所はないからと断ると、何にでも化けられると言う。そこで女に変身させると、これがなかなか……ちょっと面長のいい女。翌朝仲間が仕事の誘いに来ると、女房を

    • 400字で分かる落語「姥捨て山」

      「う」の71:姥捨て山 【粗筋】 信濃で、お殿様の父親が70歳で痴呆症になってさあ大変、誰でも70歳になったら島送りにするというお触れを出した。清六という孝行者、母親を山に隠そうとするが、息子が戻るのに枝を折って道を教えるという工夫をしているので、連れ帰って家に隠した。これが露見して捕らえらえると、「年を取ると迷惑になるだけじゃ」という殿様に反論、母親が殿様の出す謎々に答えることになった。 「父親蛙はケロケロ、母蛙はケロッケロケロと鳴く。子供は何と鳴く」 「子供はオタマジャク

      • 400字で分かる落語「自惚れ医者」2

        「う」の70:自惚れ医者(うぬぼれいしゃ):その2 【粗筋】 大店の娘の差し込みがひどいと、医者が呼ばれた。親父に腹を抑えさせて、探ると腹にたまったものがある様子。さすっているうちに下の方に手が行く。娘が黙っているので、手を取って自分のモノを握らせると、黙って握っている。そうなると、腹を抑えている親父が邪魔だ。「親父殿、もうよいから、薬を煎ずる湯を沸かして来て下され」「はい」「どうしました。早く沸かして下され」「先生、この握ったものはどういたしましょう」 【成立】 安永2(1

        • 400字で分かる落語「自惚れ医者」1

          「う」の69:自惚れ医者(うぬぼれいしゃ):その1 【粗筋】 大店の娘が病で寝付いた。医者が呼ばれたが、これは恋煩いであろうと思う。娘の部屋に行くと、娘が店の者は出て行けと言う。「おっ母さんは向こうへ行って」と母を追い出す。「お父っあんも」残ったのは医者一人。「先生」「何じゃ」「先生も向こうへ」 【成立】 安永2(1773)年『飛談語』の「労咳」。上方では一席にやることもあるそうだが、マクラでしか聞いたことはない。残った医師の心理描写があるといいが、あまりくどいと詰まらなくな

          400字で分かる落語「自惚れ」6

          「う」の68:自惚れ(うぬぼれ):その6 【粗筋】 自分だけが色男と自覚している客、新造が話をしているうちに女郎は他の客の所へ行ってしまう。客が気付いて、「花魁はどうした」「手水でござんす」 「本当か」「主を置いてどこへお出なんしょう。あれほど惚れているのに」 「本当か……嘘じゃねえか」「この家に主にほれている者が一人だけありんす」 「他の部屋の女郎か」「いえ」「新造か」「いえ」「かむろか」「いえ」「遣り手か」「いえ」 「誰だい」「お前さ」 【成立】 寛政8(1796)年『喜

          400字で分かる落語「自惚れ」6

          400字で分かる落語「自惚れ」5

          「う」の67:自惚れ(うぬぼれ):その5 【粗筋】 娘が向島へ出掛けるが、誰を見ても、「あれは鼻が低い」「あれは色が黒い」と、自分の方がいいとけなす。秋葉権現境内の秋葉が池に自分の顔が写ったのを見て、「これも本当にいいのじゃない」 【成立】 天明6(1786)年『笑なんし』の「水かけ」。他の女を悪く言うのでここに置いたが、方向が変わってしまった。自惚れという題で並べたが、この娘だけは自分が分かっている……のかも。

          400字で分かる落語「自惚れ」5

          400字で分かる落語「自惚れ」4

          「う」の66:自惚れ(うぬぼれ):その4 【粗筋】 腰元が茶を入れてくれた。帰る尻を見て、「いよっ、楊貴妃」と声を掛けると、腰元、「もう、ちょっと似ているだけであんなことを」 【成立】 安永2(1773)年『再成餅』の「腰元」。声を掛けたのは侍なのだろうか、それにしては品がない。 「私は楊貴妃何かに似ていないわ。楊貴妃が私に似ているのよ」というものもあるが、「猿後家」では、猿と後家を比べて同じような会話がある。

          400字で分かる落語「自惚れ」4

          400字で分かる落語「自惚れ」3

          「う」の65:自惚れ(うぬぼれ):その3 【粗筋】 若い衆が集まって夜話、蕎麦でも食おうということになり、「それじゃあ、今夜の中で一番の色男のおごりにしようじゃねえか」と言うと、一人が頭を叩いて、「いや、これは迷惑」 【成立】 安永2(1773)年『聞上手』の「己惚」。安永8(1779)、新陽老漁(太田南畝)作『鯛の味噌津』の「色男」は「くわばらくわばら」。安永7(1778)年『春笑一刻』の「色男」は、「さぞ世間の者が俺にほれるだろう」という男に、茶坊主が、「多くは存じません

          400字で分かる落語「自惚れ」3

          400字で分かる落語「自惚れ」2

          「う」の64:自惚れ(うぬぼれ):その2 【粗筋】 「あの女房は顔はいいが色は黒い」「あの女房は肌は白いが、痩せすぎている」……と女房の評判。「これぞといういい女はいないものだなあ」 「そういうものさ。あまりいい女を女房にすると、亭主は病気になるとか、早死にするとか言うじゃねえか」 「……誰か、薬を持ってねえか」「どうした」 「何だか俺は急に気分が悪くなってきた」 【成立】 その1とは男女も内容も逆。上方では「短命」という題の江戸小噺だと紹介されているが、出典は不明。それにし

          400字で分かる落語「自惚れ」2

          400字で分かる落語「自惚れ」1

          「う」の63:自惚れ(うぬぼれ):その1 【粗筋】 町内の年頃の娘達が話をしている。例によってあの男が二枚目だ、あの男は優しという品定め……「でも、顔の悪い女はいい男の亭主を持つ。器量のいい女は案外不器量な亭主を持つと言うじゃない」 「それ、ひどいよ。あたし、そんな不器量な亭主、持ちたくないよ」 【成立】 ま、よくあるネタ。「私諦めてるわ」という落ちもある。寛政元(1789)年『樽酒聞上手』の「むすめ」は、「わたしはきっと悪い亭主を持つよ」という落ち。

          400字で分かる落語「自惚れ」1

          400字で分かる落語「鰻屋」

          「う」の62:鰻屋(うなぎや) 【粗筋】 不景気な面の友達に一杯おごろうと言ったら「懲りている」という返事。別の友達に同じ台詞で連れ回され、川のほとりで「銘酒隅田川だと思え」と言われて悔し紛れに飲んで腹を壊したのだ。この友達が言うには、鰻屋が出来て出掛けると、酒とつまみは来たが、鰻が出ない。職人が出掛けていたので酒の代はタダになったというのだ。 「でも、今日は職人がいるかも」「出掛けたのを確認して来た」というので二人で出掛ける。鰻屋の親父が自分で調理すると言って鰻をつかむが、

          400字で分かる落語「鰻屋」

          400字で分かる落語「鰻の天上」

          「う」の61:鰻の天上(うなぎのてんじょう) 【粗筋】 鰻の料理を頼まれた男がぬるぬる逃げる鰻をつかもうと町内を一周、上に向ければいいと気付くが、今度は上へ上へと昇り、二階から屋根へ上がって、とうとう天まで昇って行った。それきり一年経っても帰らないので、妻子は弔いを出すことにしたが、空から短冊が落ちて来た。   去年(こぞ)の今日鰻とともにのぼりしが今に絶えせずのぼりこそすれ  とある。ああまだ生きていると思って裏を見ると、 「手を離す暇がないので、代筆をもって申し入れ候」

          400字で分かる落語「鰻の天上」

          400字で分かる落語「鰻の幇間」3

          「う」の60:鰻の幇間(うなぎのたいこ):その3  客の正体については馬場雅夫が考証しているが、長くなるので省略。浴衣がけで現れているから、近所に住んでいるのだろう。一八を知っているから同業者かも知れぬ。どこかで再会する可能性は極めて高い。ぜひ正体を明らかにしていただきたい。 【一言】 (橘家円太郎が死んで通夜に行くと、駅前の寺で、履物がいっぱい並んでいる。外国帰りの友人にもらったばかりの、高級な舶来の靴を履いていたので心配すると、前座の弟子が下足番を勤めるというのでそのまま

          400字で分かる落語「鰻の幇間」3

          400字で分かる落語「鰻の幇間」2

          「う」の60:鰻の幇間(うなぎのたいこ):その2  春風亭柳好(4)は、だまされたと分かった幇間が、大変だと口をぱくぱくさせるばかりで、逆上して、支払いをどうするか、頭がいっぱいになっている様子が分かった。専門家によれば、柳好の悪い癖である語尾をのみこむ喋り方が、ぴたりとはまっているそうだ。  古今亭志ん生(5)の幇間は、すっかりあきらめて、さっきまで褒めていた店をさんざんにこき下ろし、小女の経歴まで尋ねる。土産まで持って行ったと聞くと「敵ながらアッパレだねえ」と口にするのが

          400字で分かる落語「鰻の幇間」2

          400字で分かる落語「鰻の幇間」1

          「う」の60:鰻の幇間(うなぎのたいこ):その1 【粗筋】 客にたかって食事にありつこうとする幇間の一八、やっと客を捕まえて鰻屋へ行くが、この客、誰だったのか、どうしても思い出せない。酒を飲んで鰻が出て来ると客が便所に行って戻らないので店に聞くと、「自分は供で、二階の羽織を着たのが旦那だから、そちらから勘定を受け取るように」と言って、土産まで持って帰ったという。羽織の襟に縫い付けておいた十円札で支払いを済ませ、帰ろうとすると履物が違う。 「俺のは柾目の入ったいい下駄だよ」 「

          400字で分かる落語「鰻の幇間」1

          400字で分かる落語「鰻の蒲焼」

          「う」の59:鰻の蒲焼(うなぎのかばやき) 【粗筋】 「鰻は昔ノロといったが、鵜という鳥が飲み込もうとして、長いために飲みきれず難儀をした……鵜が難儀をしたので『鵜難儀』というのが『うなぎ』になった」 「焼いた物を蒲焼というのはなぜです」「ノロノロしてバカだから馬鹿焼きだと言ったのをひっくり返して『かばやき』だ」「なぜひっくり返したんです」「返さなければ焦げてしまう」 【成立】 「やかん」の学者先生のくすぐり。これで一席にしたのを聞いたことがある。「やかん」のネタを並べるのと

          400字で分かる落語「鰻の蒲焼」